声を大にして言いたいのは、タイトル曲が収録されているだけのアルバムではないということだ。2枚組にありがちな中だるみ感はなく、全編を貫く緊張感がたまらない。デュアン･オールマンとのツインリードがガンガンに冴え渡り、当時25歳の若きクラプトンの内面からほとばしるエネルギーは、ギターのみならず荒々しいヴォーカルにも顕著だ。これ以前のクラプトンはギタリストであり、これ以後のクラプトンは徐々にヴォーカリストの方にシフトしていく。その分岐点ともなった本作は、両方の要素を兼ね備えた、クラプトンのキャリアにおいても奇蹟的な瞬間の記録だ。もちろん個人的にもクラプトンのベスト。

　70年10月のフィルモア･イースト･ライヴに出演したときの音源で、時期としては初となるソロアルバムのリリースを終え、そして2枚組『いとしのレイラ』発表直前に当たる。しかし収録からリリースまでには2年以上のブランクがある。2枚組ながら全8曲という大作揃いで、曲はドミノスの他、同メンバーでレコーディングしたソロの曲。なおデュアン･オールマンはオールマン･ブラザーズ･バンドとしての活動があったために、ツアーには参加していない。そして翌71年の10月、デュアンはバイク事故により24歳の若さで死去。

　リリース20周年を記念した3枚組で、レコードでは2枚組だった『いとしのレイラ』をリマスター処理を施した上でDisc 1に凝縮。Disc 2は怒涛のジャムセッション、Disc 3はジャムセッションを含む別バージョンが収録されている。ブックレットには当時のレコーディングスケジュールのコピーも添付され、『Layla』の前半部と後半のピアノ部分が別の日にレコーディングされたことがわかる。ハイライトはDisc 2で、10分オーバーの大作ばかり。更に『Jam IV』は、なんとデュアンを含むオールマン･ブラザーズ･バンドが加わってのジャムとなっている。

　70年10月のフィルモア･イースト･ライヴ、ドミノスは2日間に渡って出演していた。本作は『In Concert』及び4枚組Box『Crossroad』に収録された音源を取りまとめつつ、フィルモアの未発表音源を盛り込んだコンピレーション。ジミ･ヘンドリックスの『Little Wing』は、同年に亡くなったジミへの鎮魂歌のようにも聴こえる。そのジミはこのライヴのわずかひと月半前に27歳の若さで死去。ジミの死と親友ジョージの妻パティへのかなわぬ恋がクラプトンをドラッグ漬けへと追い込み、翌年のデュアンの死が更にダメを押す。