遠藤賢司/Eastern Youth 2006.3.9:NHK505スタジオ

NHK-FMで毎週水曜日夜に放送されている、ライブビートという番組がある。洋邦を問わないさまざまなアーティストのスタジオライヴや、イギリスのBBCライヴの音源などを流している。番組そのものも楽しみに聴いているが、昨年からスタジオ収録にも参加するようになった。このたび約半年ぶりくらいに収録に応募し当選したのだが、今回は往復ハガキ代だけで観られるのが申し訳なるような好メンツだ。





 ステージは、後方にドラムセットがあり、その前にいくつかのアンプが。前方右にもドラムセット、左にピアノ、正面には椅子という配置で、これでどちらが先に出てくるのかがわかってしまった。私はてっきり、キャリア的にイースタン・ユースの方が先だとばかり思い込んでいたのに、予定時間より少し遅れてエンケンこと遠藤賢司がひとりで登場する。


 エンケンは黒にラメ入りのシャツ、そしてジーンズ姿。髪はトレードマークのようにはね上がっている。正面の椅子に座り、ブルースハープを吹き、アコギをかき鳴らしてさっそくライヴがスタート。そのギターは激しくそして鋭く、攻めの姿勢が伝わってくる。私は前の方で観ていたのだが、特にブルースハープの吹きざまに魅せられてしまった。口を左右に移動させ、頬を膨らませたりしぼませたりして激しく吹きまくるそのさまを至近距離で観て、よくギターを弾きながらこうまで凄まじくできるなと、感嘆してしまったのだ。


 ピアノ弾き語りで1曲演奏し、その後で袖の方からひとりふらっと現れた。ベーシストの湯川トーベンだ。調べてみると、名うてのセッションマンであり、一時期は子供ばんどにも在籍しており、もちろんソロも出していて、おまけに今年メジャーデビューしたシンガー湯川潮音の父親でもあるそうだ。湯川が加わり、エンケンもギターをエレクトリックに持ち替えて演奏を開始。2人のコンビネーションもよく、職人芸が如何なく披露される。


 更にもうひとりがステージ右に現れ、ドラムセットに収まった。この人は石塚俊明、もっとはっきり言えば、頭脳警察のパーカッショニストToshiだ。これで3人編成のエンケンバンドとなり、15日にリリースされる新譜『にゃあ!』からの曲を中心に演奏される。私はエンケンに関しては名前くらいしか知らないのだが、それでも事前に少し調べて、石塚がドラマーとして新譜に参加していることを押さえていた。なのでこの収録にも出演してくれることを密かに願っていたのだが、それが実現。エンケンもさることながら、この人のプレイを間近に観ることができて、感謝感激である。





 終盤は凄まじいことになった。演奏の終盤で湯川と石塚がさっと身を引き、ステージはエンケンひとりに。エンケンはしばしギターをノイジーにかき鳴らした後、なんとドラムセットに陣取ってギターを弾きながらスティックを握ってドラムを叩き出したのだ。ギターのノイズが途切れそうになると弦を弾き、爆音が轟くとまたドラムに移行してシンバルやバスドラを響かせる。ラジオの収録というのを忘れてしまうような、視覚的に圧巻のパフォーマンスだ。やがて湯川と石塚が生還し、3人編成に戻ってプレイとなる。


 今度はエンケンがステージを後にし、2人でのプレイに。湯川のベースソロ~石塚のドラムソロとなり、しばらくしてエンケンが生還。エンケンはアンプを倒し、その上に跨ってギターをアンプに近づけ、ハウリングさせまくる。そうしてめちゃめちゃやりまくっていったんは終了するが、エンケンがひとりでアコギを持って再登場。最後は、ことばを噛み締めるように切々と歌い上げた。今年59歳のエンケンだが、老いるどころかますます元気、そしてパワフルでエネルギッシュなライヴをしてくれた。





 約20分のセットチェンジを経て、なぜかBGMが止まり無音状態になった中、ふらっとイースタンユースが登場。先ほどのエンケンのときはステージにはいろいろ機材があって所狭しだったのだが、今度はシンプルでスペースもゆったりのステージになっている。吉野の「今日はラジオの収録でございますが、我々ラジオのためのライヴは致しません。あくまで目の前のお客さんとのやりとりの中で、ライヴをやっていきたいと思います」という、なんともありがたいMCで始まった。


 小柄で細身で、決して体力的に恵まれているとはいえない吉野だが、しかしプレイそのものは異常なまでに激しい。上体をのけぞらせ、つま先立ちになり、そして勢い余ってなんと体が宙に浮いている。そして曲が終わるとふらふらになっていて、アンプにつまづきそうになる。序盤の2曲くらいで汗びっしょりになっていて、黒ぶちのメガネのレンズは曇っている。冒頭のMCにうそがないことが、早くも立証されているのだ。


 ギターにベースにドラムオンリーという、シンプルな編成であることから、3人それぞれが気の抜けないプレイをし、ハードでラウドな音が容赦なく発せられる。吉野は歌っているときのギターはリズム調で、間奏になったところで爆音を唸らせるというスタイル。田森のドラムもパワフルでアグレッシブだ。そしてこのバンドのサウンドの屋台骨を担っているのは、実は二宮のベースのような気がした。


 吉野もしくは二宮が必ず弾いているために、曲間が無音になることはほとんどない。そして吉野は、歌う前に必ずコメントを出す。そのことばは力強く、そしてメッセージ性を帯びていて、それが次に演奏する曲のモチーフにつながっている。披露されているのは、リリースされたばかりの新譜『365歩のマーチ』からが多く、タイトル曲を含めて演奏されていた様子。その新譜においても、このバンドの立ち位置は一貫して変わっていないことが伺えた。トータルとしては、ラウドな音とメッセージ性という、このバンドの2大重要要素が徹底して追求され、熱くそして引き締まったライヴになったと思う。






 エンケンは6年ほど前に初めてライヴを観て、それ以来ずっと対決してみたかったと、イースタンのことを語った。一方吉野は、ハタチ前後のときにテレビでエンケンが片足を前に踏み出して歌っているのを観て、以降まねるようになったとエンケンのことを語った。放送上はこの2組は別々になるのだが、少なくともこの収録においては、お互いがお互いをいい意味で刺激し合った、幸福な対バンになったのだと思う。放送は、イースタンユースが3月22日、エンケンが4月5日とのこと。4月からは番組が10分拡大されて、エンケンは栄えあるその第1回になるそうだ。


 私にとって、今回の収録の目当てはイースタンユースの方だった。フジロックやサマーソニックなどの野外フェスティバルにもバンドは頻繁に出演してくれていて、観るチャンスは何度かあったはずなのだが、これまでタイミングが合わずに観れずじまいだった(ただし、会場敷地内では2度ほどメンバーを見かけたことがある)。今回やっと念願が叶い、しかも狭いスタジオでステージを間近にしての体験だった。がしかし、ほとんど予備知識なしに臨んだエンケンの方が、実はより強く印象に残ってしまった。もっとフォーキーでしっとりとしたスタイルなのかなと勝手に予想していたのだが、実際は1曲目からギターの弦を切る力の入りようで、以降エネルギッシュなプレイを次々に繰り出し、すっかり度肝を抜かれてしまったのだ。


(2006.3.12.)




















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