続くは、早くも必殺ナンバーの1曲である『All I Really Want』。先ほどは自らもギターを弾いていたが、この曲ではまずはステージに背を向けてブルースハープを吹き、歌が始まるところで前を向く。そして、ステージを向かって逆V字型に歩きながら歌い、客席に近くなるたびその周辺は蜂の巣を突っついたような騒ぎになる。ステージには派手な装飾はなく、バックには断片化された新譜のジャケットが彩られ、後はメンバーや機材を取り囲むようにスポットライトの柱が立てられている。
燦然と輝くファースト『Jagged Little Pill』からは、『Not The Doctor』『Head Over Feet』を。一方新譜からは『Knees Of My Bees』『Spineless』といった辺り。個人的に特に嬉しかったのは、セカンド『Supposed Former Infatuation Junkie』からの曲が意外と演奏されたことだ。70分オーバーの大作であり、サウンドはファーストよりも複雑化しているが、しかしポップセンスは失われてはおらず、もっと評価されていい作品だ。スローテンポでじっくりと歌い上げられる『Are You Still Mad』、力強い『Baba』、5年前にNHK-BS10周年のテーマ曲にも起用されていたことで、特に日本のファンにとっては思い出深い『So Pure』などが、次々に飛び出して来る。
珍しくイントロのキーボードが長く弾かれ、やがてこれも必殺の曲である『Uninvited』に。先ほどの「動」とは対照的な、「静」の空間が漂う。続いてはノイジーなリフで始まる『21 Things I Want In A Lover』を経て、客にマイクを向けて歌わせる『Ironic』で本編を締める。彼女はステージにマイクを置き、走ってステージを後にした。
アンコールは2回。まずは自らギターを弾いての『Everything』で、優しい曲調は『So-Called Chaos』の中では比較的ポップに聴こえてくる。続く『Hand In My Pocket』では、またまたブルースハープが冴え渡り、そして彼女の熱唱が場内を彩った。2度目、そしてラストとなったのは、イントロの音色が印象的かつ象徴的な『Thank U』だ。神秘性を帯びたイントロ、そして最大限にまで発揮される彼女の声。衝撃的なPVもあったが、この曲は彼女の精神世界を反映しているような気がして、聴けて嬉しいというよりは、少しどきっとさせられてしまう。