ジェフは相変わらず茶目っ気たっぷりで、ギターをライフルのように抱えてベーシストを指す。そしてベースのリフで、『You Never Know』が始まるという具合。こうした出だしに2日の公演では違和感を覚えたのだが、この日はナチュラルに流れているように思えた。公演を重ねるに連れて徐々に固さがなくなり、バンドのコンビネーションもより密になり、と、全てがいい方向に向かっているのではないだろうか。
代表曲のひとつ『Cause We Have Ended As Lovers/哀しみの恋人達』では、相変わらずジェフの妙技が冴え渡り、邦題通り哀愁が漂っている。私は2日は1階の真ん中辺りで観ていたのだが、この日は10列ほど前になり、そしてより中央寄りになって、ジェフの一挙手一投足がより明確に見て取れた。それでわかったことだが、この人はピックを使っておらず、指で弦を弾いている。時折チョーキングをしたり、アームを使ったりしていて、そのさまは水を得た魚のように自由だ。
ここでジミー・ホールが登場し、『Rollin' And Tumblin'』『Morning Dew』と2曲をヴォーカル入りで。サングラス姿のジミーは如何にも陽気な欧米人といった感じで、ちょこちょことステージ上を歩きながらシャウトする。そんなジミーを横目で見ながら、楽しそうにギターを弾くジェフ。ジミーはジミーであって、ロッド・スチュアートでもボビー・テンチ(第二期JBGの黒人ヴォーカリスト)でもないのだから、どうせなら『Flash』からの曲を歌わせればいいのにと、2日のときは思った。それがこの日は違和感がなく、バンドにフィットしているように思えるから不思議だ。
さりげなさの中に深みを感じさせる『Behind The Veil』。実は名曲『Two Rivers』。重量感たっぷりの『Big Block』。いずれも89年作の『Guitar Shop』からだ。ジェフは89年にも来日しているのだが、私はこのとき東京に住んでいながら観に行かなかった。それ以前は田舎に住んでいたので観られなくても仕方がなかったが、このときは観に行こうと思えば行けたはずなのに、なぜそれをしなかったのかと、今更ながらに悔やまれてならない(私にとって、まだコンサートに行くことが習慣づく前だったのだが)。そんな後悔はもうすまいと、99年以降の来日は積極的に足を運んでいる。
今やお馴染み『Star Cycle』はやっぱり場内を沸かせ、そして『Blow By Blow』からの『Scatterbrain』。2日のときはアレンジを大胆に変えていたような気がしたのだが、この日改めてじっくり聴いてみるとそれほどでもなく、スリリングな音色はそのままだった。ただ、ジェフのライヴはいい意味で荒っぽくなることが多く、アルバムに収録されている原曲そのままを求めると、肩透かしを食うことになる。
『Good Bye Pork Pie Hat』はフルではなくワンコーラス程度に留まり、そして『Brush With The Blues』へ。99年の復活作『Who Else!』収録だが、この作品はテクノロジーを意識した作風になっていて、その中でブルースのこの曲はともすれば浮いてしまいがちだ。しかしそれが作品中でもライヴにおいてもそうはならず、かえってアクセントになってメリハリが効いた格好になっているのは、ジェフのブルースへの揺るぎない憧憬の念の表れなのだろう。
さてアンコール。『People Get Ready』はジェフとロッド・スチュアートが第一期ジェフ・ベック・グループ以来に組んでレコーディングした曲だが(この曲のPVがすごくいい)、ジミー・ホールの歌い出しは一瞬だがロッドに似ているような気がした。前後してジェフからメンバーの紹介があり、みんなそれぞれ挨拶する。いよいよ大詰めだ。
他のメンバーはステージを後にし、ジェフとキーボードの人だけがステージに残った。そしてラストは『Somewhere Over The Rainbow』で、ジェフのギターが美しい音色を発し、キーボードの優しい音と相俟って、長いようであっという間だった、ライヴを締めくくった。2日の公演と比べると、『Going Down』が削られた具合になったが、幕引きとしては、むしろこの方がナチュラルなような気がした。