The Wallflowers 2001.2.11:渋谷公会堂

開場して中に入ると、グッズ売り場のすぐ隣でボブ・ディランの映像が流されていた。グラミー98授賞式での『Love Sick』と、『Not Dark Yet』『Things Have Changed』のPVだ。それをひと通り見届けて席につくと、前日と同じくストーンズがBGMとして流れている。


 私はこの日、ほんとうは同じウドー音楽事務所が主催するコアーズのライヴを観に行くはずだった。それがメンバーのひとりが病気で来日が中止に。残念ではあったが、チケットを払い戻したその場でこの日のウォールフラワーズのチケットを取った。前日は1階10列目。この日は2階の最前列である。1階はほぼ満席に見えたが、ここ2階は1/4も埋まっていない寂しい入りだった。ああ勿体無い。





 客電が落ちてメンバー入場。前日を上回る歓声が起こり、1階は総立ちになる。私は昨日は初来日の公演初日ということもあってライヴの序盤を期待と不安が入り混じった心境で観ていたが、この日はもう何の不安もない。安心して観ていられる。


 しかし安心どころではなかった。違うのだ。バンドのテンションが。リラックスして固さが取れたというか、メンバーおのおのが自分のパートをより表現できているというか、とにかく演奏が充実している。決して前日のライヴが悪かったわけではないのに、これはいったいどうしたことか。4曲目の『Letters From The Wasterland』で場内は早くも沸点に。前日は終盤まではほとんどアルバムそのままに演奏されていたが、この日はどの曲も後半に引き締まったバンド演奏が披露される。





 どの曲からも、溢れ出るパワーとエネルギーの大きさに圧倒されっ放しだ。『Bleeders』『God Don't Make Lonely Girls』など、こうした一見派手さのないナンバーも、この日のライヴでは重量感があり見応え聴き応えある曲に生まれ変わらせている。一方『I've Been Delivered』『Witness』といった穏やかな曲ではしっとりと聴かせにはしる。


 そしてもうひとつ。この日は音響も素晴らしかった。前日私はマイケル~ベン側で、ギターの音色はクリアに聞こえたが、逆にラミのキーボードはほとんど聞こえなかった。この日は各パートの音がクリアに聞こえる。これは決して私の座席位置の関係だけではないはずだ。そしてラミのプレイが冴える。キーボードセットはステージと平行に1台。そしてくの字型にピアノがもう1台配置されていて、そのピアノの上には小さな電子鍵盤がある。これらを自在に操るリアム・ギャラガーをインテリにしたような風貌のラミ。ジェイコブと同様バンドを支え続けて来たオリジナルメンバーで、クールながらも仕事人としてのプライドがうかがえる。





 アップテンポの『Murder 101』を経て、いよいよ『One Headlight』だ。イントロでラミが少しトチっていたが、これもご愛嬌。前日はマイケルのファルセットが高すぎてジェイコブの声を消していたきらいがあったが、この日はそれもなく、ジェイコブの情熱こもった歌声が場内を圧する。U2のボノはパール・ジャムやスマパンを指して、彼らは質の高い音楽を作ってはいるが、この1曲というシングルを作っていないのが惜しいと言っていた。ボノならではの説得力を帯びたコメントといえるが、ウォールフラワーズは『One Headlight』によってこのコメントをすらクリアしている。それほどまでにこの曲は凄いのだ。


 更に『Heroes』。正直、サントラ『Godzilla』を聴いているときは単なるカバーにしか思えなかったのだが、ここではまるで自分たちの持ち歌であるかのように歌い、演奏している。ベンのgがなぜかTレックス調になっているのが笑える。マイケルはスポットを浴び、ステージ前方まで歩み出す。ラミのkeyも響く。バンドがひとつになっていくのがまるで目に見えるようだ。そして本編ラストはマリオのドラミングが印象的な『The Difference』だ。





 ほとんど間を置かずにアンコール。だが出てきたのは前日と違い、いきなり全員。あれ、と思った次の瞬間、真っ暗だったステージが明るくなり、ビートルズの『Don't Let Me Down』が始まった!メインヴォーカルはマイケルが取るが、途中間違って苦笑い。それをサポートするように、次のコーラスではジェイコブがマイケルに近寄り、2人で1本のマイクスタンドで歌う。


 『Babybird』を経て、ラストはザ・フーの『Won't Get Fooled Again/無法の世界』。間奏のラミのkeyのところでジェイコブがメンバーを紹介。その姿はこの日のライヴが充実し、バンドもそしてオーディエンスも、歓喜に満ちていたことを表わしていたように思えた。











 私たちは、今一度考えるべきだと思う。なぜ彼らが『Heroes』や『Don't Let Me Down』や『Won't Get Fooled Again』や『Song 2』をカバーするのかを。ウォールフラワーズを知らない人にはアメリカン・ロックと紹介するのが手っ取り早いが、実際は彼らの音楽性はそうした枠に入り切らないし、封じ込めること自体意味がないのだ。そして彼らはこれからも質の高い音楽を作っていくだろうし、オーディエンスを熱くさせるライヴを繰り広げてくれるだろう。そういう彼らを私は信じ、これからも追いかけていく。




(2001.2.12.)
















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