Fuji Rock Returns Vol.6 Primal Scream / Goldie







グリーンステージとホワイトステージの時間がもうかなりズレてる。Smashが配慮してくれたのか、それとも単なるトラブルなのか。まさかプロディジーが中途半端でカットして強引におしまい、なんてことにはならないだろうなという不安がよぎる。もしそうなったら最後の最後で大失敗だぜ。しかし、この空いた時間を活かさない手はない。ホワイトステージにADFを見に行く。


私はADFを全く知らない。一番最初にメンバー発表になったときも誰だそりゃ、という感覚しかなかった。ガーデンホールの前夜祭のメインになっていたので、そっちで確かめるということも考えたが、体力・金・仕事面から断念していた。行って見ると、実際すごい人だった。ホワイトステージ全体がダンスフロアと化している。ちょうどシングルらしい、パルプフィクションのテーマ曲のような感じの耳慣れた曲が演っていたのでラッキーだった。もちろん2ステージを同時に見ることなんてできるわけがないので、私たちは選択を迫られる。1日目のスカパラといい、ビョークといい、そしてADFといい、見に行ったときにちょうどいいタイミングでこっちが欲しているものがそのまま得られた。いいのだろうか。いいのだよ(笑)。





陽が落ちて、夜の銀世界が広がる。そしてプライマル・スクリームだ。もうすっかりAブロックがやみつきになっていて、今までよりもう少し前の方に行ってみる。やはり、よりステージに近いところで観るにこしたことはない。そしてメンバー登場だ。ボビーひょろひょろだ。そして、マニが両手を挙げる。なんだ、凄い存在感だぞ。やはりマニの加入でバンドは生まれ変わってしまったのか。そしてアルバム『Vanishing Point』同様に『Burning Wheel』でスタートする。おお、カッコいいっ。全身が総毛立つようにゾクゾクする。


しかし『Rocks』にはもっとシビれた。『Give Out But Don't Give Up』は失敗作だという認識に今でも変わりはないが、現在のラインナップになってからのパフォーマンスは、まるで以前の曲にも新たな命が吹き込まれたようで、なにか神がかり的なパワーを備えているように感じる。バンドはキャリア最高の状態にあるのではないのか。繰り返すようだがマニの加入、やはり大きいと見る。最新作の流れで現在の音楽性はダブが基盤になってはいるが、ベックのようなノンジャンル、ボーダーレスの領域に足を踏み入れたのではないか。ボビーの囁きで始まる『Kowalski』、そして代表曲の1つである『Loaded』も。もう最高だ。昨日のビョークに続いてここには小宇宙がある。そして私たちはその小宇宙の中にいるのだ。

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 全く、夢のようなひとときだった。しかし、私は困った。




 プロディジーが観たい。このポジションで観たい。・・・という想いがこみ上げてきてしまったのだ。




プロディジーは既に1月に観ているので、今回は割り切ってゴールディーを完全に観て、残りをプロディジーに充てるつもりだった。がしかし、よく考えてみれば、1月のときはCブロックだったし、この小宇宙、この異空間、やはりプロディジーでこそ体験しなければならない。友人は既に腹を決めて、俺はここにこのままいるよ、と言っている。





 結局ホワイトステージに足を運ぶ。なぜなら小宇宙はこっちにも発生しうるからだ。そう、ゴールディー。見せてほしい。やってしまってほしい。




本人の登場だ。しかし飾り気も何もなく、そのまま演奏が始まってしまう。なんかイメージしていたのと違うな。既にダンスフロアと化していて、みんな楽しそうだが、ちょっと待って欲しい。アルバム『Timeless』で繰り広げた天地創造のような壮大なスペクタクルが、『Saturnsreturn』で垣間見た、どっぷりと深い別次元の空間が、ここにはない。なんかこれじゃリキッドルームのオールナイトイベントと同じじゃないか。このとき私は気が付いた。グリーンステージとホワイトステージの振り分けの意味を。壮大なスペクタクルはグリーンステージ、圧縮された高密度空間はホワイトステージ、ということだ。ゴールディーがホワイトステージに割り振られた時点で、私が期待することの実現など不可能だったのだ。よし、ここで割り切ろう。10分以上にも及ぶ『Timeless』の途中でグリーンステージに戻ることにする。


グリーンステージのAブロックに帰還する。先程から今や遅しとプロディジーを待ち構えているはずの友人の携帯にTELしてみる。がしかし、彼は私と反対にホワイトステージにいた。グリーンステージのセット入れ替えが50分と聞いてしびれを切らしてしまったらしい。しかし、ゴールディーいいぞ~~と絶叫している。彼の求めるものとは合致していたようだ。そして、いよいよクライマックスの時は近い。




(98.8.6.)
















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