Fuji Rock Festival'02 Day 2-Vol.3 井上陽水/The White Stripes







フジロックでは、昨年のニール・ヤングとニュー・オーダーのように、異なるステージで観たいアーティストがバッティングしてしまい、苦渋の選択を強いられることもある。私の場合、今年はエゴ・ラッピン井上陽水がそれだった。陽水はめったに観る機会のない人であり、一方のエゴ・ラッピンは今観なくてはならないバンドだと思った。時間的にはエゴ・ラッピンの方が少し早く始まるので、とりあえずヘヴンまで行くことにした。が・・・、なんと、ライヴ開始前なのに既にヘヴンは入場規制。彼らはそんなに人気があったのか。


グリーンに戻ってきた。するともじゃもじゃした頭の紳士が、助手のような人を3人ほど引き連れてあちこち歩き、立ち止まってはステージを観察している。どうやらカメラマンのようなのだが、やたらに目立つ人だ。・・・この人は篠山紀信だった。世の中的には宮沢りえのヌード写真集の人であり南沙織のダンナさんなのだろうが、私にとってはジョン・レノンの『Double Fantasy』のジャケットを撮った人である。昨日は見かけなかったので、陽水だけ撮りに来たのかな。





さて、陽水の出番となった。恐らく歴代フジロック出演者の中でも最も知名度があるであろう大ヴェテランは、果たしてどんなライヴをするのか。バンドは結構大所帯だ。





と~かぁ~いぃ~で~わっ♪






この第一声で、全てが決まった。『傘がない』という曲なのだが、何万人もいたであろうオーディエンスの心臓を鷲掴みにし、ぐぐっと自分の世界に引き込んだ。場内のあちこちから、どよめきが起こった。もちろん私もそのひとりで、背筋がゾクゾクし、鳥肌が立った。エゴラッピンを観れないことの無念さは、この瞬間に吹っ飛んでしまった。


しかしどよめきが起こったのは、冒頭だけではなかった。奥田民生との共作でパフィーの『アジアの純真』や『リバーサイドホテル』、中森明菜に書いた『飾りじゃないのよ涙は』など、"みんなが知っている曲"を次々に連発。野外という舞台の気持ち良さを取り込み、そしてここに集まった、必ずしも自分目当てではなかったであろうオーディエンスたちにまで、訴える力量。そしてこれらをベタな選曲だと感じさせないのは、陽水と共に非常に精度の高い演奏をするバックバンドのメンバーたちだろう。そして今度はあの曲が・・・





夏が過ぎ 風あざみ♪

誰のあこがれに さまよう♪

八月は 夢花火♪

私の心は 夏模様♪






『少年時代』だ。ゆったりめの曲調、そしてこの歌詞。フジロックの舞台とそして今この瞬間に、これほどまでにぴったりとくる曲はないのではないだろうか。年に1度のフジロック。夏の思い出、フジロック。そしてフジロックは、大人が少年に戻れる時間と空間でもあるのだろう。不思議と、心が温かくなったような気がする。


ラストは、『氷の世界』~『最後のニュース』。直立不動でマイクの前に立ち、歌い、ギターを弾き続けた陽水。その姿は、とてもりりしかった。信じられない瞬間が訪れるフジロックに、また新たに歴史の1ページが綴られた。このライヴは、'98のミッシェル・ガン・エレファント'00のブランキー・ジェット・シティーにも匹敵する、日本人アーティストのベストライヴになったと思う。陽水は、ロックの人だったのだ。





先程のザ・ミュージックに続くニュー・カマー、ホワイト・ストライプス。こちらはドラムの姉とギター&ヴォーカルの弟という、変則的な構成の姉弟ユニットだ。ではライヴではサポートのメンバーがいるのかというと・・・、いない!ほんとに2人だけでのライヴだ。


そのライヴだが、驚くほどにワイルドで、そしてグルーヴ感に満ちている。ボブ・ディランの『Love Sick』のカヴァーもしていたが、その音やたたずまいは70'sのハードロックを思わせ、私は特に弟ジャックのヴォーカルにロバート・プラントを、ギタープレイにジミー・ペイジの面影を見た。つまりはひとりレッド・ツェッペリン状態で(笑)、しかしたった2人なのに、このスケール感は凄い。


(2002.8.10.)
















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