The Cornelius Group/ゆらゆら帝国 2007.8.8:Liquid Room Ebisu

もともとは新宿歌舞伎町にあったライヴハウス、リキッドルーム。それが2003年末を以って閉鎖となり、そして場所を恵比寿に移してリニューアルオープン。それからこの8月で3周年を迎えたそうで、それを記念して、リキッドに親しみ、ゆかりのあるアーティストたちが、断続的にライヴを行うことに。そしてこの日はゆらゆら帝国にコーネリアスという、なんとも豪華な対バンになった。個人的にはどちらのリキッドにも何度も足を運んでいて、今回チケットが取れたのはそのご褒美のように思えた。





 セットチェンジのことを考えると、ステージセットに凝っているコーネリアスの方が先ではないかと予想していたのだが、先に登場したのは意外やゆらゆら帝国の方だった。こちらは最低限の機材だけがステージに並べられていて、それらが前方中央部に凝縮されている状態。その機材を背負うように、3人が陣取っている。坂本慎太郎は例によって黒のTシャツに赤のパンツという、シンプルないでたち。ベースの亀川千代は黒づくめの格好。ドラムの柴田は、ドラムセットの中に収まっていることもあり、白いシャツを着ているのがかろうじて見えるくらいだ。


 ツアー自体は毎年行っているゆら帝だが、創作活動の方となると結構ご無沙汰だ。それがこの秋には新譜のリリースを控えており、更にはPV集もDVDとしてリリースするとのことで、バンド活動が新たな局面に差し掛かっている。そして序盤は、その新譜に収録されているであろう新曲をいくつか披露する。ゆったりとした独特の「間」を保っている中でギターロックをやっているのがゆら帝のいいところだと思っているのだが、ここでの新曲はどちらかというとストレートなギターロックで、それがかえって新鮮に聴こえた。


 今回私は、ステージ向かって右側の前方で観ていた。個人的にはこれまで何度か彼らのライヴを観ているのだが、ここまで接近して観たことはなく、よって3人の演奏するさまが生々しく伝わってきた。柴田は、顔面から汗をほとばしらせる凄まじいプレイを見せていた。坂本は頭髪のヴォリュームが増しているように見え、ヴォーカルにはいつもの通り張りがあり、そして弦を弾く指先こそ緻密だが、そこから発せられる音はとてもクリアで通っていた。ベースの亀川だが、まあこの人の髪の長いこと長いこと。余裕で腰まで届いていて、両腕に垂らしながら弾くさまは妖艶ですらある。がしかし、途中機材の調子が悪くなり、スタッフが出てきて調整する一幕もあって、その間亀川は少し不機嫌そうにしていた。あらら。


 曲間をほとんど切らすことはなく、次から次へと曲が連射され、場内には異様な緊張感が漂うようになってきた。中盤では名曲『タコ物語』が披露され、いよいよゆら帝ワールドが全開に。続く『恋がしたい』では歌そのものの美しさが広がっていき、今更ながらにいいバンドだよなあとしみじみしてしまった。しかしこちらの気持ちなどバンド側が知るはずもなく、なおも演奏は続けられた。対バンなので、短ければ30分、長くても45分くらいの短縮セットになるのではとも思っていたのだが、彼らは1時間オーバーの演奏をやってのけ、結局通常のライヴとほぼ変わらない密度で繰り広げられた。最後は『ロボットでした』~『3×3×3』と畳み掛け、坂本のギターはノイジーさを加速して沸点に達し、そしてお決まりのえびぞりジャンプも披露してくれた。





 セットチェンジとなり、ステージ上では機材の入れ替えが行われる中、スタッフが白い幕を引いてステージを覆った。その幕には5色のカラーが映し出され、やがて時間になると場内が暗転。まずは幕越しに演奏が始まり、ギター、ベース、ドラム、キーボードと、それぞれの楽器の音が断片的に発せられ、『さくら』やスーパーマリオの効果音なども飛び出してくる。それがしばし続いた後、すとんと幕が落ちてコーネリアスの面々が姿を見せる。それと同時に、『Breezin'』でフル演奏がスタートした。


 メンバー配置は、向かって左からキーボードの堀江、小山田、ドラムのあらきゆうこ、ベースの清水という具合。ただ、向かって右前方の私の位置からはあらきと清水の姿は見えず、音だけで楽しむ形に。ステージ後方にはスクリーンがあって、曲にシンクロして映像やPVが流されるのだが、それも今回の私に限ってはあまりよくは見えず、よって演奏そのものを楽しむ方に気持ちをシフトさせる。小山田はボーダー柄のシャツに帽子という、小洒落た格好だった。


 音と映像とのシンクロこそが、ライヴの場におけるコ−ネリアスの醍醐味だと思うのだが、なにせここリキッドは狭くて天井も低くて密閉感に溢れ過ぎていて、映像その他の演出効果が充分に発揮される場とは言い難い。ステージとフロアに陣取る客との距離も近く、よってバンドとしての演奏の力量が問われるように思える。バンド側もそれを意識しているように思え、原曲に忠実に演奏するというよりは、よりラフで生々しく演奏しているように見て取れた。選曲は最近2作『Sensuous』『Point』からを中心とし、これらはいずれもデジタルを基調とした作風なのだが、この場においては小山田のギターや、キーボードとギターを巧みに使い分ける堀江など、そのプレイぶりが光っている。


 こちらもゆら帝と同様1時間強のステージをこなし、いったんは引き下がるメンバーたち。しかしアンコールで再登場すると、小山田は演奏の途中で「2!」「4!」といった具合に数字を言い放ち、バンドがその回数分ビートを発するということをする。やがて小山田は、自身のマイクスタンドをフロア側に向けた。それを受けてオーディエンスが口々に数字を連呼し、比較的大きかった声に対してはバンドはビートで返していた。更に小山田は黒いボックスから電子音を発し、やがてそれをフロア前方のオーディエンスに触らせ、やがて預けてしまいオーディエンスの好きにさせるという具合に。オーラスでは小山田がドラム、あらきがフロントに立ってフルート(かな?)を吹いて、しっとりと締めくくった。





 私は日本のアーティストをチョイスする上で、ある基準を持っている。それは、このアーティストなら海外に出しても恥ずかしくない、このアーティストなら海外でライヴをやっても支持を得られるはずだ、という感触だ。もちろんこの日の2組はこの基準をあっさりクリアしていて、ゆらゆら帝国はオーストラリアでツアーしているし、コーネリアスに至ってはコーチェラでトリを務めているくらいだ。コーネリアスの音楽が海外で通用しているというのはまだ理解できるが、日本語で歌っているゆら帝が、海外でどういうリアクションを受けているのかというのを想像するのも、結構楽しい。ことばの壁があったとしても、あの凄まじいプレイを観たら、海外のロックファンでも必ず引き込まれるはずだ。




(2007.8.18.)


















Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.