バンドの代表作であるだけでなく、発表から30年以上の歳月を経た今でさえその音が放つ輝きは少しも失われておらず、全てのロックファンに聴いてほしい作品だ。以後のルー･リードやジョン･ケイルの活動、そして何世代にも渡って現れる数多くのフォロワー。その全ての原点がここにあったのかと思うだけで、このアルバムは最早揺るぎようのない風格を備え、マジックを醸し出すことに成功している。そしてこれが世に産み落とされたのが1967年。まさに早過ぎたアルバム、まさに裏名盤の元祖的存在。アンディ･ウォーホールが手がけたジャケットはロック史上に残る傑作で、通称"バナナアルバム"とも呼ばれるようになっている。

　ニコもウォーホールも去ったヴェルヴェッツ。ルー･リードとジョン･ケイルの音楽性を通しての衝突が異様な緊張感を生み出し、金属的で硬質な音楽を構築する。前作が代表作なら、今作はアルバムとして最も密度が濃く、最も完成度が高い。そしてこの無機的でノイジーな世界観は、後のパンクロックへと受け継がれているように思える。タイトル曲は早くからデヴィッド･ボウイがライヴで取り上げ、ラストの『Sister Ray』は17分を越える超大作。ルーとケイルの衝突はバンド内の人間関係にまで及び、結果ケイルは今作を最後にバンドを脱退する。

　シンプルにバンド名をアルバムタイトルに冠した今作は、ルー･リードによる詩的な世界観とシンプルでポップなサウンドが繰り広げられる。個人的には地味でおとなしい印象を受けるが、こうしたたたずまいもヴェルヴェッツの魅力の一角であり、それは後のルー･リードのソロ活動にもフィードバックされていると感じる。ジョン･ケイルに代わり、ダグ･ユールが後任として加入。そしてユールの加入こそが、以後のバンドの運命を左右することになる。90年のルーとジョン･ケイルのジョイントでは、ケイルのリードヴォーカルによる『Pale Blue Eyes』が披露されている。

　この頃のルー･リードはバンドへの情熱も薄れ、イニシアティヴは完全にダグ･ユールが握っていた。ルーはレコーディングの完成に立ち会えず、またdsのモーリン･タッカーは出産を控えていたため、ユールの弟がdsを務めるという乱暴な状態だった。･･･という当時の状況を気にすることなく、純粋に音楽としてこのアルバムと向き合えば、ヴェルヴェッツの他のアルバムに比べても遜色のない内容だと私は思っている。そして言うまでもなく『Sweet Jane』『Rock & Roll』の2大ナンバーを収録。95年にはリマスター及びボーナストラックが多数追加された形で再発された。

　93年、ついにオリジナルヴェルヴェッツが再編され欧米をツアー。そしてこれは6月15、17、18日のパリ公演から編集されたライヴアルバムだ。オリジナルアルバムはもとより、後年発表された未発表曲集などからも満遍なくチョイスされ、ほぼベストの選曲といえる。ラストに収録されている『Coyote』は唯一作られた新曲。今作はライヴをほぼ忠実に再現収録しているが、同名のビデオ作品は15曲に絞られ、曲順も大胆に並べかえられている。個人的にはモーリン･タッカーが他のメンバーを従える形でリードヴォーカルを取る『I'm Sticking With You』がほのぼのとした曲調で印象に残る。アクの強いメンバーばかりのヴェルヴェッツにあって、彼女は潤滑油のような存在であったに違いない。