セットチェンジ中じっと待っていたのだが、A1ブロックの後方中寄りにいた私は、後方がPAブースという位置関係になっていた。ふと見てみると、DJの人がアナログ盤でプレイをしていて、これが場内にBGMとして流れている曲であることがわかった。また、「まもなく開演いたします」というアナウンスをした女性も、このブースにいた。そうしてクアトロ終了から30分近くが経過。DJが手を止めたのを見てこれは来るなと思ったそのとき、客電が少しずつ落ちた。場内からは大きな歓声が沸き、その中を『Fuckin' In The Bushes』のSEが流れ出した。
真っ先にステージに現れたのは、なんとリアムだった。他のメンバーもゆっくりと現れては自分のポジションに陣取る。SEがちょうど終わったところで、ノエルのギターから聴き覚えのあるリフが。『Rock N' Roll Star』でライヴは幕を開け、立て続けに『Lyla』〜『The Shock Of Lightning』と、アッパーな曲で攻め立てる。オールスタンディングという環境もいい方に作用していて、オーディエンスの熱気も尋常ではない。これまでのオアシスの来日公演では客が棒立ちでノリが必ずしもいいとはいえず、バンドとオーディエンスの共鳴が生まれにくかったこともあったのだが、この日は軽くそのハードルをクリアしていた。
『Cigarretts & ALchool』までが怒涛の勢いを見せていて、続く『The Meaning Of Soul』でようやく少しクールダウンし、落ち着いたモードへとシフト。ステージは、後方に4面のスクリーンが横並びになっていて、それぞれの間にライトが設置されていた。スクリーンは、ステージ上の4人を捉えたり、あるいは4面全てリアムだったりノエルだったり、またアブストラクトな映像を流したりしていた。またステージの両サイドに巨大モニターがあって、こちらはメンバーのアップを中心に映していた。Bブロックの人たちは恐らくステージがあまりよく見えないと思われ、モニターはそのサポートになるだろうが、A1ブロックの私も時折モニターに視線をやっていた。
新作『Dig Out Your Soul』はこれまでのオアシスの作風とはかなり異なる、ある意味実験性の高い作品だと思う。ライヴでは以前の曲との温度差が生まれてしまうのではとも思ったのだが、『To Be Where There's Life』『Waiting For The
Rapture』といった曲が演奏されてもそうはならず、私が勝手に心配したに留まった。続いてはリアムがさらっと袖の方に下がり、ノエルがヴォーカルを取る隠れた名曲『The Masterplan』に。間奏ではなんとゲムがギターソロを披露していてびっくり。これまで、オアシスのギターソロといえばほぼ100%に近い形でノエルだった(という印象が強かった)ので、これは嬉しい誤算だった。続いては『Songbird』『Slide Away』と、オアシスの中で定番とまではいかないが隠れた名曲が披露される。
「水戸黄門」こと『The Importance Of Being Idle』を経て(笑)、再びリアム生還。最新シングルである『I'm Outta Time』はスロー気味のじっくり聴かせる曲だったが、続く『Wonderwall』から本編ラストとなった『Supersonic』というくだりは、最早反則技に近かった。アンコールは、アコギバージョンの『Don't Look Back In
Anger』でスタート。圧倒的な勢いを以て迫ってくる原曲とは異なり、シンプルなアレンジだ。サビに差し掛かるとノエルは歌うのをやめ、オーディエンスの大合唱に委ねた。日本は英語圏の国ではないこともあってか、英語詞の合唱というのはどうしてもパワーダウンしてしまうと、これまで私はずっと感じてきた。しかしここでは、パワーダウンどころか見事なまでに合唱が成立していて、そのことにびっくりしてしまった。
リアムが加わり、新作からの『Falling Down』を経て、これまた問答無用の『Champagne Supernova』へ。そして、オーラスはビートルズの『I Am The Walrus』だ。初期の頃にカヴァーしていてその当時のライヴの締め曲でもあったのだが、その当時を思い起こさせるなつかしさはなく、むしろ今の曲として鳴らされているように思えた。リアムは歌い終えると早々にステージを後にし、他のメンバーも適度に手を振りながら袖の方にはけて行った。最後まで残ったのがノエルで、手を叩きながらオーディエンスに向けて挨拶をしてくれた。