The Groovers/Rock 'N' Roll Gypsies 2006.4.16:下北沢Club251

下北沢という街は、こじんまりとした中に劇場やらライヴハウスやらが密集していて、エンターテイメント文化の聖地的なところだ。ではあるが、私が下北でライヴを観るのは実質今回が初めて。そしてClub251は、駅南口から徒歩5分程度のところにあるビルの地下にある。階段を下りて中に入ると、まずその狭さに驚き、ほんとうにココでプロのバンドがライヴするのかなという疑問さえ沸いた。恐らくキャパは500人くらいだ。天井は低く、配管がむき出しになっている。





 今回のイベントは、グルーヴァーズがClub251と組んで行う「ロックン・ロール・ジョイント・ストラグル」の2回目だそう。定刻よりやや遅れて、そのグルーヴァーズの方が先に登場した。このとき私はフロアの後方にいたのだが、ステージとフロアとの段差もあまりないので、見えるのは前にいる人の後頭部ばかり。これではたまらないとばかり、右側の中ほどに移動して、なんとかメンバーの顔だけは見えるポジションを確保した。


 メンバーの立ち位置は、向かって左にギター&ヴォーカルの藤井一彦。右にベース、そして2人の間にドラムという、トリオ編成のバンドにありがちな逆トライアングル配置だ。藤井はサングラスをかけていて、嬉々としてギターをかきならしながら歌い上げる。ベースは半身の格好でリズムをキープしながら時にコーラスも務め、そしてドラムは的確にビートを刻んでいる。MCも藤井で、今日はロックン・ロール・ジプシーズと一緒なんだ!と、まるでロック少年のように小躍りしていた。


 4曲くらい演ったところで藤井はサングラスをはずし、素顔になった。おりも政夫がジェフ・ベックの髪型をしたような(笑)風貌だ。そういや、ベースの人は女子マラソンの小出監督のような雰囲気がある(笑)。ドラムの人はベレー帽をかぶっていて、その表情までは私のところからはよく見えない。アクションが最も目立つのはやはり藤井で、間奏になるとステージの中央に躍り出てハードなリフを発し、曲を終えるときには決まりポーズのように右腕を掲げていた。


 音やスタイルは、ギターを軸にしたストレートなロックン・ロールで、幾分ガレージっぽさもにじみ出ていた(そう聴こえたのはハコのせいかも)。トリオというのは、誰ひとり気の抜けない、それぞれがそれぞれの役割を充分に果たさなければならないタイトな編成だと思うのだが、このグルーヴァーズに関しては、それぞれが職人的におのおのの仕事を実行し、3人ともつかず離れずの絶妙な距離感を保って演奏していると感じた。





 約30分のセットチェンジを経て、まだ客電がついていて、BGMがかかっている中でロックン・ロール・ジプシーズの面々がふらっと登場。慌てて客電とBGMが消えるような形となり、そして演奏がスタートする。まずはインストでひとしきりジャムり、肩慣らしのように4人が4人ともリラックスしながら淡々とそれぞれの楽器をこなしている。


 そして間を空けずに次の曲に入ったのだが、これがなんと『Come On』だった!チャック・ベリーの曲というより、ローリング・ストーンズのデビュー曲と言った方が通りがいいかもしれない。ベリーの原曲はミディアム調のシンプルな曲調、一方のストーンズバージョンはテンポを強調したメリハリのある曲調だが、ここでは疾走感溢れるロックン・ロールなアレンジで、ある意味ベリーもストーンズも超えた輝きを放っている。ルースターズ時代にも演奏しているのを知ってはいたが、まさかここで聴けるとは思わなかった。


 メンバーの立ち位置は、まずステージ中央に花田。結構長身だ。向かって左にギターの下山、右にはベースの市川、そして花田の後方のドラムセットの中に池畑が収まっている。特に大きなアクションがあるわけでもないのに、花田の存在感が凄い。この人の演奏をこんな小さなハコでこんな近くで観れるんだという感激と、この人はもっと大きなところで演るべき人のはずなのにというとまどいと、相反する思いを浮かべながらも、演奏に魅入ってしまった。


 中盤、花田がぶっきらぼうな口調でメンバーを紹介。ベースの市川のところでは、そのサングラスをかけた風貌を指して「西部警察」と言い、ジプシーズにもついに警察が介入しました、と軽いジョークを飛ばしていた。次いで下山がリードヴォーカルを取る曲が2曲あって、このとき花田はコーラスに徹したり、ブルースハープを吹いたりしていた。私の知識不足かもしれないが、ヴォーカルは全て花田が取るものとばかり思っていたので、これには少しびっくりした。


 演奏は、曲間を切らすことがほとんどなく、次から次へと連射される。狭いステージに4人も陣取っていることもあってか、大きなアクションをする人は誰もおらず、4人が4人とも淡々とただ演奏し続けている。ルーズなようでルーズでなく、4人の間に漂う間が絶妙で、これがなんとも言えぬグルーヴ感を生み出しているのだ。正直に言って、グルーヴァーズのときには、あとどのくらい演るのかなあと何度か時計を気にしていたのだが、ジプシーズのライヴにおいては、時間が経つことさえ忘れてしまっていたのだ。ライヴは、アンコールを含め1時間20分くらいに渡った。出てきたときと同じように、ステージを去るときも彼らはぶっきらぼうだった。





 まずグルーヴァーズだが、観るのは今回が初めてだが、藤井一彦だけは頭脳警察のサポートギタリストとして何度か観ていた。つまり私の認識では、藤井は「パンタの信頼を得ている男」であり、その藤井の「本丸」であるグルーヴァーズがどんなバンドなのかを、どこかで一度観てみたかったと思い続けてきた。そしてグルーヴァーズは、その期待を裏切らない、飾らない、むき出しの、一本筋の通ったロックン・ロールを見せてくれた。


 そしてロックン・ロール・ジプシーズだが、ライヴは過去に2002年のフジロックのときに少し観ていて、また2004年のフジロックではルースターズのラストライヴを観た。確かにルースターズは日本のロック史上非常に重要なバンドのひとつだが、今回ジプシーズを間近で観て感じたのは、花田を始めとするメンバーは、決して自らを「伝説」の地に留めておくのではなく、あくまで「現役」として勝負に出ているということだった。その姿勢はとても頼もしく思えるし、また感動的ですらある。3時間半立ちっぱなしでかなり足にはきたが、共に音楽性の似通ったいいバンドを観れたことで、満足度は高い。


(2006.4.18.)




















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