優れた音源を輩出している、英国国営放送スタジオライヴのクリーム版。7回に渡って行われた収録が年代順に並べられており、なんと全26曲中24曲が未発表音源だ。通常のライヴアルバムとは異なり、観客による割れんばかりの拍手や歓声というのは無い。しかしそうした状況が逆にプラスに働いていて、3人のアーティストがおのおのの楽器を駆使してぶつかり合う、バトルの凄まじさを際立たせる格好になっていて、聴く側にも緊張感が伝わってくる。

　スタジオテイクをDisc1と2に、ライヴテイクをDisc3と4に配した、決定版と言えるボックスセット。Disc2後半には未発表テイクが集中。観客がいない状況でリラックスして演奏しているかと思えば、曲によっては3者によるバトルが繰り広げられている。ジャケットは『Disraeli Gears』をそのまま引用。ディスクもピクチャー仕様になっていて、サイケ時代を彷彿とさせている。実働2年半はあまりにも短過ぎたが、その短期間の間にこれだけの音源を残したことは、もっと評価されてしかるべきだと思う。

　クリームのキャリアを総括したヒストリーもので、この作品のために取られたと思われる、メンバーのインタビューが中心になっている。ジャックとジンジャーがすっかり老けてしまったのと対照的にクラプトンは今でもカッコよく、クリームがキャリアのピークとなった2人と、その後も音楽的に充実し続けているクラプトンとの立ち位置の差を浮き出している。インタビューでは3者をよく知るジョン･メイオールや、ジンジャーを敬愛するアレックス･ヴァン･ヘイレンも登場。また『Sunshine 〜』を弾くジミ･ヘンドリックスのライヴ映像も収録。ジミとクリームは、お互いを刺激し合う好敵手的関係にあった。

　解散コンサートとなった68年11月のロイヤルアルバートホールの公演を収録したライヴビデオで、クリーム映像の決定版と言える。ヒストリービデオ『Strange Brew』のライヴシーンは、ほとんどがここからの引用。ライヴとは別にメンバーのインタビューもあって、自分で解説しながら楽器を弾いてみせる場面も。ジャックとジンジャーが渾身のパフォーマンスをする中、クラプトンの表情が悲しげに見えるのは気のせいだろうか。クリームが示した音楽性はジェフ･ベック･グループやレッド･ツェッペリンに継承されて行くが、クラプトン自身はまた別の方向に向かい、模索を続けることになる。

　名盤が如何にして完成したかを検証する、「Classic Albums」シリーズのクリーム版。活動当時の映像こそ既出のものがほとんどだが、見ものはクラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーといった当事者、及びスタッフやジャーナリストらによる、この作品のために撮られたコメントだ。3人とも作詞が得意ではなく、作詞家をスタジオに招いて曲を作ったこと。斬新なジャケットは、デザイナーがいくつもの古い本のデザインを切り貼りし、真っ赤に染め上げて出来上がったこと。名曲『Sunshine Of Your Love』は、ジャックが何気なくリフを弾き、それにクラプトンがギターで呼応して偶発的に生まれたこと。・・・など、興味深い証言が発せられる。