Lou Reed
=ルー・リード=






 ルー・リードは「ボブ・ディランの凄いところは、彼の最高傑作はこれから作られるかもしれないと思えるところにある」という賛辞を述べたことがあったが、このことばはそっくりそのままルー・リード自身に当てはまると思っている。


今なお衝撃として語られるヴェルヴェット・アンダーグラウンド。ファーストアルバムはビートルズの『Sgt.Pepper's〜』より3ヶ月先駆けて発表。SMやヘロインなどタブーを歌った歌詞、ドス黒い地下世界のようなサウンドは、フラワームーヴメントやサイケ全盛の当時にあって明らかに異端だった。セールス上の成功を収めるはずもなく、その後激しいメンバーチェンジを繰り返すも、短命のままに空中分解してしまう。


デヴィッド・ボウイを始め、テレヴィジョンやジョイ・ディヴィジョン、エコー&ザ・バニーメン、更には90'sの若きバンドまでがヴェルヴェッツの影響下にあることを公言。そしてそのヴェルヴェッツの精神性を受け継ぎ、今の今まで体現し続けてきているのはルー・リードその人に他ならない。ライヴのほとんどのオープニングを飾ってきた『Sweet Jane』。彼自身のアーティストとしてのあり方が、この曲を歌い続けることで矛盾になってしまうことなどなかったはずだ。


彼の魅力は都市にまつわる退廃や混沌を歌った"詩人"という側面で語られることが多い。が、実はテクノロジーやメディアに対しても積極的に取り組んでいる一面があることも見逃してはならない。ギターシンセの適用やバイノーラル録音、アルバムにシンクロした映像作品のリリースなどがそうだ。セールス的に成功しないのは、ルーの視点、ルーの感性が時代に先んじ過ぎているからなのかもしれない。


インタビューでは「音楽以外のことは質問するな」「ヴェルヴェッツ時代のことは聞くな」「つまらなければその場で終わりだ」というキツいお達しが事前にあるインタビュアー泣かせだが、的を得た質問をしさえすれば期待値の倍以上の答えが返って来る。頑固ジジイのようでいながら、実はコミュニケーションをとても大事にする人なんだな、とも思える。











ソロとしての活動も70's〜80's〜90'sを駆け抜けて、創作意欲は今だ衰えを知らない。ビッグセールスを記録することもなく、レーベルとの対立も絶えなかった。しかしそれでもルー・リードは休まない。曲を書き、アルバムを出し、そしてツアーに出る。その生きざまは素晴らしい。そして彼がボブ・ディランに贈ったことばと同様、彼自身の最高傑作はもしかしたらこれから先に生まれるのかもしれない。4年ぶりに届けられた『Ecstacy』という便りを聴いて、そう感じている。


















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