Summer Sonic 2005/Day 2-Vol.3 Oasis







幕張メッセを出たのは、7時40分過ぎ。既に外は暗かった。時間的に、千葉マリンスタジアムではとっくにオアシスのライヴが始まっているはずなのだが、ライヴの音も歓声も、意外と外には漏れないものだなと思いながら中に入ると、なんとライヴはまだ始まっていなかった。あれま。機材トラブルで遅れているというアナウンスがあったことは後で知るのだが、とにかくラッキーとばかりに座席を探す。


 1階席は到底無理と最初から諦め、2階席を目指した。座席はおろか通路や階段にまで人が陣取っていて、2年前のレディオヘッドのときを大きく上回る人の密集度に、びびり気味になる。それでも探してみるもので、なんとか空いている席を見つけてそこに座る。開演が遅れているのは、メンバーがラーズを観に行っているからではないのかと想像した。マリンスタジアムに入る直前で、目の前をワゴン車が2台通り過ぎて行ったのだが、あれメンバーが乗っていたんじゃと思ったりしたのだ。そんなことを考えているうちに、場内が暗転。時刻は8時7分を指していた。





 『Fuckin' In The Bushes』が流れ、静まり返っていた場内から歓声が沸いてきた。そして曲が流れ終わった頃に、オアシスのメンバーが登場。オープニングは、新譜『Don't Believe The Truth』からの『Turn Up The Sun』、そしてアンセム『Lyla』だ。わかりやすい曲調であり、わかりやすいサビのフレーズであるがために、場内は早くも大合唱となる。


 リアムは少し太ったというか、畳みたいに平べったい体型(笑)になっている。声は相変わらずがさがさしているが、それでもなんとか歌えているようだ。ノエル、アンディ、ゲムといったメンバーは今やお馴染みだが、今回はドラマーが違う。去年はザ・フーのドラマーとして来日していた、ザック・スターキーだ。スクリーンに大写しになったザックは髭をたくわえていて、少しワイルドな風貌になっていた。





 新譜からの曲に続いては、『Morning Glory』に『Cigarettes & Alcohol』で、ここで場内は尋常ならない雰囲気になる。ファーストやセカンドからの曲は、今やオアシスクラシックとして、とんでもないくらいの輝きを放つのか。そして再び新譜からの「水戸黄門」こと『The Importance Of Being Idle』や『A Bell Will Ring』なども披露される。個人的には『Don't Believe The Truth』はオアシスの全アルバムの中で最も内容の薄い作品だと思っていたのだが(暴言かなあ)、ライヴの場においては流れを崩さずになんとかやれている。


 そう思えるのは、バンドが結成以来最強だからだ。何度もメンバーチェンジを繰り返し、オリジナルはギャラガー兄弟だけとなってしまったオアシス。しかし、アンディ・ベルもゲム・アーチャーも今やすっかりバンドに馴染んでいると言えるし、そしてドラムはザックだ。更にはサポートとして、ジェイ・ダーリントンが今回もキーボードを弾いている。考えてみりゃ、元ライドに元ヘヴィー・ステレオに元クーラシェイカーに、そしてビートルズの息子までいる。こりゃすげえバンドだぜ。


 『Live Forever』で、再び場内は尋常ならない雰囲気になった。このライヴを観ていて思うのは、オアシスはある意味ストーンズ化してしまっているのではということだ。新譜からの曲はそれなりに話題を振りまくが、ライヴでハイライトになるのはやはり往年の名曲、という図式が成り立っている。何も後ろ向きな意味合いばかりではなく、往年の名曲が放たれたときの場内の一体感、絶頂感は、選ばれしアーティストにしか醸し出すことはできない。オアシスは10年とちょっとのキャリアにして、ストーンズあるいはU2が到達した領域に足を踏み入れんとしている。


 思うことは、個人的にもうひとつある。私が初めてオアシスを観たのは95年で、会場はクラブチッタだった。タイミングとしてはセカンドがリリースされる直前で、ライヴの出来も決して会心とは言い難かった。それ以降の来日公演には必ず足を運び、浮き沈みしながら前のめりに進まんとするバンドの姿を観続けてきた。そして今回のスタジアムライヴだ。よくぞここまで成長してくれた。よくぞここまでビッグなバンドになってくれたという、感慨の念が浮かんできたのだ。





 終盤はこれでもかと言わんばかりの名曲連射で、『Champagne Supernova』~『Rock 'N' Roll Star』~『Wonderwall』となり、もうなんだか訳のわからない状態になってきている。そしてクライマックスは、ノエルがリードヴォーカルを取る『Don't Look Back In Anger』だ。イントロが流れただけで歓声のヴォリュームは一段と大きくなり、ノエルが歌っているときはじっと聴き、ギターソロが冴え渡っているときは聴き惚れ、そしてサビに差し掛かったときは最大級の大合唱になる。欧米ではお馴染みの光景かもしれないが、ここ日本で何万人ものオーディエンスが大合唱をするというのは、とてつもなく画期的なことだ。


 ラストはザ・フーのカヴァー『My Generation』で、終盤のインプロ状態になったとき、リアムは仁王立ちになってタンバリンを振り、やがてモッシュピット前方に投げ入れる。手持ち無沙汰になってしまい、ひとり先に袖の方に引っ込んじゃうのかなと思ったら、なんと懸命にギターを弾いているノエルに後ろから抱きついてしまった。リアムがステージ上でおどけてみせるのが見られた、珍しい光景だったと思う。


 アンコールはなく、トータル時間も1時間20分くらいで少し短め。ではあるが、オアシスがここ日本でもスタジアムバンドとして機能することを証明できた、会心のステージだったと思う。フルライヴについては、近いうちに実現するであろう単独の再来日公演での楽しみとして、取っておこう。

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 スタジアム後方からは、前日と同じように無数の花火が上がり、真夏の夜の夢の最後の幕引きが行われた。ふつう花火大会を観に行ったとしても、こんなに間近で花火を観ることってできないんだよな。そう考えると、次々に上がる花火が一層きれいに見えてきて、更には2日間に渡るさまざまなアーティストのライヴの感動がよみがえってきた。今年は人が多くて精神的に滅入ったし、あるステージでは入場規制を上手に仕切れないこともありはしたけど、総合的には楽しめたと思うし、よかったかな。


(2005.8.23.)
















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