Tahiti80 2000.10.27:横浜Bay Hall

5月にベックを最前列で観たとき、以後これ以上いいポジションでライヴを観ることはないだろうなと思っていた。だけど、その機会は再びやってきた。私は今回のチケットをサマーソニック2000のときに会場で買ったのだが、なんと整理番号が1番と2番(1枚は嫁さんのものです)!!これを最大限生かさぬ手はないと考え、もちろん会社は早退。時間前にBay Hallに到着して列の先頭に並び、開場後はもちろん最前ど真ん中をゲットした。





 リハーサルが少し長引いて開場は15分ほど遅れたのだが、開演はほぼ時間通りだった。これ以上ないポジションを得て、メンバーの様子もはっきりとわかる。フロントのグザヴィエはグリーンのシャツにジーンズ。右腕に黒いブレスレットをつけている。向かって左はgのメデリックで、ヴィンセント・ギャロに少し似ている(笑)。その奥はサポートの人で、主な担当はトランペットなのだが、同じ曲の中でもタンバリンやkeyなど、次々に楽器を変えていく。


 グザヴィエの右にはbのペドロ。まんまるぷくぷくの体型で、ヒゲも濃いしもみあげも太い。いわゆるカッコいいルックスではないのだが(失礼)、しかしその笑顔を絶やさない愛らしいキャラクターは、バンドの中でスパイスのような役割を占めている。私はクアトロのときはペドロと最奥のdsのシルヴァンがよく見えなかったので、2人の動きにも注目する。





 私はこの日キンクスのTシャツ(93年の来日公演のときに買ったものです)を着ていた。それは『Mr.Davis』のときにグザヴィエがMCでキンクスのことを話すはずなので、そのときに反応すればメンバーが少しでも気を良くして演奏に臨めるかな、と考えてのことだった。しかし・・・、


 グザヴィエは私のTシャツを指さし「Look at the Kinks T-Shirt」と言い、それから曲についての想いを話す。そして最後に「sing for you」と言ったのだ!ん!?"You"ってもしかして私のこと!?ぎょえ~~~~(笑)。実はライヴが始まってからすぐ、グザヴィエとペドロがチラチラ私の方を見ていたので、向こうも早くから気づいていたようだ。今まで数限りなくライヴに行ってきたけど、自分のために歌うと言ってもらったのはもちろん初めてのこと。回りの人の視線も一斉に私のところに集まる。そうして始まった『Mr.Davis』。


 だけど私は嬉しかった反面、少し後悔もしながらこの曲を聴いていた。私はタヒチ80を嫁さんに教えてもらって聴くようになった。グザヴィエがそこまでキンクスTシャツに反応するとは思わず、"for you"とまで言ってくれるのだったら、このTシャツは嫁さんに着せるべきだったと思ったのだ。今更なんだけど・・・。





 ペドロがリードvoをとって猫や犬の鳴きまねをする短い曲には場内が和む。その間グザヴィエは「Miyaoooo」「Grrrrr」という札を持ってオーディエンスを煽る。この後新曲も3曲ほど披露。ペドロとは対照的に地味で目立たないメデリックのギターリフがベースになった曲もあった。どこで覚えたのか、グザヴィエが「おっはー」をやる場面も(笑)。


 終盤は『Heartbeat』からゾンビーズのカバー『Tell Her No』、そしてバーズのカバー『So You Want To Be A Rock'n Roll Star』へとつなぐ3連発。ライヴバンドとしての充実した演奏力、加えてグザヴィエの歌もうまさに唸らされ、見応え聴き応えのある瞬間が続く。曲が終わり、ペドロがステージ上に倒れ込み、他のメンバーは次々にペドロの上に乗りかかる。憎めないキャラだな、ペドロは。


 そして本編ラストは『Revolution 80』。なんとdsのシルヴァンがドラムセットから身を乗り出して両手を挙げ、その後ステージ前へ。今まで奥まってひたすら演奏のみに徹していたので最後に自己主張したかったのかなあ、などと呑気に見ている場合ではなかった。なんと柵に足をかけ、私たちのところにダイヴ!うわあ。ほんとうはシルヴァンを支えてあげなければいけなかったのだが、自分の身が崩れてしまった。








 2度のアンコール。そしてそのラスト『When The Sun』ではペドロは序盤ドラムを叩き、それが途中からエフェクター(?)を使ってのDJプレイに移行。バンドの軸はグザヴィエなのだろうが、メンバーそれぞれ相変わらず芸達者ぶりを見せ、その中でもペドロの器用さとフットワークの軽さには恐れ入る。


 グザヴィエは、この日のライヴが日本最終公演になるけど、その中でも今夜はスペシャルナイトだと言ってくれた。そういえばクアトロのときよりもメンバーがノッているように見えたし、そのときは短く感じた演奏時間も、今回はずしりと重く、長く感じさせてくれた。この後は欧米ツアーに出るが、日本には近いうちにまた来たいそうだ。











(2000.10.29.)



















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