Rage Against The Machine 2000.6.25:幕張メッセ国際展示場ホール

両肘が痛い。実は前日のライヴの最中、モッシュの渦の中にいる時点でもう痛かった。腕を伸ばすと楽になり、曲げると痛む。何度もライヴに行っているが、こんなのは初めての経験だ。恐るべしレイジ。朝は風呂に入り長めにお湯につかりながら、入念に肘の筋肉をマッサージする。


 前日は開場と同時にステージ直前に陣取ったが、この日はゆったりとステージ全体を見渡しながらライヴを楽しもうと思い、開場後30分くらいしてから中に入る。グッズ売り場は列が何重にも連なっていたため開演前の購入を断念。Aブロック正面の最後列辺りに陣取ることにする。がしかし、この辺りも人ひとで密集。








 まずは前座。前日は目の前にしていながらほとんど意識を向けることのできなかったブラッド・サースティ・ブッチャーズだ。音の方は全くの未聴だが、そのバンド名とライヴが凄いという噂だけは以前から耳にしていた。今年のフジロック出演も決まっている。


 メンバーはvo&g、b、dsのスリーピース。ハイスタと対バン張ったこともあるはずで、私はハイスタのような轟音爆音ノイジーな音なんだろうと勝手なイメージを抱いていたが、意外やメロディアスでしかも歌詞をしっかりと「語る」スタイルなのだということを初めて知る。ちょっぴり切なさを漂わせるサウンドに、イースタンユースを思い出す。前日は心ない野次が結構飛んでいて悲しくもなったが、この日はバンドもオーディエンスも共存共栄し好感触を残しつつ、約30分の時間が過ぎ去った。








 そしてレイジ。この日は、スタッフからの「押さないように」という注意が一度だけだったことから察するに、モッシュピットはそれほど危険な状態ではないと思われる。そうしているうちに、前日より5分ほど早くバンド登場。前日のザックの第一声は「motherfucker!」だったが、果たして今回は・・・、











「Good evening!!」












「We are Rage Against The Machine from Los Angels, California!!」












 お馴染みのMCと同時にステージバックのスクリーンがせり上がり、"The Battle Of Tokyo"の文字が浮かび上がる。どうやらザックは怒っていないらしく(笑)、少しほっとする。そして幕開けは『Testify』『Guerrilla Radio』の2連発だ!


 バンドのテンションが前日にも増して高い。特にザック。ステージ上を激しく動き回るその様も相変わらずだが、「Yo!Yo!・・・」とオーディエンスを煽るその姿には一寸の迷いもない。そしてそれに応える私たちオーディエンス。最初から大合唱である。


 前日はステージ直前2列目だったがために、自分より後ろの様子は全くわからない状態だったが、今私が目の当たりにしているAブロック最後方からの眺めは壮観だ。モッシュしてるのはてっきりステージ直前のエリアだけなのかと思ってみたら、自分の周りのオーディエンスも激しいばかりに飛び跳ねている。ちらと後ろを見やると、Bブロックの柵にかぶりついたオーディエンスが頭を前後に揺さぶっている。この光景。この感覚。以前も体験したことがある。そう、フジロック'98のプロディジーのときの感覚と同じだ。


 前日意表を突く幕開けとなった『Kick Out The Jams』は、この日は3曲目に登場だ。ネット上で日本公演前のセットリストを調べた限りでは全く見当たらなかったので、もしかしたら今回からレパートリーに加わったのか。ルーツ・オブ・パンクとして、イギー・ポップのストゥージズと双璧を成すMC5が1969年に放ったほとばしるスピリット。そのスピリットが、レイジの中にもしっかりと受け継がれていることの証だろう。それにしても、ザックの気合いが凄すぎる。


 相変わらず圧倒的な『People Of The Sun』。bのティムは、リズムのキープのみならず、バックvoとしても見せ場を作る。しかし、ここまでが物凄いテンションの高さでライヴが進み、観ていて度肝の抜かれっぱなしだ。シンプルなステージセット。きらびやかなライティング。両脇スピーカーの上部には黒地に赤の★印を模した旗が掲げられ、時折スポットが当てられる。真横の壁にも注目。ザックやトム・モレロの動きが影になって壁に映り、その影までもが躍動しているのだ。


 と思ったら、続いてはレアトラックの『Darkness』。これは前日は演奏されていないと思われる。静かなメロディとミディアムテンポの曲調に、場内の温度が少し下がり、異様に高まっていた私たちのテンションも少し落ち着く。ここではトム・モレロが妙技を披露。以前からうすうす思っていたのだが、私にとっての90'sのギターギーローといったら、ジョン・スクワイアでもバーナード・バトラーでもなく、このトム・モレロなのかもしれない。





 2月のスカンク・アナンシーのときにも同じことを感じたのだが、同じアーティストの公演を2日続けて観に行くと、1日目は1曲1曲がストマックブローのようにズシリと響き、じっくりと堪能している自分がいる。それが2日目になると、曲が進み時間が経つのがとても早く感じられ、ああ、もうすぐ終わっちゃうよ、という何だか切ない気持ちになってくる。中盤はファーストやセカンドからのお馴染みのナンバーで彩られるが、私にとっては重厚さよりも疾走感の方が先に出て来てしまっている。


 そうした中、前日は3枚のアルバムから満遍なく選曲されていることに私は敏感に反応したのだが、この日は逆に新作からの曲が自分の中に強く残った。冒頭を飾った2連発はもちろんのこと、『Born Of A Broken Man』も、『Sleep Now In The Fire』も、既にライヴの骨格を担うに充分な説得力を備えている。『Sleep Now ~』は来日記念盤効果もあってか、前日にも劣らず場内の密度を濃くした。





 終盤でまたもやセットリストに変更が。まずは『No Shelter』。サントラ『Godzilla』提供曲で、『The Battle Of L.A.』の音楽的方向性を指し示す位置付けになったはずの曲だが、やはりポップでキャッチーだ。映画サントラだからこのようになったのではなく、レイジの音楽性自体がこのようなベクトルを持ち合わせるようになってきたのだということを、私は今更ながらに思い知らされている。そして『Tire Me』。今回のライヴはセカンドからの選曲が少ないように感じていたのだが、それも日替わりできっちりフォローしているということのようだ。


 本編ラストは『Freedom』。中盤で訪れる無音の瞬間。それがザックの叫びとブラッドのドラミングによって打ち破られ、これでもかと言わんばかりの激しいジャンプと、ステージを照らす閃光のようなスポットによって、夢のような劇的な空間が形成される。私にとってのこの日のハイライトはこの瞬間だった。















 私はライヴが始まってすぐ、Aブロック最後方のほぼ中央にいたが、やがて比較的余裕のある左奥に移動していた。そしてアンコールを待つ間、今度は右後方に移動する。しかし、その途中にすれ違うオーディエンスは、みんな汗びっしょり。こんな後ろの方まで。いやはや。そして私の移動が完了したのとほぼ同時に、メンバーは再登場する。


 まだこの爆弾が残っていたのかという『Bulls On Parade』で、アンコールは始まった。不協和音のようなイントロ(今回のライヴは、レコードには収められていないイントロが付与されて演奏される曲が多かった)に導かれ、やがて背筋が凍りつくトム・モレロのギターフレーズに行き着く。熱いステージ。そして熱きオーディエンスたち。たとえ私が場所を移動しようとも、そのテンションが下がることはない。圧倒的すぎるこの空間にさらされ、私たちは打ちのめされる。


 そしてほんとうのラストは『Killing In The Name』だ。最後の大合唱とモッシュが巻き起こる中、前日のシーンが頭をよぎる。果たしてザックの中指立ては昨日限りのものだったのか。それとも・・・、















 果たして、最後のザックは今日も中指を立てていた。そして「motherfucker!!」と絶叫していた。嗚呼・・・。いや、もしかして毎夜毎夜、ライヴ毎にやってるのか?単に私の考えすぎだったのだろうか?いや、前日はもっと長い時間中指を立てていたような気がする。前日とこの日とでは、やはりバンドの状態は大きく違っていたのではないだろうか。最後にザックは「Thank you very much」と言い放ってステージを後にする。























 私は過去2回のレイジのライヴを、いずれもフジロックフェスティバルで体験していた。その内容は確かに素晴らしいものだった。特に'97のライヴは私の生涯ベストライヴのひとつであるだけでなく、日本におけるロックコンサートの金字塔のひとつにも成り得るパフォーマンスだと思う。





 フェスティバルに対する想いは人それぞれだと思うが、私が常々思っているのは、大好きなバンドはフェスよりも単独公演で観たい、ということだ。野外でのライヴは確かに開放感に溢れていて気持ちいいが、前後の出演バンドに伴うスケジュールや不安定な天候の中での開催は、私にとっては少し圧迫感を感じるのである。





 単独公演であれば、何日も前からそのバンドのことだけに想いを集中させることができる。そして当日も。あと何時間。あと何分・・・。前日もこの日も、私は待っている時間を不思議と長いと感じなかった。特に前日は、モッシュピットの中に身を投じ、押し合いへし合いされて死ぬ想いをしながらも、それでも長いとは感じなかったのだ。























レイジの単独公演を2夜続けて体験できて、私はこの上ない幸福感を噛み締めている。
























(2000.6.26.)































Rage Against The Machineページへ



Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.