聴く側として10年待たされたという飢餓感、渇望感を差っ引いたにしても、『Who Else!』はやはり驚異的なアルバムだった。恐らくはキャリアの中で代表作のひとつに数えられるであろう出色の出来であっただけでなく、現在のロックシーンにジェフ・ベックありということを高らかに宣言してみせたのだ。『Brush With The Blues』『Blast From The East』には今や風格さえ感じられ、世界を又にかけてツアーをこなしてきたという自信と誇りがみなぎっている。
後半は『Star Cycle』でこの日何度目かになるハイライトを迎え、『Rollin' And Tumblin'』ではジェニファーがvoを担当して進められる。そして本編ラストは『Blue Wind』。ジェフ・ベックが弾き出すギターフレーズとオーディエンスが口ずさむギターフレーズの掛け合いが楽しく、そして微笑ましい。昨年の公演ではここまでの一体感がなかったという記憶があり、この日集まったオーディエンスにも拍手だ。終了後はステージ前方にメンバーが出揃い、ジェフ・ベック自らメンバーを紹介する。
アンコールは、昨年と同じくジェフ・ベックとジェニファー2人だけでの『Where Were You』。まるでバイオリンのような音色が2人のギターから発せられる。そして後の2人も駆け付け、ラストは『A Day In The Life』。国際フォーラムの天井を突き破らんばかりの透明感溢れるサウンドだ。折りしもビートルズのベスト盤が発売されて世界中で時ならぬビートルズブームが巻き起こり、ニュースステーションでもデジタルリマスターされたビートルズの映像が日替わりで放送されている状況。そしてそれは、幾多の荒波にもまれながら活動を続けてきた後昨年シーン第一線に帰還し、今なおアグレッシヴなエネルギーを放出しているジェフ・ベックその人のミュージシャンとしての生きざまにダブる。
演奏時間は計1時間半くらい。確かに昨年の公演よりは短い。がしかし、今回は新作『You Had It Coming』でのツアーであること、そしてその新作の曲のほとんどが時間的にはコンパクトであること、メドレー形式の演奏が多かったことなどからして、私はこれでOKだと思っている。決して曲数が少なかったわけでもないし、もちろんジェフ・ベックが手抜きをしたり適当に流したりなどしているわけがない。むしろ、圧縮され濃密さを帯びた美しさとでも言うべき至福の瞬間を、何度も体感できたのだから。