Red Hot Chili Peppers Discography　Original Album

　まるでゲゲゲの鬼太郎のイタズラ書きのようなイラストのジャケットに、まずは度肝を抜かれる。EMI傘下のレーベルであるエニグマと契約したが、ヒレル･スロヴァクとジャック･アイアンズは既に別レーベルに所属して活動中。その契約の関係上参加できず、よってジャック･シャーマンとクリフ･マルチネスを代役に起用してレコーディングしている。ファンクやラップなどを融合した音はミクスチャーロックと呼ばれ、ジャンル振り分け不能バンドの元祖として、レッチリの活動がスタートした。

　後年の充実した作品を思えば地味で垢抜けていないが、しかしそれでも、来るべきアメリカン･オルタナティヴの勃興～隆盛に先駆けて、ファンク色の強い今作が85年に世に出たことの方を評価したい(ビースティー･ボーイズよりも早い)。駆け出しのレッチリをファンクの大御所ジョージ･クリントンが手がけたとなれば、やはり注目はクリントンの方に向いて当然。フジロック'02のステージでの両者の共演は、日本のファンにとっては記憶に新しい。

　レッチリサウンドが完成を見た、最初の作品。ハード＆ヘヴィーなサウンドを基調としつつ、アンソニーのラップ、フリーの魔法のようなベース(レッチリの曲は、フリーのベースをイントロにして始まる曲が多い)、ヒレルの歪んだギターなど、それぞれ能力が向上したメンバーが持ち味を発揮。バンドとしてのコンビネーションも、分厚くなったように思える。ボブ･ディランのカヴァーである『Subterranean Homesick Blues』は、最早その原形を留めていない。

　ヒレル･スロヴァクがドラッグのオーバードーズで死亡し、そのショックでジャック･アイアンズもバンドを脱退。しかしフリーとアンソニーは立ち止まらず、ジョン･フルシャンテとチャド･スミスを迎え入れてバンドを立て直した。スティーヴィー･ワンダーの『Higher Ground』、ジミ･ヘンドリックスの『Fire』などでルーツを垣間見せつつ、トータルではハード目の仕上がりに。ヒレルやジャックがレコーディングに参加した曲もあり、レッチリ版『Let It Bleed』といったところか。個人的には最も好きな作品。

　ワーナー移籍後の第一弾。これまでは前人未到のサウンドを作り上げながら、バンドのビジュアルイメージもあってか、マニアックなキワモノというポジションに留まっていたと思う。それが今作では、ダイナミックさとポップセンスがサウンドに付加された。タイトル曲を始め、『Suck My Kiss』『Give It Away』『Under The Bridge』など、現在でもバンドにとって重要な曲を多数備えた、言わばバンドの代表作。レッチリは、異端児のままでメインストリームに躍り出た。

　92年の日本公演時に、ジョン･フルシャンテが脱退。残りの日本公演はキャンセルになり、ツアーも急遽サポートを加えて継続はさせたが、バンドは暗礁に乗り上げた。しかし、ジェーンズ･アディクションのデイヴ･ナヴァロが新たに加入。そのデイヴのギターが唸りまくり、レッチリmeetsジェーンズのような仕上がりに。キャリア中もっとも「らしくない」作品で、現在は賛否が分かれているが、個人的には嵐のフジロック'97を体験したこともあってか、特に違和感はない。

　活動停止状態だったジェーンズ･アディクションが97年に復活し、デイヴとフリーが参加。デイヴはそのままレッチリを脱退してしまい、今度はレッチリが活動停止状態に。しかしジョン･フルシアンテが電撃復帰し、バンドは何度目かの再生を果たす。サウンドは一聴するとおとなしめだが、単純なミディアムではない、このバラードのようなハードロックのようななんとも言えない不思議なサウンドこそ、元祖ジャンル分け不能バンドの面目躍如ではないか。

　前作で到達した、不思議なサウンドの表現力。それはすなわち、メンバーおのおのが心の理想郷に到達したことの表れではなかっただろうか。今作はそれを更に推し進め、密度を高めることに成功している。『Mother's Milk』の時点では若さで突っ走っていたジョンも、ここでは自己をコントロールしつつ、それでも臆することなく暴れまくっている。70分オーバーというアルバムのヴォリュームも凄いが、1曲1曲の中にもドラマ性が備わった、とてつもなく深い作品だ。

　2004年6月にロンドンのハイドパークで行われたライヴ(ロックオデッセイで来日する1ヶ月ほど前に当たる)を収録した2枚組で、レッチリ初のライヴアルバム。『By The Way』のツアーなので、そこからの曲プラスベストヒットというのがこのときのセットリストの基本的な構成だが、ここでは『Rolling Sly Stone』『Leverage Of Space』という新曲に加え、ドナ･サマーの『I Feel Love』を始めとする計3曲のカヴァーを披露するなど、意外な音楽性も見せている。現在は廃盤か！？

　バンドの状態がよほど好調だったのか、なんと新曲を38曲もレコーディングしたそうだ。どういう形態で世に出すかバンド内で協議した結果、曲を厳選して28曲2枚組という形でのリリースに落ち着いた。特に多くの曲を出すことにこだわったのがジョンだそうで、前作ほどではないにせよ、ジョンのギターが冴え渡っている曲が際立っている。『By The Way』時にはフリーがバンド脱退をも考えていたという衝撃の告白があったが、そうした苦難をも克服し、バンドは何度目かのピークを迎えつつあると思われ、開催10回目となるフジロック出演も決まった。