Fuji Rock Returns Vol.5 Ben Folls Five / 灼熱のKorn / Ian Brown







それにしても暑い。汗が止まらない。この日はサッカー日本代表のタオルマフラーを首に巻いていたが、首だとかえって暑さが倍増しているので、頭からかぶり、そのまた更に上から昨年のフジロックで買った帽子をかぶる。で、サングラスをかける。まるでアラブの盗賊か快傑ハリマオみたいな(古っるう~)風貌だ。この帽子、実はとっても貴重だったのでは。ほとんど、というか誰も見かけないぞ、他にかぶってるの。去年は1日しかなかったしなあ。


時間は予定より更に遅れ、午後1時を回ったところでやっとベン・フォールズ・ファイヴの登場となる。Aブロック中央のやや後方まで行く。う、なんか凄いぞ。激しいぞ。『Blick』のPVでこのバンドに入った私には超意外な展開だ。まさかモッシュまで起こるとは思わなかった。ピアノの鍵盤をはじく音がいやにクリアに響く。ファースト、セカンドを聴くには聴いていたが、明らかに私は勘違いしていた。ギターレスだし、もっとしっとりめに攻めてくると思っていたのに、まるで正反対でとても激しい。そして観客の盛り上がりもいい。ああ、私のこのバンドに対する認識は、もはやロンバケ支持のミーハーOLの足元にさえ及ばない。どうしてこんなに楽しいんだ。どうしてこんなに重いジャブのように響いてくるんだ。ベン・フォールズはピアノの上に上がったり、果ては椅子を使って鍵盤を叩いたりしている。なんだかとてもすがすがしい。ラストは『金返せ』で大合唱となった。





気温はどんどん上昇してくる。そして、迫ってくる。Kornが登場するその時が。しかし、なんだかセット準備の時間が異様に長い。なんかじらされてるみたいで不快だ。Aブロックがざわざわし出してくる。ステージ上からSmashの人が、怪我やその他トラブルが生じても、当方では責任持てません、という意味合いのことを告げていた。死にたい奴は勝手に死ねってことかな。しかし、Kornならほんとに死人が出るかもしれない。実は、この呼びかけ以後、大モッシュで演奏が中断することはなくなった。よってミッシェルガンが最も激しいライヴとなったのであるが。私はこのときはかなりビビっていてBブロックの機材テントのすぐ右のところに陣取っていた。


登場だ。いよいよ登場だ。そして、『Blind』のイントロが響き出す。まるで銃騎兵が戦地から帰還して、殺し足りなくて次の獲物を求めて街中をさまよい突っ走るかのようなこのイントロに寒気がした。うおおお、いよいよ始まるぜ。Aブロックは全員がモッシュしている。最も気温の上昇している時間に、最も激しいライヴが始まった。


アルバムではツインのgと乾いたdsが印象的だったのだが、これがライヴになるとどちらも重厚さを増していて迫力倍増だ。圧倒的な量の音の洪水である。そして、不釣り合いにして微妙な味を見せるバグパイプを要した『Lowrider』 ~ 『Shoots And Ladders』も演ってくれる。バグパイプの音色が美しい。地の底に差し込む一筋の光のようだ。新曲も何曲か演ったらしい。これらはバックの演奏よりもジョナサンのvoが前面に出ているように感じた。明らかに既出のアルバムの曲とは毛色が違う。サードアルバムは日本先行で発売されるが、これはバンドの初期の締めくくり的作品ではなく、次の段階へ進んだという作品なのではないか、と思った。


どうしてもレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンと比べたくなってしまう。レイジが無数の火炎が360度全方向に放たれるような"激しい躍動"のイメージなら、Kornにはモノクロの写真のような"静止画像"のイメージを感じた。どうやら死人は出なかったらしい。しかし強烈よ、やっぱり。

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シートに戻ってくると、友人が口をあんぐりと開けてびっくりしていた。Kornを知らなかった友人はシートで寝ていたのだが、あまりの強烈さにとても眠ることなどできなかったらしい。ジャンキーXLも少し気になったのだが、以後休めないので私も眠りに落ちることにした。途中2回ほど目がさめる。布袋と彼のバンドが出てきたとき。もう1回は『Poison』が演奏されたとき。炎天下での睡眠を満喫して目が完全にさめると、布袋は終わっていてセット切り替えに入っていた。友人に、今井美樹が出て来て共演して結婚の報告でもしたかと私が聞き、友人が、う~ん、俺もところどころ寝てたからわからん、と答え、2人でバカな会話を楽しんでいた。





さてイアン・ブラウンだ。あくまで想像だが、今回のフェス、世代的にはローゼズのファーストによって音楽観、果ては人生観まで変えられてしまった人たちが最も多いのではないか。私はセカンド発売前に初めて聴いたので、その洗礼を浴びてはいない。かの私の友人も、ローゼズとスミスが最も好きなバンドと言ってはばからない。ベン・フォールズのときと同じく、Aブロック中央のやや後ろ目に陣取ることにする。友人にも何か期するものがあるようだ。顔に緊張感がみなぎっている。


そしてイアン登場。編み笠をかぶっていて、サングラスをしている。相変わらずの両肩を振って足踏みするような歩き方。ソロ作『Unfinished Monkey Business』からの曲が進む。右手でタンバリンを振り、足踏みしながら歌う。リアムを思い出す。と言うか、もともとイアンの方が元祖だったのに、今やステータスは逆転している。


なんか客の盛り上がりも凄いな。私の隣には、私よりも明らかに年上と思われるお兄さん2人が、白無地のTシャツに2人並ぶと「Ian」「Brown」となるようにマジックで書かれており、背中には「I Love You」と書かれている。2人そろってタイミングを計ってジャンプしてる。凄い気合だな。私ならこんなむさい男2人(失礼)に「愛してる」なんて言われても気持ち悪いだけだが。シーホーセズのときも感じたのだが、こういう人たちにはやはりローゼズの解散って今でも受け入れられないのではないだろうか。だけど、現実にはローゼズはもう存在しないし、ジョンなりイアンなり、彼らの今のある姿に対して声援すべきだと必死に頑張っているのではないか。私は今でもローゼズのアルバムを1つの優れた作品として愛聴しているが。


『My Star』で一度締め、引っ込むイアン。しかしアンコールの拍手が自然発生的に起こって、イアン再び登場。『Fools Gold』のイントロに場内ざわつくが、結局自分のソロの曲を演る。暖かい拍手に包まれてイアンはステージを後にした。友人に感想を聞くと、歌がうまかったし、演奏もしっかりしていた、と満足そうだった。




(98.8.6.)
















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