開演予定を10分ほど過ぎたところで客電が落ちた。壮大なシンフォニーのイントロがそのまま『Only When I Sleep』のイントロへと引き継がれ、ステージを覆っていた幕が落ちる。メンバーが姿を見せた。ステージは意外やシンプルで凝ったセットはなく、いくつかのスポットが当てられているのみ。『Only When 〜』はセカンド『Talk On Corners』の冒頭の曲でもあるのだが、どうやらライヴのトップに配されることが多い様子だ。航海の出発を思わせるようななつかしくもどこか哀感漂うメロディで、バンドの立ち位置を確認するための曲のようにも思える。
続いては『Give Me A Reason』。フロント中央がvoの3女アンドレア、向かって右が長男ジム、左は長女シャロン。後列は中央にdsの次女キャロライン、両サイドにはサポートのgとbという配置。後列は一段高いセットになっていて、客席からは6人全員の姿がよく見える。3姉妹は黒を基調にした衣装で、3人とも髪を後ろに束ねている。フロントのアンドレアは高いキーの声も透き通っていて、聴いていて気持ちがいい。シャロンはサビではコーラスを、間奏ではバイオリンの音色を映えさせる。そしてキャロラインだが、これが男性顔負けのパワフルで存在感溢れるドラミング。実はここまでCDを聴いたり映像を見たりしていた中、次女キャロラインの位置付けを掴めずにいた。しかしその疑問は、2曲目にして早くも解消されたのだ。
曲は3枚のアルバムからほぼ均等に選ばれている。アルバムに関しては、枚数を重ねるに連れてケルト色は薄くなってきているように思うのだが、目の前のライヴでは随所にケルト色が見え隠れする。インストの『Joy Of Life』ではシャロンのバイオリンとアンドレアのティン・ホイッスルの音色が映える。アンドレアはくねくねと踊りながらステージを右に左にと動き回り、可愛いというより健気に見える。
しかし、正直コアーズがここまで精度の高いライヴバンドだとは思わなかった。3姉妹のルックスや、ハーモニーの美しさだけではない。各々がそれぞれのパートをこなし、それらが噛み合って至高の瞬間を何度も生み出している。『I Never Loved You Anyway』ではメンバー全員のパフォーマンスがひとつに結集し、前半のハイライトになった。
続いては椅子が用意され、サポートの2人が袖に消えてアンプラグドのコーナーとなる。まずはキャロラインがキーボードを担当しての『Runaway』。続いてはそのキャロラインも前に出て椅子に座り、3姉妹がフロントに揃う格好になった『All The Love In The World』だ。こうして見ると、末娘のアンドレアがはしゃいでいるのを、上の姉2人が1歩引いてしっかり支えているという図式が浮かぶ。
再び元のスタイルに戻る。『Queen Of Hollywood』はアンドレアの熱唱が光り、曲が持つ深みを一層増幅させていた。次のインストではアンドレアが袖に消え、シャロンがフロントに立つ。これまたケルト色の濃い曲だが、サポートのギターソロなどもあって結構アドリブが利いた仕上がりになっていた。後半になっても一向に落ちることのないテンションは、最新作からのヒットチューン『Radio』『No More Cry』で更に彩られ、本編ラストは必殺の『Breathless』で締めた。
これまたコーラスが美しい『So Young』では場内手拍子で一体となり、そしてラストは『Toss The Feathers』。シャロンとジムとアンドレアの3人が寄り添いながら各々の楽器を奏で、キャロラインのドラムソロへとつながれる。こうして要所要所に配されたインストナンバーが、ライヴを引き締めることに成功しているように思った。最後は4人が中央に踊り出て肩を組みながら挨拶し、投げキッスを連発する。