ステージからはスポットライトがランダムに点灯していて、シンフォニーのSEが流れ出す。少しして、ステージ向かって右に長髪でシルクハットを被ったギタリストがお目見えし、『Welcome To The Jungle』のリフを少しだけ弾く。そのシルエットが一瞬スラッシュに見えたのだが、もちろんスラッシュであるはずはなく、この人は現在のアクセルの参謀格であるロビン・フィンクだ。ロビンはオーディエンスが沸くと弾くのをやめ、ちょっとしてからまた少しだけ弾き、というじらし作戦に出る(笑)。やがて演奏そのものがスタートし、すると今度はステージ正面にスポットが当たる。そこには、アクセル・ローズが立っていた。
アクセルは黒いロングコートをまとい、ブロンドのロングヘアーを後ろで束ねていて、サングラスをかけていた。体型はやはり太めだが、ハイトーンヴォイスが健在であることにまず驚き、そして感激した。声が続かず途切れ途切れになってしまってはいるが、これは想定の範囲内。そして、ステージ上を右に左にと走り回っては、端に行き着いたときにはそこでしばし歌い上げ、また後方の壇にも上がって、と、最初からアクティブだ。続くは『It's So Easy』で、今度は一転してローヴォイスで歌い上げるアクセル。ドタキャンもなく、大幅に遅延することもなく、ガンズのライヴがほんとうに目の前で始まっているんだと、ここで実感する。
『Mr.Brownstone』を経ての『Live And Let Die』が、最初のクライマックスだ。ご存知映画007の主題歌であり、ポール・マッカートニーのカヴァー曲である。そしてここでは、ポールのライヴでもそうされているように、歌詞が「Live And Let Die 〜♪」のところに差し掛かったときにステージから炎が爆音と共に吹き上がり、オーディエンスの興奮度を一層高めた。アクセルは、ロングコートを脱いでいた。この後はロビンのギターソロコーナーとなり、他のメンバーはステージを後にしてロビンのひとり舞台となる。ロビンも、ここに来てシルクハットを脱いでいた。
そのロビンによる印象的なリフで始まったのが、『Sweet Child Of Mine』。更には『You Could Be Mine』と続き、ガンズが世に送り出してきた曲がアンセムばかりであることを思い知らされる。アクセルはいつのまにかサングラスも取っていて、素顔をオープンに。MCもちょくちょくしていたのだが、日本人女性の通訳をステージに呼び、彼女を介してオーディエンスに一歩下がるよう呼びかけた。アリーナクラスの会場でのオールスタンディングのライヴも今や珍しいことではないはずなのだが、フロアの前方はかなり危険な様子だったらしい。にしても、アクセルが自らこういうことを言ったのには正直驚いた。
更には、ダメ押しのようにボブ・ディランのカヴァーである『Knockin' On Heaven's Door』まで。先ほどの『Live And Let Die』といい、またこの日演奏こそされなかったが、ローリング・ストーンズの『Sympathy For The Devil』のカヴァーもしている。ガンズはそうした偉大なる先人たちの正しき継承者でもあるような気がして、そのガンズが解散の危機を克服し、アクセルがステージに立ってくれていることが、奇跡的であるように思えてきた。確かにアクセルはほとんど1曲毎に袖に引っ込んでいて、次の曲の自分が歌う直前にやっとステージに舞い戻るというありさま。袖に行ったときには酸素吸入器でも吸っているのだろうという想像もするが、そうまでしてもステージに立とうというアクセルの姿勢は、エンターテイナーとしては立派ではないだろうか。