予定より10分ほど過ぎたところで開演を知らせるSEが鳴り響き、やがて客電が落ちる。暗くなっているステージ上にメンバーが陣取りスタンバイしているのがかろうじてわかるが、ライヴの口火は意外なところから切られた。花道はアリーナAブロック内にΩ状に突き出しているのだが、その右側の花道の先にピンスポットが当たり、そこにボノが立っていたのだ!そしてボノは日の丸の旗を大きく振り、ここでアダムのキーボードにより『City Of Blinding Lights』のイントロが流れた。これだけで、もう鳥肌が立ってしまった。
続くは、もっかの新譜『How To Dismantle An Atomic Bomb』の顔的な曲の『Vertigo』。サビはもちろん大合唱となり、この後何度も訪れる、場内が一体となる瞬間の「最初」がやってきた。ステージセットは、先日リリースされたばかりの『U2 18 Singles』の初回盤に同梱されているDVDでも確認できる、ミラノ公演と同じものだ。ステージ後方は巨大な電飾スクリーンに覆われていて、曲に合わせて閃光する。また左右の上部にはモニターがあり、左はジ・エッジとラリー、右はボノとアダムを、それぞれ捉えている。花道はアリーナ方向のほか、左右真横にも突き出していた。
ここまでは割と「最新型」のU2だったが、続くリフには思わずはっとさせられた。デビューアルバム『Boy』からの『I Will Follow』だ。懐かしくもあるが、曲そのものが持つ瑞々しさや美しさは、リリースから26年が経った今でも少しも色褪せることなく、輝きを放っている。更に今度は、対照的にゆったりとした柔らかいリフがしばしジ・エッジによって奏でられ、やがてボノが『I Still Haven't Found What I'm Looking For』を歌い始める。直訳すれば「僕はまだ探しているものを見つけられない」となり、「終わりなき旅」という邦題がつけられているこの曲は、U2自身の生きざまを表現したテーマ曲のようだ。そしてボノは、最後に少しだけだが『In A Little While』のフレーズを歌った。
そして『Beautiful Day』だ。世紀末に放たれた『All That You Can't Leave Behind』の顔的な曲で、抜けのよさがなんとも気持ちよく、U2がこれまでに成し遂げてきた仕事の重みを感じさせるような圧倒的な曲だ。サビに差し掛かったときに、ビートが炸裂しボノがシャウトしそしてライトが一斉に閃光し、これらが見事にシンクロして極上の空間が生み出される。なんという、至福の瞬間なのだろう。そして終盤、ボノは今度は身をかがめながら『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』〜『Blackbird』の一節を早口でシャウトする。更には、「世界初...いや宇宙初だな」というMCの後で、『U2 18 Singles』に収録されている新曲『Window In The Skies』を披露してくれた。
ジ・エッジがアコースティックギターを弾きながら、ゆっくりと向かって左の花道の方に歩き出す。一方でボノが『Walk On』を歌い出す。アウンサン・スー・チー女史に捧げられた曲であり、前回ツアーのオーラスだった曲だ。それが今回はシンプルなアレンジとなり、沸点に達したショウの熱を冷ますかのような役割を果たしている。そして今度は、ジ・エッジと入れ替わるようにボノが花道の方に行き、先端までたどり着いたところで、亡くなった自分の父のことを少しだけ話す。そして始まったのが、『Sometimes You Can't Make It On Your Own』だ。