Fuji Rock Awakening Vol.4 Blankey Jet City







フーファイの途中辺りから小降りになった雨は、日が落ちる頃にはすっかりやんだ。これで2日目以降も無事に開催できるだろうか。今年は雨具をあらかじめ用意してきている人が多く、またハイネケンのブースでは無料で合羽を配布したりもしていて、大きな混乱にはならなかった。フジロックが続けて開催されていることの成果だろう。


そしてグリーンはケミカル・ブラザーズ。しかし、ここで多くを書くつもりはない。なぜなら、1年前のフジロックとほとんど同じ内容だったからだ。そして恐らくは、1月の単独来日とも同内容だと推測できる。初めてケミカルを観た人にとっては、野外ステージを舞台にした視覚的効果の数々とブレイクビーツは刺激的だったかもしれないが、既に1度観ている私にとってはまたか、という感じだった。このとき私は、朝からずっと長蛇の列が連なっていたグッズ売り場がようやくすいてきたので、Tシャツとプログラムを購入した。








ケミカルが終了し、場内はにわかに異様な熱気を帯びてくる。初日グリーンのトリを飾るのはブランキー・ジェット・シティー。10年のキャリアにピリオドを打ち、先日の横浜アリーナ2Daysにてバンドが当初予定していたツアーは終了している。が、このフジロックのステージこそが、バンドにとって真のラストライヴになることになった。そして私にとっては、最初で最後のブランキーのライヴとなる。


午後9時40分過ぎ。ついにあの3人が登場。ステージバックには、ドクロマークをはさむようにして「Hello!Destructive Rock'nrollers!」「We Are BJC」なる字が見える。ステージ前は3日間通しても最大と思えるくらいの人が集結しているように思え、ライヴ開始と同時に大モッシュがスタートする。


恐らくはバンドのキャリアを総括するが如くの代表曲の連打だったと思うが、私はブランキーについては明るくないので、個々の曲についてまでは細かく言及することができない。彼らのこの10年の道のりがどれほどまでにドラマティックだったのかもほとんど知らない。彼らがどれだけ稀有なバンドだったのか。どれだけ奇跡的なバンドだったのか。彼らの曲にじっくりと向き合ったことのない私がそれを語るのは、失礼というものであろう。


しかし、3人が発しているただならぬ雰囲気、殺気のような異様な緊張感に、私は呑み込まれていた。もう後がない、ギリギリのところに置かれた状況の中でこそ発することのできる、言わば火事場のクソ力のような異常なエネルギー。まるで1曲1曲がクライマックスのように思え、いつライヴが終わってしまっても不思議ではない、憂いと美しさを帯びたパフォーマンス。しかしそのギリギリの状態は途切れることなく続く。100mを全力疾走するペースで10000mを走り切ってしまうかのような勢いとパワー。最後の最後まで真剣勝負を挑んでくる3人に、私は度肝を抜かれてしまった。横浜アリーナにて燃え尽きてしまい、フジロックはリラックスしたステージになるかという思いも頭をよぎったのだが、彼らは最後の最後まで彼ららしくあろうとしている。


時計は11時を回り、壮絶なライヴも終了した。いったんは。しかし、再びステージに姿を見せる彼ら。「アンコールありがとう」というベンジーのことばが、この日最初にして最後に発したことばだった。そして夢の続きへ。ステージ前に集結した大勢のオーディエンス。恐らくはブランキーと共に歩み続け、共に夢を見続けた熱心なファンが集まったのだろう。バンドとオーディエンスの意志がシンクロする瞬間、それは同時にフジロックで毎年発生している瞬間でもある。4年目にして初めてグリーンステージのトリを飾った日本のバンドである彼ら。しかし彼らがおのが持てる全てを出し切らんばかりのパフォーマンスは、過去のフジロックのクライマックスに比べて少しも見劣りするものではなく、そして今年のフジロックでは最大にして最高であったと私は思っている。








1年ぶりの苗場。そして3年ぶりの大雨でスタートしたフジロック初日。しかし今年もマジックは起こった。異空間は存在した。そしてその異空間だが、うまく表現できないがフジロックが独自の野外フェスティバルとしてついに覚醒しつつあることを感じさせた。











(2000.8.14.)
















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