ピンク・レディー 2003.9.23:よこすか芸術劇場

予想していた以上に客の年齢層は高く、そして幅広かった。最も多かったのは30代から40代の女性で、そのお子さんというのはまだわかるが、60代以上と思しきお爺さんやお婆さんの姿も、決して少なくなかったからだ。ピンク・レディーが持つ影響力は、大袈裟かもしれないが、日本に限ってはビートルズにも劣らないかもしれない。





 予定より5分ほど経ったところでブザーが鳴り、客電がゆっくりと落ちてステージの幕が上がる。ステージは後方にひな壇があって、両サイドと真ん中に階段があるという具合。バンドメンバーは、その階段の間のスペースに陣取っていた。ひな壇の真ん中にはスクリーンがあり、佐藤栄作の葬儀、具志堅用高の世界戦といった、70'sの世相の映像が流れる。その時代とは、すなわちピンク・レディーが活動していた時期だ。


 映像がひと通り済んだところで、スクリーンの両脇にスポットが当たる。向かって左にミー、右にケイで、今年リリースされた新曲『テレビが来た日』でライヴがスタートする。2人とも椅子に腰掛けたままで、なんだかのんびりとした出だしだ。歌い終えると2人は立ち上がり、階段をゆっくりと降りてステージ前方に歩み寄る。


 私の席は、前6列目の中央部というなんとも恵まれたポジション。今までは「ブラウン管の中の人」だった2人が、この日はわずか数メートル前にいる。底の厚いブーツを履いているとはいえ、2人とも結構背が高い。そして、失礼かもしれないががっちりとした体格だ。2人は黒ラメのロングコートをまとっていたのだが、ここで脱ぎ捨てるとひらひらのついたシルバーの衣装に。曲は『ウォンテッド』で、ピンク・レディーのもうひとつの見せどころである「フリ」も健在。客もここで立ち上がって、女性を中心に歌いながら踊る。


 モールス信号の音がイントロの『S・O・S』に続き、リクエストコーナーになる。スクリーンには5~6曲の曲名が並び、これらはシングルのカップリング曲とのこと。客の拍手の具合で1曲がセレクトされ、『ペッパー警部』のカップリングだった『乾杯お嬢さん』が歌われた。恐らくはココが日替わりで、ツアー初日はモーニング娘。のメドレーだったらしい。





 『透明人間』では、なんと2人はひな壇のスクリーンに消え、スクリーンに2人が歌う映像が流される。声はすれども姿は見えず・・・。こんなのあり?と思ったら、小学生くらいの女の子8人がスクリーンの裏から出てきて、前に出て踊る。ははーん、こりゃ衣装替えに入ったな。続いては男2女4のダンサーが登場し、フラメンコを踊る。やがて、2人も赤と黒のフラメンコのダンサー風の衣装でひな壇に登場し、ゆっくりと階段を降りてくる。曲は当然『カルメン'77』で、2人の踊りが鮮やかな衣装によって一層映える。


 と、またまた2人は袖の方へ消え、ダンサー及びバンドの見せ場となる。バンドはギター、ベース、ドラム、キーボード×2、女性コーラス×2、そしてサックス/フルートという編成だ。ライヴ前、もしかしてバンドなしのカラオケで、ステージも殺風景かなあなんてことも思っていたのだが、セットにバンドにと、コチラの方も結構凝っている。曲はスタイリスティックスの『愛がすべて』のイントロや、KC&ザ・サンシャインバンドの『That's The Way』といった、70'sソウル~ディスコのメドレーだった。





 またまた衣装替えした2人が再登場し、今度は黒いひらひらした衣装。英語詩の曲を2~3曲歌ったのだが、どうやらアメリカ進出時の曲のようだ。そうそう、ここまで敢えて書かなかったが、MCの多いこと多いこと。特に序盤は1曲毎に10分近くという感じで、噂に聞いてはいたがしゃべるしゃべる(笑)。パターンは、ケイがボケてミーがツッこむというのが大半。前の方の客はイジるし、自分たちの結婚やスクリーンに映った昔の写真もネタにするし、グッズの宣伝もそれとなくする。コンビ名の話もあって、実は「白い風船」にほとんど決まりかけていたのだそうだ(トリビアの泉に出そうかとか言ってたけど)。


 ピンク・レディーは、81年3月31日の後楽園球場の公演を以って解散。以降2人は歌のみならず舞台や俳優といった活動をしつつ、不定期にピンク・レディー再結成もしていた。しかし今回の再結成は短期ではなく、2年間に渡る大規模なツアーを行う。全国津々浦々を回り、この日もなんと午後2時半と6時半の1日2回!私が観ているのは2時半の回だが、歌の合間を長いMCでつなぐとはいえ、日に2回もこなすというのにはなんとも恐れ入る。グッズに使われている2人の目や、ひな壇にある目を模したセット。つまりこれらの目(EYES)は、2人から会場に集まったお客さんに対する「合図」なのだそうだ。





 終盤戦とばかり、黒の衣装を脱ぎ捨てた2人。なんとスパンコールにセパレートで、これまでで最も露出度の高い衣装だ。『渚のシンドバッド』から『サウスポー』という鉄壁の布陣に、そしてデビュー曲の『ペッパー警部』。個人的には、ナマで『サウスポー』を聴けたのが嬉しかった。この曲のときはステージがヴァリライトで照らされ、その中で2人がピッチャーのモーションのような踊りをするのだが、これぞ私が記憶する、20年以上前のブラウン管の中の世界の象徴的なシーンだったからだ。


 本編は『ピンク・タイフーン』で締め、アンコールでまたまた衣装替え。白いドレスで(しかし2人のデザインは微妙に異なる)先ほどまでの騒ぎとは打って変わり、大人の雰囲気が漂う。曲はラストシングルの『OH!』と、『星から来た二人』の2曲。ラストは、歌詞にリンクするように2人で真ん中の階段を上って行く(星に帰って行くというイメージ)。そして幕が下り、約2時間に渡るライヴが終了した。





 やたら多くそして長かったMCには、こりゃコンサートというより歌謡ショーだよな、と私は少々引き気味だった。何かと歳を強調し、リポビタンDを飲んだり酸素吸入器を吸ったりというのも、オバサンというキャラクターを無理して演じているように見えて、ちょっとやり過ぎなんじゃないかなという気がした。


 2人は20年前のあの頃に戻りましょうと言ったけど、私は少し別の感じ方をしている。20年前に戻るというより、20年が経った今のピンク・レディーに何ができるか。そして、この日足を運んだ自分に何ができるのか。ピンク・レディーの歌や踊りには当時物凄い勢いがあったけど、この日の2人を観てもやっぱり凄かった。そして私だが、夢は幼い頃に頭に描くだけではなく、今もしくはこれから実現するためのものだと思っている。




(2003.9.23.)



















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