Boom Boom Satellites 2005.4.29:Shibuya-AX

3月末に新譜『Full Of Elevating Pleasures』をリリースし、それにリンクする形でツアーをスタートさせたブン・ブン・サテライツ。5月に追加公演を残してはいるものの、この日の公演がツアーのファイナルに当たるようだ。しかもCSで生中継されるとのことで、こうした要素が重なれば、バンドの気合いの入れようも違ってくるはずだ。





 定刻より10分ほど遅れて客電が落ち、場内からは歓声が沸く。ステージ向かって左の袖の方からメンバー3人が登場し、それぞれ持ち場についてスタート。オープニングは新譜の冒頭の曲でもある『Rise And Fall』で、激しいドラムのイントロから始まり、中野雅之が小刻みに体を揺らしながら機材を操って電子音を発し、そして川島道行のギターとエコーがかったヴォーカルが響き、いきなり場内は沸点に達する。


 ステージは、まず前面は両サイドと上の方が銀の幕で覆われている(曲により、上の幕には映像が映し出された)。また奥の方にも同じように銀の幕が張られていて、前方のこじんまりとしたスペースに機材が並べられている。まるで洞窟の中にセッティングしたかのように、かなり密閉感のある状態だ。向かって右に川島、左に中野、中央後方にサポートのドラマーという配置。3人とも、飾らないラフな格好だ。





 ライヴは、新譜からの曲が中心となって進む。新譜『Full Of Elevating Pleasures』は、もちろんこれまでの彼らの手法がふんだんに盛り込まれてはいるが、彼らのキャリア中最もロックミュージック的な仕上がりになっていて、それは私からすれば取っ付きやすいのだが、同時に少しだけ違和感も感じる。しかしこの違和感こそが、彼らが成長し進化していることの証なのだろう。


 私がこの日の公演に行く決め手になったのは、2月のソニックマニアのライヴだった。そのときは川島のギターが軸になった、非常にエモーショナルなステージだったという感触を得ていたのだが、今回はそのときとは様子が違う。中野がベースだったりプログラミングだったりというのは従来通りだと思うが、曲により川島がギターを手離しヴォーカルに専念したのは、かなり意外だった。


 これまでのブン・ブン・サテライツの作品やライヴというのは、爆音で圧倒し蹴散らす中にも、どこかにひんやりとした感覚を残していたような気がしているのだが、今回のライヴからはそうした「冷たさ」は感じられない。ひたすらエモーショナルで、ダンサブルで、そしてかなり解放感に溢れたライヴになっている。テクノミュージックからスタートした彼らが、ロックのフィールドにも足を伸ばすようになり、そうしたジャンルの壁すら取っ払ってしまったかのように、自由にやっているように見える。


 ソニックマニアのライヴと共通している点もあって、それは彼らのテンションの高さや気合いの入りようが、最早尋常ではなくなってきていることだ。自由で解放的な中にも、どこか鬼気迫る雰囲気があって、それが観る方をぐいぐいと引き込むのだ。パフォーマンスは肉体性にも溢れていて、中野はカニ歩きのように(笑)横に足を滑らせながら前方ににじり寄り、一方の川島も、間奏になると前方に躍り出て、上体を激しく揺さぶりながらギターを弾く。こうした動きと電子音とがうまく融合し、極上の空間を作り上げている。





 映画『Appleseed』に提供された『Dive For You』や、CMに使われている『Moment I Count』では、場内の熱狂度は更に一段高くなった。テクノミュージックには、聴く側にとってどの曲も同じに聴こえてしまいやすいという罠があって、多くのバンドやDJはこの宿命を背負わされているのだが、彼らは今回こうした「決め」になる曲を生み出すことで、そこから一歩外に踏み出している。それはよりメジャーになるということにもつながり、彼らの音楽性がより多くの人に認知されるきっかけにもなると思う。


 壮絶なライヴは、未来的で異世界のような空気を漂わせつつ、本編を終了。アンコールは、リフが印象的な『Dress Like An Angel』でスタートする。この曲も、バンドにとっての「決め」になる曲のひとつに違いない。そしてまたまた、異空間に連れ去られるかのような幻惑的なステージが繰り広げられる。ステージ後方に設置されたライトがビートにシンクロして閃光し、音だけでなく視覚的にも圧倒されてしまう。


 そんなこんなで、ライヴは計1時間40分ほどに渡って行われた。プログラミングの中にさまざまな音を含ませているとはいえ、たったの3人でよくぞこれだけの世界観を構築できたものだ。そして、ここまで全くMCはなかったのだが、最後に川島は「ありがとう」と言い、そして3人揃ってぺこぺことおじぎをする。ついさっきまで凄まじいライヴをやっていたとは思えない、フレンドリーなたたずまいだ。





 彼らはフェスティバルの常連でもあって、昨年の夏はサマーソニック、冬はソニックマニアに出演。そして今年の夏は、フジ・ロック・フェスティバルに出演することが既に決まっている。こうしたロックフェスだけでなく、彼らであればエレクトラグライドやワイヤーといった、テクノ系のフェスに出てもオーデイエンスを魅了できるのではないだろうか。そして海外のフェスに進出したとしても、充分に通用しそうな気がする。




(2005.5.2.)



















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