Neil Young & Crazy Horse 2003.11.15:日本武道館

東京公演が武道館だと知ったとき、少し不安になった。単独来日としては実に14年ぶりだという待望感はあるが、果たして集客できるのだろうか。国際フォーラムにして、回数を少し増やした方がよかったのではないか。・・・と思ったのだ。しかしフタを開けてみれば、この日は土曜日ということもあってか、会場はほぼ満席だった。





予定時間の5時過ぎに、「まもなく開演します」という場内アナウンスが入る。BGMが1曲終わる毎に場内からは拍手と歓声が沸くのだが、こんな状態が10分以上続く。もったいつけてるのか(笑)。そしてやっと客電が落ち、ニール・ヤングとクレイジーホースの3人が登場。ニールはキャップをかぶり、ダンガリーシャツにジーンズというラフないでたちだ。


さて、今回のツアーは二部構成となっており、第一部は新譜『Greendale』全曲を、曲順もそのままに演奏するというもの。その内容は、架空の町グリーンデイルを舞台とする、グリーン一家の物語だ。ステージには物語の舞台となるセットが用意され、そして作品で描かれるグリーン家の人々を始めとする、多数の演者たちが登場。ライヴ演奏と演劇のコラボレートという、非常に珍しいスタイルになっている。そしておのおのの曲は、みな10分前後という長尺だ。





1.『Falling From Above』

ステージ後方右にグリーン家があり、おじいさんがロッキンチェアーに揺られていて、いとこのジェドとことばを交わしている。孫娘のサンや、その母親(ニール夫人が演じている)も登場。やがて新聞少年がステージ左の袖から走ってきて、グリーン家に新聞を投げ込む(客席の方にも投げていた)。ジェドが立ち上がってハーモニカを吹くのだが、これは口パクで、実際はニールが吹いている。ニールのマイクは3本あって、1本がメイン、1本はハーモニカが固定。あと1本は、後半でその効力を発揮する。



2.『Double E』

ダブルEはグリーン家が住む地名(屋号のようなものかな?)らしく、かつてはダブルLと呼ばれていたのをグリーン家が変えてしまって、付近の住民が怒って抗議に来る。が、それをあしらうおじいさん。サンはハイスクールへと出かけ、それを見送る家族の人々。後半ではニール夫人を含む4人の女性たちが、バックコーラスとして参加(作品には「ザ・マウンテイナーズ」とクレジットされている)。またニールは、曲が終わる毎に解説。もちろん英語だが、その内容はアルバムにも掲載されていた物語のフォローや、制作時のエピソードだろうか。



3.『Devil's Sidewalk』

ステージ後方は高い段になっていて、バックがスクリーンになっている。おじいさんの兄弟で船長をしているジョン・グリーンが、2人の部下に忠告。グリーンデイルには足を踏み入れるな、と言っていたようだ。場面は変わり、ハイスクールでチアリーダーをしているサンが、その高い段で踊る。スクリーンはステージの外側にも2つあって、ココでは時折中央のスクリーンとは異なる映像が流れていた。



4.『Leave The Driving』

ハイウェイでスピード違反でジェドは警官に止められるが、執拗な尋問に嫌気がさしたのか、ピストルで警官を射殺してしまう。ステージ左側にある刑務所の檻の中に、ジェドは収監。『Falling From Above』のときから、赤いスーツを着た「悪魔」が時たま場内をちょろちょろしていたのだが、この悪魔とジェドは同じ人が演じていて、元パール・ジャム、現ニールのツアーマネージャーだそうだ。



5.『Carmichael』

テレビか新聞かはたまた口コミか、ジェドが起こした事件は人々の知るところとなり、もちろんグリーン家の人々も。一方警官たちは、射殺されてしまった同僚を追悼。曲のタイトル「カー・マイケル」は、その亡くなった警官の名前だ。演じている者たちとバンドとは、直接的にからむことはない。サウンドこそラウドだが、演奏自体は淡々と続けている。ビリー・タルボットはステージに背を向け、フランク"ポンチョ"サンペドロは、ギターではなくキーボードを弾いていた。



6.『Bandit』

この曲のときだけ演劇はなし。ステージはニールひとりとなり、そのニールはステージ右端で椅子に腰掛け、スポットを浴びながらアコースティックギター一本で切々と歌う。曲はおじいさんの息子であり、サンの父親でもあるアールのことを歌ったもの。しかし歌詞には「ボブ・ディランが~」というフレーズがあって、このときに場内は沸いた。なおこの曲は、ライヴ全体を通して唯一のアコースティックだ。



7.『Grandpa's Interview』

演奏は、再びエレクトリックに。演劇も復活し、ジェドの起こした悲劇に混乱する家族の人たち。サンはジェドに会いに、刑務所に行く。一方テレビ局の報道陣がグリーン家に取材に押し寄せるが、それを疎ましく思ったおじいさんは、ライフルをふりかざして追い払おうとする。しかし発作が起こったのか、おじいさんは倒れてしまい、そして帰らぬ人に。その最後のさままでもが、テレビで中継されてしまう。



8.『Bringin' Down Dinner』

おばあさんはディナーを持ってきたのだが、家の前はテレビ局のクルマが多くて、何の騒ぎかととまどう。やがてサンとの対話があり、おじいさんが亡くなったことを知る。そしておじいさんの通夜が。ニールはギターではなく、ステージ右側に用意されたオルガンを弾きながら、切々と歌う。長尺の曲が多い中、この曲だけが4分程度だったと思う。



9.『Sun Green』

おじいさんの死を機に、家を出るサン。迷彩柄の服をまとい、そして社会やメディアに対する反発、反抗の声明を。その後クラブのようなところへ行き、若者にまぎれて踊るサン。この中でひとりの男と出会い、行動を共に。曲は俄然ロック度を増し、そしてサンのセリフになっているところで、ニールが「第3の」マイクを使ってスピーカーを通した音声を発する。マイクスタンドにはスピーカーが取り付けてあって、左右に稼動。またクラブのシーンで踊っている若者たちは、日本人のダンサーだった。



10.『Be The Rain』

新聞少年も、警官も、船長も、日本人ダンサーも、演じていた者たちが次々にステージ前方に出てきて、バンドを取り囲むようにして踊る。キャスティングによれば、ニールの4人の子供たちもこの中にいたようだ。そしてサンのアジテーションはなおも続く。マウンテイナーズも加わり、オールスターキャストが揃った中、演奏を続けるニールとクレイジーホース。曲そして演奏は、更にロック度を増して行く。こうした大団円の雰囲気の中、檻の中にいるジェドは、終始中指を突き立てていた。








この作品に秘められたものを理解しようしようと思いつつ臨んだはいいが、結局のところ、よくわからないというのが本音だ。ツインピークスのような不思議な世界観があり、単にある町の家族に起こった悲劇という表面的な物語だけでなく、裏にはもっと大きな意味が込められているような気がする。


ラストの『Be The Rain』では、「地球を救う」とか「平和が必要」とか、急に話が大きくなる。ただ、物語の主人公と言っていいサン(Sun)はすなわち太陽で、サンには生後すぐ亡くなった双子の娘がいることになっており、その子の名はルナ(Luna)すなわち月だ。太陽と月、すなわち光と影というこの対照的な2つの名は、何かを象徴しまた暗示しているのかもしれない。
















to be continued...





Neil Youngページへ


Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.