序盤は、『No Good Time』や『Bittersweet Bundle Of Misery』など、5枚目の『Happiness In Magazines』からの曲が中心になった。個人的に、この5枚目は会心の出来だと思っている。それまでの作品は、グレアム個人の趣味に走りすぎて実験的だったり、あるいはあまりにも内向的で暗すぎたりしたのだが、5枚目で一転してオープンになったのだ。プロデューサーにステファン・ストリートを起用し、そして精力的にライヴ活動を行うようになったのも、ブラーを脱退し、自分がソロアーティストとしてやって行くんだというこの人の決意表明のようにも思える。
もちろん最新作『Love Travels At Illegal Speeds』からの曲も多く、『I Can't Look At Your Skin』や『What's He Got?』、『Just A State Of Mind』などが披露。前作ではポップな面を前面に打ち出していたが、最新作ではその流れを汲みつつも、幾分パンキッシュでノイジーな要素を加えたように思える。そしてこの場においては、どの曲も原曲よりノイジーに演奏されていた。ノイジーなアレンジであるにもかかわらずポップなテイストが消されずに生かされているのが、この人のバランス感覚のす凄さだと思う。
中盤には、どちらかというとじっくり聴かせるようなメディアム〜スローな曲を固めていたが、最新作の1曲目でもある『Standing On My Own Again』で再び場内の温度が上がったような形になり、いよいよ終盤に差し掛かったような雰囲気が漂う。アルバム未収録の『Right To Pop!』や、この2作の流れを汲みつつノイジーに仕上がっている新曲を披露するなど、相変わらず観る側を飽きさせることがない。そして本編ラストは、『Freakin' Out』〜『People Of The Earth』という、『Happiness In Magazines』からの2連発だった。
そしてアンコールに突入するのだが、まずは最新作の実質的なラストの曲である『See A Better Day』を丹念に歌い演奏。そして、その次が驚いた。なんと、ザ・ジャムの『All Mod Cons』をカヴァーしたのだ。原曲はジャムのパンク期の集大成の顔的な曲であり、シンプルで短い中にも、エッジが効きまくった名曲だ。そして、それを嬉々として演奏する今のグレアムが、あまりにもハマり過ぎていたのだ。
そして、サプライズはそれだけに留まらなかった。最新作からの曲を次々に連射するのだが、これが1曲1曲がクライマックスのような様相を呈し、しかもなかなか終わりそうな雰囲気にならないので、このアンコールいったいいつまで続くんだという、未知の領域に踏み込んで行くかのような緊張感が漂い始めたのだ。よもやのセカンドアルバムからの『That's When I Reach For My Revolver』なんてのも飛び出し、オーラスの『Who The Fuck?』に至るまで、なんと8曲も!他の公演より明らかに曲が多くてびっくりしたのだが、それはこの日が来日最終公演だったからなのかな。
フジロック'04で初めてグレアムのライヴを観れたのも嬉しかったが、今回よりじっくりとライヴを観れたことで、改めて嬉しくなった。元ブラーの、という枕詞は、もうこの人には必要ないと思う。そして、もしもこの人が今後ブラーに復帰することもなく、ソロアーティストとして活動を続けていくのだとしたら、ポール・ウェラーをひとつの手本としたらいいんじゃないか。ステージに立つこの人の姿を観ながら、私はそんなことを思い浮かべていた。それだけに、アンコールでの『All Mod Cons』は衝撃的だったのだ。