Glow 2000.8.12:ハードロックカフェ横浜

確かにSS2000のステージで、グロウのメンバー自ら横浜ハードロックカフェがどうこう、ということを言ってはいた。たぶんミニライヴかイベントのようなことをするのだろうと思った私は、フェス終了後にネットで情報を探してみた。がしかし、SS2000主催のクリエイティブマンのサイトにも、会場となるはずのハードロックカフェのサイトにも何も手がかりはなく、単にメンバーがそこで食事したとかそんなことだったのかなあ、と半ば諦めモードに入っていた。


 ところがそのクリエイティブマンの掲示板で、8月11日深夜12時よりグロウがシークレットギグを行うとの書き込みが。だけど、これを書いた人はメールアドレスを掲載していないし、何よりオフィシャルな情報ではない。ガセなのか真実なのか、果たしてどこまで信用してよいものやら…。しかし、私の自宅は横浜のハードロックカフェまでならクルマならすぐの距離。気合いを入れれば歩いて行くこともできる。もし仮にギグがなくとも、みなとみらい付近をふらふらドライブして帰ってくればいいやと考え、午後10時過ぎにクルマを走らせた。





 横浜ハードロックカフェはみなとみらいのクイーンズスクエア構内にあり、一度だけ食事したことがある。もちろん他のハードロックカフェと同様、店内にはアーティストの写真やらサインやらギターやらが所狭しと飾られている。しかし、ライヴを演るほどのスペースがあったっけか、という不安も頭をよぎる。


 午後11時近くになり、お店の前に着いた。果たしてグロウのシークレットはあるのか、それとも空振りか。恐る恐る入り口に近づいてみる。


 小さなボードがドア前にあり、深夜12時からグロウのシークレットライヴ、という告知が。更には店員さんが「この後グロウというバンドのライヴがありますんで、ぜひ…」というようにして呼び込みをしていた。ほっとして中に入ってみる(シークレットなのだから、ここまで情報が不足しているのも当然といえば当然か)。


 私たちは店内ほぼ中央の柱近くのテーブルに通される。そして、その先から奥の方がどうやらライヴスペースになるらしい。ハードロックカフェのマークの入った旗が飾られ、それを背にするようにしてドラムセットが。そしてスタッフに混じって自分で機材のセッティングをするグロウのメンバーの姿もあった。店内のBGMもグロウ。当たり前か。





 とりあえず席について飲み物と食事を摂る。が、どうにも落ち着かない。普段のライヴであれば開場時間に列を成して並び、係員にチケットの半券を切ってもらって荷物のチェックを受けるなどして中に入り、自分のポジションを確保してライヴをじっと待つ、というのが開演前の流れだ。タワーレコードやHMVでのインストアイベントも大差ない。とにかく観る側はあれこれと整列させられ、バンドメンバーとは見えない壁で仕切られている。なのにこの日はメンバー自らが機材を調整していたり、その辺をうろうろしていたりしている。あまりにも無防備なこの状況にかえって私は面食らい、どうしていいのかわからなくなってどぎまぎしている。店内をざっと見回してみる。グロウのライヴ目当てでここに来た人はどれだけいるのか。たまたま食事するためにここに居合わせている客もいるようである。


 徐々に開演時間が近づいてくる。スタッフの一人と思しきお姉さんが各テーブルを回り、この後グロウのライヴがあるので観て行って下さいと声をかけ、グロウのステッカーを配る。実は今回のギグはチャリティーイベントでもあって、終演後に義援金を徴収することになっている。店内に居続ける人にはそのことを了承してもらう必要があるようだ。


 ステージ直前右側で食事していた客が席を立ち、そのテーブルが空いた。開演時間まであと少し。意を決した私は、店員のお姉さんにそのテーブルに移れないかと聞いてみた。お姉さんは上司に確認を取りに行き、結局そのテーブルに移れることに。もうステージが目の前に。あまりにもあっけないこの状況に、私のどぎまぎ度はますます上昇する。でもよくよく考えたら、自分たちのすぐ目の前ががら空きだったら、グロウのメンバーもあまり面白くないだろうなあ。





 深夜12時を少し回り、店内にグロウを紹介するスタッフと思しき人のMCが入る。そしてメンバー入場。SS2000のパンフレットに紹介記事ではメンバーは4人になっているが、出てきたのは3人。SS2000のときも3人だった。ギタリストのアンディは脱退したらしい。向かって左はg & voのダニー。向かって右はbのヴォルカー。髪が青い。この2人はお揃いの格好。そしてその中間にして最奥に陣取るのは、日本でモデル経験があって日本語も少し話せる女性dsのレイチェルだった。


 出だしからメンバー弾けまくり。恐らく普段ならスタンディングのライヴなのだろうが、今回私たちは椅子に腰掛け、飲み物を口にしながらライヴを観ている。もしかしたらアコースティックライヴになるのかという予想もしたが、SS2000となんら変わらぬ3人のパフォーマンス。熱い。そしてそれが私の1メートルもない極近で繰り広げられている。


 ヴォルカーがニコニコと愛想よく、そして狭いスペースにもかかわらず前ににじりよったり右に左に動いたり、とアグレッシブだ。私とも何度か目が合ってしまう。ダニーは上にぴょんぴょん飛び跳ね、レイチェルは力強いドラミングで魅せる。ドラムセットに埋もれているのが勿体ないくらいのルックスなのだが、そこは音の方でしっかりと自己主張できている。それにしても、こんな間近でなんで座って見なきゃならんのだ。これはライヴぢゃない、拷問だよ(笑)。


 日本でのファーストシングル『Dancing Queen』で場内は最初の沸点に。ライヴはSS2000のときとほとんど同じセットリストで続く。MCもほとんど同じだ。大阪と富士急でSS2000に参加して凄いよかった、というようなことを言っている。私はSS2000のパンフレットを持ち込んでいたのでそれをさっと掲げると、ダニーが指差してくれた。普段のライウ会場と違うアットホームな雰囲気に、メンバーもリラックスしている様子だ。逆にやりにくくはないのかな?ライヴ中の写真も余裕で取り放題である。





 私たちが座って観ている一方、バンドのセットの奥で、スタッフなのか同行しているライターなのかが曲に合わせてモッシュしている。どうやらスペースに余裕があるようだ。くそー、いいなー(笑)。そしてなんと、ちょうちんのオバケの着ぐるみまで登場(笑)。その着ぐるみはそのうち私たちのテーブルの方までやってきて、狭い通路でモッシュする。


 40~50分ほどでライヴは終了し、メンバーは奥に引き上げる。これだけでもSS2000をしのぐヴォリューム。こうしたミニライヴって、多くてもだいたい5~6曲だと思うのだが、それがもう10曲は演ったと思う。SS2000は持ち時間を始めいろいろと規制があったようで、今回の方がバンドものびのびと出来ているように見える。














 場内はアンコールを求める拍手に包まれ、メンバーは苦笑いしながら再登場。そして はちょうちんの着ぐるみと抱き合ったりしている。最後はバンドのファーストシングル『Mr.Brown』。アルバムのトップを飾るキャッチーな曲で、ついでに言うならTVKテレビ『音楽缶』の8月のテーマ曲でもあるのだ。


 ヴォルカーが場内を煽る。最前テーブルの私は、これまで後ろで座って観ている人のことを気にして耐えに耐えて座っていた。が、ついに我慢の限界が。一気に立ち上がってしまった。回りを見回すと、他にも立ち上がって手を叩いている人がいっぱい。なんか、これまでずっと圧迫されていたものが一気に弾けたような状態になった。素晴らしい瞬間だ。


 ライヴは計1時間ちょっとで終了。"義援金"はひとり1000円ということになっているが、5000円払っても申し分ないほどの充実したライヴだった。おまけに終了後はセットリストも頂戴できたし(しかもSS2000の分までくっついていた!ラッキー♪)、メンバー全員からサインまでもらえてしまったのだ。はあぁ。














 こうしたシークレットものって、だいたい渋谷をはじめ都内で催されることがほとんどだと思っていて、何ゆえ今回は横浜のハードロックカフェだったのか不思議。だけど、おかげで素晴らしい体験ができたし、とにかくいい金曜の夜を過ごさせてもらったと思う。そして翌日、今更ながら私はグロウのファーストアルバム『Superclass』を購入した。これだけいい想いをさせてもらったのだから、なんとかして還元させなくてはグロウの3人に対して申し訳がたたないと思ったのだ。




(2000.8.14.)



















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