ステージは、前方向かって右からスチュアート、ドミニク、バリー・バーンズ、ジョン・カミングスの4人が並び立ち、トリプルギターの編成を成している。中央後方は一段高い壇になっていて、そこにドラムのマーティンが陣取っている。ステージはやや暗めで、しかし後方及び側面にはスポットライトが設置されていて、これらが絶妙のタイミングで閃光し、極上の空間を作り上げることに成功している。続くは『Mr.Beast』からの『Friend Of The Night』で、今度はバリーがドラムセット横に陣取ってキーボードを弾き、美しい旋律を奏でている。これも、モグワイが備える魅力のひとつだ。
『Travel Is Dangerous』ではバリーが再びギターを弾き、トリプルギターの轟音に乗せてヴォーカルもこなす。確か『Tracy』のときだったか、自然に同化したかのようなあまりにもアンビエントな音色にオーディエンスが聴き惚れてしまい、演奏の明確な終了を把握することができず、しばし静寂した状態が続いてしまった。スチュアートが「thanks」と言ってくれたことで、ああ終わったんだなとやっと認識できたような感じだった。『I Know You Are But What Am I?』では、バリーのひんやりとした鍵盤の音色とマーティンの淡々としたドラムビートとのコンビネーションが、派手さこそないが感動的だった。モグワイのライヴは何度も観ているのだが、マーティンのドラムがかなり重要なポジションを占めているのではないかと、今回改めて思い知らされた。
そして、中盤にとてつもなく大きなクライマックスがやってきた。スチュアートのギターを軸にし、バリーがヴォコーダーを駆使して加工されたヴォーカルを披露する『Hunted By A Freak』。このときフロアの天井から吊るされていた巨大なミラーボールがゆっくりと回り、妖しい光を放っていた。そして曲間を切らさずにあのイントロが響き渡り、場内はざわつき、そして歓喜の声があちこちから上がった。今年のフジロックでは披露されずじまいだったキラーチューン、『Mogwai Fear Satan』だ。
更に今度は『Glasgow Mega Snake』ときた。新譜『Mr.Beast』はバンドのキャリア集大成的な作品だと思っているのだが、そうした中でこの曲は轟音モグワイの最新形であり、ヘヴィーでありながら印象的なフレーズが聴く側にとってもわかりやすく、純粋に曲そのものとしてモグワイのキャリアにおける重要なナンバーのひとつになっていくのではと思わせる、信頼できる曲だ。演奏はヘヴィーでラウド、そしてステージ後方に聳え立つ、「M」「Y」「T」の字を合体させたかのように見える鉄骨の柱が激しく閃光した(「Mogwai Young Team」の意味だったようだ)。
終盤は、静寂と轟音を組み合わせた『Ithica 27 0 9』、アンビエントな『Cody』などを経て、本編ラストは『2 Rights Make 1 Wrong』。曲の終盤になると、ドラムのマーティンがひと足早くステージから引き上げ、後の4人による演奏が淡々としばし続けられた。そしてアンコールだが、「今年のフジロックを締めくくった曲」である『Helicon 1』で始まり、場内からの反響も『Mogwai Fear Satan』に次ぐ大きさだった。美しい曲という印象があったのだが、かなりラウドなアレンジで演奏されていたように思えた。
そしてオーラスは、『Mr.Beast』の実質的なラストの曲である『We're No Here』だった。重量感に溢れる曲調は、まさにライヴを締めくくるに相応しかった。しかしもっと凄かったのは演奏しているバンド自身で、おのおのが持ちうる技量を最大限にまで発揮し結集したかのようなパフォーマンスに、ただただ圧倒されるだけだった。演奏はいつ終わるとも知れず延々と繰り広げられたが、スチュアートとドミニクがまずステージを後にした。続いてマーティン、バリーがステージから去り、最後に残ったのはこれまで最も地味だったジョンだった。ジョンはしばしステージに座り込んでノイズを発した後に、やがてステージを去った。無人となったステージは、それでもしばらくの間ノイズが鳴り響き、ライトが閃光していた。その状態は、スタッフが出てきて機材のスイッチを切るまでの数分間、延々と続いていた。