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ジョーカー(ほぼ結末まで記載につきネタバレ注意)

 ジョーカー(ネタバレ注意)

ゴッサムシティ。コメディアン志望のアーサー・フレックは、母ペニーの看病をしながら大道芸人の仕事をしていた。アーサーは、脳神経の異常から発作的に笑い出す体質で、自身もカウンセリングを受けていた。

大道芸の派遣会社を解雇されてしまったアーサーは、ピエロのメイクのまま地下鉄に乗り、車内で3人の会社員から暴行を受けてしまう。ついに拳銃で3人を射殺してしまい、現場から逃走。その後コメディアンとしてバーのステージに立つが、そのときの映像が人気MCマレー・フランクリンの番組に流れ、アーサーに出演オファーが届く。

アーサーの身におこる出来事は、ことごとく絶望的だ。冒頭で、閉店セールのパネルを少年たちに奪われた挙げ句路地裏で暴行を受けてしまう。観ていて痛々しいが、これは序の口。派遣会社の同僚から拳銃をもらうが、これが会社を解雇される要因になってしまう(後半でこの同僚を射殺する)。

母はかつて資産家ウェイン家で働いていて、トーマス・ウェインがアーサーの父だと示唆している。しかし、事実はトーマスとの関係はなく、素性が不明だったアーサーはペニーの養子で、しかも養父から虐待を受けていた(アーサーの発作的な笑いは、虐待もその一因と考えられる)。自分が唯一信じていた母は実母ではなく、精神疾患で妄想癖のある女だった。アーサーは、ペニーを窒息死させる。

マレーの番組への出演が決まった際、アーサーはピエロのメイクをし、紫のスーツを着て臨む。マレーには、自分をジョーカーとして紹介するよう依頼し(アーサーの映像を使ったときにマレーは「ジョーカー」と言っていた)、番組出演でマレーとのやりとりの中、会社員を射殺したのは自分だと告白。更には、その場でマレーを射殺してしまう。

キャストは、アーサーにホアキン・。この作品は、もうほとんどホアキンに尽きると言っていい。絶望に追い込まれながら、殺人を犯す度に解放されていくさまは異常でしかない。ホアキンは、演技をしているというより、アーサーその人になり切っている。まるで、アーサーが現実に存在するかのように。ベネチア映画祭での金獅子賞獲得は伊達じゃない。

狂気に満ちたアーサー/ジョーカーを受け止める役どころであるマレーは、。人気番組のMCを務めていることに、「キング・オブ・コメディ」を思い出す映画ファンは少なくないだろう。そちらでは、コメディアン志望の主人公をデ・ニーロが演じ、番組MCを誘拐監禁して強引に番組出演を果たしていた。

そしてだ。スクリーンでホアキンのアーサー/ジョーカーを観つつ、これまで映像化されたジョーカーが頭に浮かんできた。

ティム・バートン版ではジャック・ニコルソンが演じ、マフィアのジャック・ネイピアが薬品槽に落ちてジョーカーに変貌。その後は、さすがの存在感を放っていた。「ダークナイト」のヒース・レジャー、「スーサイド・スクワッド」のジャレッド・レトは、共に最初からジョーカーとして登場。生い立ちなどは不明で、得体の知れない不気味さを漂わせていた。

突出していたのは、やはりヒース・レジャーだ。狂気に満ちた怪物感をにじませつつ、時折ジェントルな佇まいが垣間見られる、唯一無二のキャラクターを完成させていた。超人的な能力を持たないジョーカーが、多くのアメコミ悪役よりも突出しているのは、その異様さが関わる者の精神を追い込んでしまう凄味を備えているからだし、ヒースはそれを体現していた。

本作は、ジョーカーの誕生をDCコミックスにはないオリジナルストーリーで描いているとのこと。しかしながら、アーサーとブルース・ウェインとのコンタクトもあり、後のバットマンとジョーカーとの関係を知って見ていると興味深い。また、ブルースの両親が殺される場面はほぼ原作を踏襲している。

上映時間は2時間2分だが、それ以上の時間が費やされていたような錯覚を覚えた。それだけ、密度が濃い作品だったのだ。

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