Dinosaur Jr.  2008.3.27:Shibuya O-East

解散したバンドの再結成は今や珍しいことではなくなり、ファンの立場としてはむしろ歓迎すべきことと思っている。のだが、その再結成ツアーが一時的なものではなく、バンドのパーマネントな活動へとつながっていくケースはやはり珍しく、更に歓迎すべきことだ。Jマスキスは実は日本にはコンスタントに来日してくれていて、再結成後だけで今回がもう5度目の来日になる。





チケットの整理番号が早かった私は、頑張って最前列をゲット。しかし会社から直行でスーツ姿ということもあり、中央のブロックはちと危険かなと考え、左のブロックに陣取った。左とは、つまりJマスキス側である。予定時刻から10分ほど過ぎたところで、メンバー3人がふらっと登場。ほぼ同時に客電が落ち、それぞれが持ち場についたところで演奏がスタート。新譜『Beyond』の冒頭の曲であり、現在のダイナソーの顔的な曲とも言える『Almost Ready』だ。


その音のデカさに、まず度肝を抜かれた。Jの後方にはマーシャルのアンプがまるでJを取り囲むように並べられていて、その数はルー・バーロウの倍はあるのだが、それらをフルに活かしたかのような爆音に、いきなり耳が引き裂かれる。おかげで?Jのヴォーカルはほとんど聴こえず、当のJ本人はこの音加減でなんともないのかと(耳栓か何かしているのかもしれないけど)、逆に心配になってしまうくらいだ。


アンプやドラムセットなど、機材類はステージの前の方に設置され、向かって左からJ、ドラムのマーフ、ベースのルーという並びになっている。つまり本来はもっと広いはずのステージを、彼らは敢えて狭く使っているのだ。そのJはロングの銀髪に覆われて表情はほとんど見えず、そしてディスチャージのTシャツを着ていた。マーフはTシャツに短パンのラフないでたちで、ルーはポロシャツ姿。Jほどでもないが結構髪が長めである。





J、ルー、マーフの3人で制作したアルバムは初期の3枚と新譜『Beyond』であり、選曲の方も当然ながらこの4枚からが中心になってくる。しかし音こそ爆音ではあるものの(徐々に耳の方も爆音に慣れてきた)、3人は気負うことなくいたってリラックスしている。曲が終わる毎にそれぞれ汗を拭いたり水を飲んだりしていて、少し間を置いてから次の曲に入るという具合だ。演奏はマーフがスティックでリズムを取って始めるのがほとんどで、Jのギターで始まる曲が2、3曲あったくらいだと思う。


Jを目前にしている私としては、この人の動きが細かいところまで追うことができた。ほぼ1曲毎にギターのチューニングをしていたのだが、それは1曲の中でもアンプをこまめにペダルで操作してディストーションやエフェクトをかけているためだった。この人、相当な機材オタクなのでは?プレイ自体は、序盤では上体を大きく前傾させながらギターを弾く絵柄が多かったが、中盤以降はほぼ直立不動のスタイルで弾くことが多く、それでもチョーキングやアーミングを利かせるのを忘れてはいない。『Pick Me Up』での延々と続くギターソロは、中盤のハイライトになった。


間近で見るマーフは思ったほど巨漢でもなく、背丈はむしろJやルーよりも低い。またドラムプレイも力任せではなく、緻密にリズムを刻むといったたたずまい。一方ルーのプレイは、ベースを斜めに(というより縦に近く)構えて弦をカットするように弾くというスタイルだ。直立不動というわけでもなく結構動いていて、マーフに寄り添うようにして弾く場面も多かった。そのプレイぶりは以前Jがソロ活動をしていたときのザ・フォグのメンバーだったマイク・ワットにも少し似ている気がして(この人は現在ストゥージズのメンバーとして、イギー・ポップと活動を共にしている)、類は友を呼ぶのかなとも思った。





インスト部分が長い『The Lung』を経て、不意に放たれたのがキラーチューン『The Wagon』で、更に『Freak Scene』へとなだれ込む必勝リレーに。このときフロアの中央ブロックでは、ついにダイヴが発生。やっぱり、左のブロックに陣取っていて正解だったなあ。本編ラストは、『Raisans』で締めくくった。セカンド『You're Living All Over Me』からの曲は、きっちり要所を占めている。


あまり間を置かずにアンコール。ステージにJのギターは2本用意されていたのだが、本編中はJは1本のギターだけで弾き切っていて、アンコールになったときに初めてもう1本のギターを手に取った。演奏したのはまずは『No Bones』。そして、キュアーのカヴァー曲というより今やダイナソーを代表する曲のひとつになっている『Just Like Heaven』となり、オーラスはルーがリードヴォーカルを取る『Mountain Man』で締めた。『No Bones』『Just Like Heaven』を始める前は3人で相談していて、もしかしてセットリスト変更かな?と思ったのだが、結局予定通りに演奏したようだった。





演奏時間は1時間20分くらいで、聴きたかったがこの日は聴けなかったという曲もまだまだたくさんある。ではあるが、もともとダイナソーとは(特にJは)、そのハードでヘヴィーなサウンドとは裏腹に、「渾身の」とか「入魂の」といったあり方をするバンドではない。気負わず飾らないあり方こそがダイナソーの本来の姿だと思うし、バンドがそういう状態にあるということは、これからもいい便りが届けられると期待していいはずだ。Jとルーがケンカしなければね(笑)。





(2008.3.30)















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