Fuji Rock Festival'06 Day 2-Vol.3 Sonic Youth/Kula Shaker







再びグリーンステージに舞い戻ると、ソニック・ユースのライヴが始まって少し経ったところだった。ここ数年活動を共にしていたジム・オルークは今回参加していないはずだが、ステージには5人いる。後になってわかったことだが、元ペイヴメントのマーク・イボルドがサポートとして参加していたらしい。


何度か観ているバンドだが、私に言わせればソニック・ユースはハイアベレージヒッターだ。野球のゲームで、相手投手にしてみればホームランを打たれるリスクこそ少ないが、いくら速球や変化球を駆使して投球の組み立てをしても、いくらコースを厳しく突いても、ことごとく打たれてしまうイヤな奴なのだ。つまりそれは、味方にとっては頼もしい奴ということになる。ここで言う「味方」とは集まったオーディエンスであり、そしてフジロックの主催者側とも言えるかもしれない。


ドラムのスティーヴ・シェリーは淡々とリズムをキープし、長身のサーストン・ムーアはフロントマンとして乾いたヴォーカルを披露。それだけでなく、リー・ラナルドやマークとのギターの絡み合いをすることで、冷たくもノイジーなリフを発している。しかし、彼ら以上に目立っていたのがキム・ゴードンだ。もともとはベーシストなのだが、曲によってはギターに持ち替えてノイズ合戦に参加。もちろん自らがリードヴォーカルを取る曲もあって、とにかく八面六臂の活躍だ。長いキャリアからオルタナロックの女帝とみなされがちな人だが、ここでの彼女は若々しくそして弾けていた。ベテランぶるのではなく、今なお最前線に立って向かって行くのだという姿勢を感じることができ、嬉しく思った。





この後は、次に備えてオアシスで腹ごしらえを。その間に陽が落ちて夜となり、グリーンステージで行われている電気グルーヴのライヴの音が漏れ聴こえてきた。そして予定時間の30分ほど前にレッドマーキーに入ったが、場内は既に立錐の余地もないほどに人で埋め尽くされていた。予想以上の入りにびっくりし、そしてふと思った。私は99年にライヴを観ているので今回の復活劇にも過剰な感激はないが、多くの若いファンにとっては、クーラ・シェイカーは既に「伝説の」バンドになってしまっているのではないかと。


時間になりSEが鳴り響いたところで、場内からは怒号とも悲鳴ともつかぬ歓声があがった。そんな中で、メンバーがステージに姿を見せた。今回は、キーボードこそオリジナルメンバーではないが、それでも立派なクーラ再結成だ。ライヴは『Sound Of Drums』でスタート。クーラ復活を高らかに宣言!という勢いはなく、緩めの出だしだ。以降もこれぞクーラという曲ではなく、どちらかと言うと地味な曲が続き、観ている方は弾けたいが弾けられないという、じらされ感に襲われる。新曲も恐らく何曲か演ったはずだが、これというキラー・チューン的な曲は見当たらなかった。


中盤での『Grateful When Your're Dead』が、まずハイライトとなった。しかし、この曲はジーヴァズ時代にもライヴで演奏されているので、個人的にはさほどの感動はなかった。まだまだアレやソレがあるでしょ、と、そのときが来るのを待ち構えていた。そして、「そのとき」は終盤に訪れた。まずは、ディープ・パープルいやジョー・サウスのカヴァーである『Hush』。更に、追い討ちをかけるように『Hey Dude』だ。クリスピアンが半身になって前かがみになりながらギターをかきむしり、立ち上がると上体を前後に揺らしながら熱唱した。前者は、クリスピアンが90'sのアーティストでもカヴァー能力の高さが秀でていることを証明する曲であり、後者はバンドを代表する決定的な曲だ。





かつてのクーラの楽曲と、彼らのパフォーマンスから生まれるマジックは、2006年の今でもなお立派に通用した。その反面、今後のバンドの方向性を示すであろう新曲が、ほとんど印象に残らなかったのが気になった。アルバムは年末にリリースされる予定と聞いているが、これまでのクーラを継承するのか、それとも新たな要素を打ち出して行くのかが、このときのライヴでは計りかねた。とはいえ、セカンドギタリストを必要ともせず、歌にギタープレイにと抜群のスキルの高さを見せ付ける、クリスピアンのパフォーマーとしての能力は、相変わらず一級品だった。


クーラも、ジーヴァズも、たったアルバム2枚で終わってしまった。少し息詰まったらすぐ解散。クリスピアンがそういう短絡的な道を選択しているように思え、見ている方はなんだか悲しい気持ちだった。しかし、逆にこういう気持ちもある。クーラ・シェイカーは、絶対にあそこで終わるべきバンドではなかった、と。なので私は今回の再結成を歓迎するし、今後も届けられるであろう彼らからの頼りを、楽しみに待つことにする。

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(2006.8.25.)
















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