Canada Wet 2005.5.14:Liquid Room Ebisu

2月に来日公演を行ったばかりのデス・フロム・アバヴ・1979が、5月に早くも再来日するという情報を知った。調べてみると、これが単独公演ではなく、複数のアーティストが集うイベント形式のライヴであることが判明。でもって、他の出演バンドもいろいろ調べていくうちに興味が沸いてきて、結局行くことにした。


 前売りチケットは売り切れにはならなかった様子で、開場してからもフロア内は結構すかすかな状態。こりゃガラガラな中でのイベントになるのかななんて危惧してしまったのだが、開演時間になると、フロア内はほぼ満員に。外人客も結構目に付いた。





Metric

 このイベントは大阪でも行われたのだが、メトリックは東京のみの出演。ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルの4人組で、音はエレクトロ・ポップといった感じ。ヴォーカルは女性で、キーボードを弾くさまがやたらワイルドだったり、スカートを履いてるのに足を上げて踊ったりしていて、押さえ気味のカレン・O嬢(ヤー・ヤー・ヤーズ)みたいだった。演奏は、序盤は曲毎に細切れになっていたが、中盤以降は曲の切れ目を感じさせない、緊張感が増した精度の高いパフォーマンスになった。



The Stars

 ギター×2、ベース、ドラム、キーボード、ヴォーカルの6人編成。ギタリストのひとりは女性で、ヴォーカルも担当している(つまりツインヴォーカルになっていた)。音はポップでメロウで親しみやすい。男性ヴォーカルがかなり張り切っていて、ピアニカやトランペットを吹いたり、途中ステージを降りて前の方の客に近寄ったりと、いろいろやっていたのだが、肝心のこの人の声がよく聴こえなかった。喉の調子が今ひとつだったのか、マイクの音量が低かったためなのか、とにかく残念。それとも、元々こうなのか?



The Dears

 ギター、ベース、ドラム、キーボード×2(2人とも女性で、まるでモデルのような容姿だった)、ヴォーカルの6人編成。ヴォーカルは黒人であり、その声には奥深さを備えた独特の魅力がある。ネットで試聴したことがあって、そのときは音や雰囲気がもろにスミスに似ていたのだが、ライヴではそれほどスミス寄りというわけでもなく、よりストレートでダイナミックなロックを発している。このヴォーカリストも、曲によってピアニカを吹いたりギター、アコギを弾いたりと、変幻自在の活躍をしていた。



Death From Above 1979

 ドラムにベースという変則ユニット構成で、ヴォーカルはドラマーの方だった。上半身裸で激しくスティックを振りかざして爆音を発し、一方のベーシストの方も上体を大きく揺さぶりながら弾きまくっている。ベースをシンセにつないでいるのか、まるで象の泣き声のような独特の重低音がブイブイと発せられている。音はハードコアで、たった2人で演奏しているにもかかわらず音の物足りなさはなく、それどころか凄まじいまでの爆音で、観る者を圧倒している。2人の相性のよさ、コンビネーションが絶妙であることの現れであろう。場内も、これまでのバンドのときとは明らかに様相が異なり、フロア前方の客はモッシュにダイヴと大暴れだった。



Broken Social Scene

 どこまでが正式メンバーで、どこからがサポートなのかが、全くわからない。とにかく、狭いステージは大人数で埋め尽くされた。ギターは最大で4人にまで増殖し、ベースも2人。トランペットやトロンボーンといった4人の管楽器隊が現れたかと思えば、メトリックやスターズの女性ヴォーカリストも入れ替わり立ち替わりで出てきて、一緒に歌うという具合。たたずまいは、ポリフォニック・スプリーがスピリチュアライズド的にフレーミング・リップスを演った、とでも言えばいいだろうか(わかるかなこんな例えで)。しかしピースフルでハートウォーミングな雰囲気が漂い、まさにトリに相応しいパフォーマンスだった。








 音楽的にはDFA1979だけが異質な感はあったが、5バンド全てに共通していることが1つあった。それは、バンドとしてのあり方が「不定形」であることだ。既成のスタイルにとらわれることなく、より自由で多彩な音楽性を追求するという姿勢がにじみ出ていて、カナダやるなと唸らされる。今回はライヴハウスでのイベントとなったが、こうしたバンドたちこそフジロックのような舞台に出てきて、より多くのロックファンの前で演奏すべきだと思う。DFA1979はレッドマーキー、BSSはオレンジコートかフィールド・オブ・ヘヴン辺りが、似合うんじゃないかな。




(2005.517)

















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