開演時間になるとステージからスモークがわき、15分を過ぎた辺りで客電が落ちるのも今までと同じだ。オープニングは『Duncan And Brady』で、以後は大宮と同じ曲が続く。やはり前日の横浜は異例の大胆な構成だったんだなと自分に言い聞かせつつ、メンバーをチェック。この日のボブ・ディラン一座、ラリーとトニー、チャーリーはカーキ色のスーツ(横浜では確か黒だったと思う)。今までドラムセットに埋もれてほとんどその姿を拝むことができなかったデヴィッドはかろうじて頭部だけを確認できて、クリーム色のテンガロンハットを被り、サングラスをしていた。ディランはお馴染み黒いスーツで、白いラインは模様が並んだものだということがわかった。
5曲目からエレクトリックに移行。ここでまたまた変えてきた・・・。リズム隊がしっかりしたロックナンバー。私はその場では全くわからなかったが、『Down In The Flood』だったのだそうだ。原曲はアコースティックだし、反応できずともムリはないか。続くは『Tonight I'll Be Stay Here With You/今宵は君と』。う〜む、マニア向けというか、かなりハイレベルな出題だ(笑)。
この日は中盤以降はエレクトリックが中心になったが、そうした中で名曲のひとつがアコースティックで炸裂した。『Master Of War』!!なぜか私自身としては、ディラン本人より『30th Anniversary』でエディ・ヴェダーが切々と歌い上げた姿の方が頭にこびりついているのだが、ついに本家をナマで観ることができた。原曲は張り詰めた緊張感がびしびしと伝わるような曲調だが、ここでは少しはぐらかしたようにやんわりとしている。もし私がディランの自作ベストアルバムを年代順に並べて作るとしたら、この曲をアタマに持ってくると決めている。それくらい好きな曲なのだ。続く『Love Minus Zero/No Limit』はラリーのラップスティールが冴え渡り、ディランは優しくしっかりと温かく歌い上げている。
再びエレクトリックに戻り、いよいよ終盤。『Drifter's Escape』に似たロックビートで押し切る曲は、実は『The Wicked Messenger』だった。ラストではブルースハープを披露。ハープはディランの真後ろの機材の上に用意されていて、ひとしきり歌いギターを弾いた後ディランはギターを右手に抱え、客席に背を向けてハープを手に取り振り返って吹きまくる。そして本編ラストは『Everything Is Broken』!!日替わりは60'sの曲が多かっただけに、これまた意表を突かれてしまった。
ここでやっとメンバーを紹介し、続けて場内の空気を一変させる必殺の『Like A Rolling Stone』!!この曲も観るたび聴くたびにイメージが変わる。この日が初めてだった人は違った感想を持ったかもしれないが、私にはバンドがリラックスし楽しむようにして演奏しているように見えた。それでも「how does it feel?」には背筋がゾクゾクしたのだけど。
『If Dogs Run Free』。大宮や横浜では私が気付かなかっただけなのかもしれないが、アコースティックはディランのみで、ラリーとチャーリーはエレクトリックギターだった。場内はジャジーな雰囲気に包まれるが、ここでまた電撃のイントロが炸裂する。
『All Along The Watchtower/見張り塔からずっと』。94年や97年の来日公演では必ず3曲目に歌われ、今回はアンコールで重要な役目を担う。しっかり調べてはいないものの、もしかしてこの曲はネヴァーエンディングツアーで毎夜歌われ演奏されている唯一の曲なのではないか。94〜95年のジミー・ペイジ&ロバート・プラントのツアーでの『Gallows Pole』のように、言わばこの"終わりなき旅"のテーマ曲に位置する曲なのではないか。
続く『It Ain't Me Babe』は初日の大宮とも違うアレンジ。しかもここで再びディランのブルースハープが披露される。日に日にハープの使用率が高くなっていて、ただただ嬉しくなるばかりだ。この後は『Highway 61 Revisited』『Blowin' In The Wind』の必勝リレーで締めくくられる。トータルの時間は少し短くなってしまったが、それは結果論で、ディランのこの日このときのあり方として、文句などあろうはずがない。