Roddy Frame 2006.9.20:Duo Music Exchange

 女性客が大半であろうことは予想できたが、年齢層が高かったのは予想外だった。だけどよく考えてみれば、近年の活動ペースやその作風から、若いファンを獲得しにくくなっているのも致し方ないのかもしれない。ただその代わり、アズテック・カメラ時代から聴き続けている熱心なファンが、この日この場に集まったということになる。





 開演時刻とほぼ同時に客電が落ち、ステージ向かって右の袖の方からロディ・フレイムが登場。今回のライヴはこの人ひとりだけのソロアコースティックスタイルで、よってステージには何の装飾もないばかりか、機材すらもほとんどなく、中央部にマイクスタンドがぽつんと立てられているのみ。よってステージ上にはかなりのスペースができている状態だ。ライヴは『The Sea Is Wide』でスタートした。


 チケットの整理番号が早かった私は、運良く最前列に陣取ることができた。鉄製の柵にかぶりつきでロディを観るのだが、その距離の近いこと近いこと。わずか2メートルくらいの至近距離で、この人がギターを弾きながら歌っているのだ。そしてロディ自身も、歌いながらまるで確認するように、フロアのオーディエンスに視線をやっている。恐らく何人もの人がロディと目が合ったと思うが、私はというと、恥ずかしくて(笑)目をそらすのに必死だった。そのロディだが、黒の革のブーツに黒のジーンズ、そして上半身はブラウンのシャツで、腕をまくっている。新譜のジャケットでは髪が伸びていたが、ここではこざっぱりとしていて、今までとあまり変わらないイメージの風貌になっていた。





 ソロの曲の中にアズテック・カメラ時代の曲を適度に織り交ぜて来るだろうとは思っていたが、早くも3曲目で『Black Lucia』を演ってくれた。10代でデビューしたこの人も、さすがに現在は40を越えていて、当然ながらその風貌には年輪が刻まれている。ではあるが、この人の声そのものが持つ美しさと瑞々しさは、デビュー時からほとんど変わっていないように思えてびっくり。そして、もちろん嬉しい。確かに酒やタバコに溺れそうな人には見えないし、自然体のままマイペースで歩んで来たからこそ、今のような立ち位置を保持していられるのだろう。


 曲に合わせてギターを交換するのだが、今回ほど間近でセミアコースティックギターを見れたことはない。使い込まれているはずなのに、どのギターにも傷は見当たらない。そしてサイドにスイッチみたいなのが4つついていて、弾き終わった際にロディがさりげなくスイッチを切っているのもわかった。多くの曲では指で直に弦を弾いていたが、ピックを使うときは、お尻のポケットからさりげなく出していたのもカッコよかった(今までに観てきたライヴでは、マイクスタンドにピックが何枚も挿されていて、それを取って使う人が大半だったような気がする)。





 ソロアコースティックで狭い会場ということもあり、場内には終始フレンドリーな雰囲気が漂っていた。ロディもリラックスしてやれている様子で、MCも豊富だった。スウェーデンのストックホルムでフェスティバルに出たときに~とか、本来の収録曲よりも、ボーナストラックの曲の方がよく書けたんだ~とか(『Surf』の『Your Smile Has Stopped The Hands Of Time』)、といった具合で、かなり雄弁だった。マーク・ボランやロキシー・ミュージックたちのことを思い浮かべて書いた曲と言って披露された『Rock God』では、ラストでデヴィッド・ボウイの『Space Oddity』のリフを弾いてくれた。


 場内のリアクションは、やはりアズテック・カメラの曲が出たときにすこぶるよくなった。『Stray』や『The Bugle Sounds Again』、そして中盤のクライマックスになったのは、もちろん『The Boy Wonders』だった。ここまでは演奏中はじっくりと聴き入って、終わると拍手という感じだった。しかしこの曲のときは、イントロが始まった瞬間に手拍子が発生。中盤ではお約束のパンパン♪という手拍子にシフト。終盤はもちろん「High!」「Land!」「Hard!」「Rain!」の大合唱となり、すっかり場内が温まった。ロディも満面の笑みを見せていたので、嬉しかったのだと思う。


 どの曲だったか忘れてしまったが、歌っている最中に即興でカーティス・メイフィールドの『People Get Ready』の一節を歌いまた元の歌詞を歌う、といったようなこともあった。そして個人的に最も印象に強く残ったソロの曲は、新譜のタイトル曲でもある『Western Skies』だった。実はロディの足元にはセットリストとミネラルウォーターのほかに、ブルースハープがずっと置かれていたのだが、これを使ったのが唯一この曲のときだけだったのだ。CDにはバンドスタイルで収録されているのだが、ライヴの場でブルースハープを絡めたアレンジで来るとは思わず、意外にして嬉しかった。





 いよいよ終盤になり、アズテック・カメラ時代の曲は更に披露された。ファーストからの『We Could Send Letters』や『Love』からの『How Men Are』、この曲は知ってるかなと言って始まった『Frestonia』からの『Sun』などだ。そして第二のクライマックスとなったのが『Oblivious』のときで、だけどサビに差し掛かる手前で客が「Haaaaa Ahhhhh~♪」とコーラスを入れるところで、ロディが苦笑いしながら遅い遅いとダメ出しし(笑)、やり直しに。もちろん2度目はしっかりキメました。


 そして『Down The Dip』の終盤、ロディはマイクスタンドを離れて延々とギターソロを繰り広げた。真横を向きながらギターをかき鳴らすその姿は、まるでエルヴィス・プレスリーやエディ・コクランといった偉大な先人が乗り移ったかのようだった。ここまでどの曲もほとんど原曲と同じ尺で演奏されていたのだが、中盤までのフレンドリーなノリのロディと違い、まるで何かに取りつかれたかのようにいつ終わるとも知れぬプレイを繰り広げるその姿に、改めてこの人のアーティストとしての凄さを垣間見た。本編ラストは『The Birth Of The True』で締めて、ロディはステージを後にした。


 アンコールを求める拍手はいつにも増して激しく、ロディはあまり間を置かずに登場してくれた。さらりと『Reason For Living』を披露してすぐさま袖の方に戻ってしまったが、観ている側としてはこれで終わるはずはないという思いで拍手を送り、すぐさま2度目のアンコールに。最後に2曲を演奏してくれて、約1時間40分に渡ったライヴは幕を閉じた。しかし客電がつき場内アナウンスが入った後でも、客は更なるアンコールを求めてしばらくの間拍手をやめなかった。





 私が初めてこの人のライヴを観たのは94年の秋で、去年のサマーソニックを経て、今回が3度目となる。これらはいずれも、ロディひとりだけのソロアコースティックスタイルでのライヴだった。これはこれで醍醐味があってとてもよかったのだが、次回は是非バンドとして来日し、リズム隊をバックにしてライヴを演ってはくれないだろうか。前作『Surf』こそソロでレコーディングされているが、新譜『Western Skies』はバンドでレコーディングされているし、決して叶わぬ望みではないと思う。





(2006.9.21.)




















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