The Prodigy 2006.2.18:Studio Coast

 スタジオ・コーストに入るのは3度目なのだが、過去2回は2階席は関係者用とされていて、一般客には開放されていなかった。それが今回は、どうしたわけか2階席にも入れるようになっていて、これ幸いとばかりに階段を上がり、ほぼ正面のポジションをゲット。場内は既に薄暗くなっていて、細身でセクシーないでたちの女性による、DJプレイがされていた。彼女はPAセットの後方のDJブースに陣取り、曲をかけながら踊っていたのだが、その様子も2階席からは手に取るようにわかった。





 ほぼ時間通りに客電が落ちた。イントロのSEが響き渡る中、ステージ後方の幕が少しだけ降ろされ、ベスト盤のジャケットにもなっているエンブレムマークが上の方だけ見えてくる。ステージがスモークで覆われる中、最初に登場したのがリアム・ハウレット。続いてサポートのギタリストとドラマーが陣取り、ライヴの牽引役であるキースとマキシムは最後に登場した。


 ライヴは『Break And Enter』でスタートし、続いて早くも、ベスト盤のタイトルにも冠されている『Their Law』が。いずれもセカンド『Music For The Jilted Generation』からだが、古さは感じられず、いずれも鮮度の高い曲に生まれ変わっている印象がある。そして『Wake The Fuck Up』では早速マキシムがステージを降りて、向かって右の段に上がり、そこでしばしシャウト。会場が巨大であろうとなかろうと、彼らのスタンスは変わらない。


 ステージは後方が少し高い壇になっていて、左にドラムセットがあり、真ん中にはプログラミング機材が設営されていて、リアムが忙しく操っている。マキシムとキースは立ち止まることがほとんどなく、終始ステージ上を右に左にと動き回り、シャウトし、ダンスしている。ギタリストも動きが活発で、キースと掛け合うこともしばしばだ。ステージには装飾という装飾はないが、ヴァリライトが角度を変えながら終始閃光していて、観る側の視覚が奪われる。そしてその閃光は、ステージをミステリアスなものに仕立てている。





 『Breathe』で、場内は最初の沸点に達した。フロアは前方のみならず後方も含めた総モッシュ状態と化す。踊っている人たちはさぞかし気持ちいいだろうが、凄まじい光景を上から観ている立場としても圧巻だ。続いては『Hot Ride』や『Spitfire』といった、『Always Outnumbered, Never Outgunned』からのナンバーとなる。更には新曲『Back 2 Skool』も披露され、グレイテストヒッツツアーと銘打たれてはいるが、キャリア集大成というよりは、バンドはまだまだ進化しているんだということを感じさせるライヴになっている。


 マキシムやキースだが、頻繁なコール&レスポンスで場内の熱気を高めオーディエンスを引き付けていくだけでなく、積極的にステージ前方のオーディエンスとタッチを交わしている。ぱっと見が怖そうな人たちなので(笑)、ファンに対してフレンドリーに接してくれるというのがとても意外。ではあるが、もちろん光栄なことだ。一方のリアムだが、この人にスポットが当たることは結局1度もなく、終始機材の中に埋もれていた。まるでロバート・フリップのようだが、目立つところは2人に任せて、自分は音楽面をしっかりやる、ということなのだろう。


 2度目の沸点は『Firestarter』だ。プロディジーの曲はマキシムがヴォーカルを担う曲が多いが、ここはキースの独壇場になる(マキシムは袖の奥に下がっていた)。決して大柄ではないキースだが、ここでの存在感はまるで鬼神のようで、群を抜いていた。更には『No Good』から『Voodoo People』となり、ここでは再びマキシムが仁王立ちしてシャウトを繰り返し、興奮度が高いままに本編が終了する。テンションが一段高くなるのは『The Fat Of The Land』からの曲で、これは今までもそうだったのだが、今回はライヴの骨格を形成しているセカンドからの曲が、より重要な役割を果たしているように思える。





 アンコールは、イントロを経て『Poison』となり、マキシムがフロアにマイクを差し出してオーディエンスに合唱を促す。この間キースはまだ袖の奥にいたのだが、やがてステージに姿を見せると、またまた必殺の『Smack My Bitch Up』だ。そしてこのとき、マキシムは素早くステージを降りると非常口の方に消えた。しばらくはキース・オン・ステージ状態が続いたのだが、ふと気がつくと、マキシムがいつのまにかPAブースのすぐ横に詰めている。同行しているスタッフのペンライトによる合図で周囲がマキシムの存在に気づき、あっという間にもみくちゃ状態になった。何かやらかすと思ってはいたが、ここまでやるとは。そしてオーラスは『Out Of Space』で、最後、キースはひと足早くステージを後にし、リアムとマキシムがオーディエンスに応える形でライヴは終了した。





 今回のポイントは、なんと言ってもライヴハウスというキャパシティだ。メガバンドになってからのプロディジーは、ここ日本ではフェスにしろ単独にしろ、巨大会場でライヴをすることがほとんどだった。それが今回は2000人規模のライヴハウスでの公演で、ただでさえ密度が濃い状況なのに、彼らのライヴは更にダメを押したのだ。


 この日会場の2階席が開放されたのは、その分までチケットを売ってしまって、とてもじゃないが1階フロアだけには収まらなくなってしまったからだと想定する。2階の座席はもちろん満席だったし、そればかりか通路や階段にまで人が溢れてしまっていて、とにかくすごい状態だった。このキャパシティでプロディジーのライヴを観れてほんとうによかったなあという思いと、やはり彼らにはこのキャパシティはあまりにも狭すぎるんだという思いとが交錯した。





(2006.2.19)














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