Bernard Butler 2000.2.27:赤坂Blitz

開演10分前に入ったにもかかわらず、場内は約半分の入り。ヤバいじゃん、これ。バーナードそんなに売れてないの?私は実はsmash会員に送られてきたInvitation Cardを利用させてもらい、他にもそうした人は結構いると思うのだが、それでもこんな状態だ。ウイークデーならまだしも、日曜日の公演でこの客入りはあまりにも寂しい。それとも会場の選択ミスと考えればいいのか。前回はリキッド3日間で全公演sold outだったのに。





 場内が7~8分くらいの入りになったところで客電が落ち、SEが少しの間響き渡る。私の心は不安な面持ちなのだが、そんなこととはおかまいなしに『Friends & Lovers』で幕開け。胸元が大きく開いた黒いシャツにジーンズ姿のバーナード。このいでたちは初来日やフジロック99を思い起こさせる。折れそうな細い体を前後に激しく揺さぶり、ギターをかきならすその姿も以前のライヴパフォーマンスそのままを見ているようだ。


 曲はセカンドアルバム『Friends & Lovers』からの曲が次々に放たれていく。本人自らガレージロックと名付けたそのサウンドに、私はスウェード在籍時代のギターサウンドを感じていた。スウェード時代のようなドロドロした毒素、タブーを犯す危険な香りこそないが(この部分はやはりブレットに負うところが大きいのだろう)、そのギターメロディは、まさにスウェード時代のそれに相通ずるような耽美的な世界に思えるのだ。


 対してファースト『People Move On』は、バーナードが自身の音楽的ルーツ、ミュージシャンとしての立ち位置を自ら再確認するために生み出されたアルバムだった。シンプルで素朴でおとなしめで、それはバーナードの人となりがそのままにじみ出たようなサウンドなのだと思う。このときのツアーでのソロ初来日公演もまさにそうだったと感じている。そしてそれは、スウェードと関連づけられることを暗にかわしているようにも見えた。


 『You Just Know』ではなんとオーディエンスに背を向けておしりを振ってみせたり、ギターを取替えに出て来るおじさんが大きな看板のようなものをかぶっていて、その前後にはおちゃらけた日本語が書かれていたりする。こんなふうに、力んで見入っているコチラの肩の力が抜けるような場面が多い。しかし、もちろんパフォーマンスはストレートでエモーショナル。手を抜かないというか、オーディエンスに対して常に最高のモノを提供し続けようというひたむきさというか、この人の生真面目さが伝わってくる。





 ネットで情報を収集するようになってから、特に日本におけるビジネスとしてという側面からもロックを考えるようになった。レコード会社の戦略。テレビやラジオ、雑誌などのプロモーション。コンサートプロモーターの奔走。そして何より、おカネを払ってCDを購入する人たち。CDの売り上げ枚数はそのアーティストがどれだけ浸透しているかの尺度となり、コンサートを行う際の公演場所(今回は東名阪+福岡)や会場選びに関連してくる。


 私がこの日会場に入った途端に感じてしまった空虚感。確かに場内は熱狂に包まれてはいるが、それでもスカスカなこの状況。smash会員にタダ券がバラまかれたという現実。それを利用し、バーナードに対しておカネを払っていないという後ろめたさ。


 こうした状況を知ってか知らずか、それでも精一杯頑張って見せてくれるバーナードのその姿が、私には痛々しかった。なんだかもう見ていられなくなってきた。














 終盤、ずっとかけ続けてきたサングラスをはずして表情をあらわにし長髪を振り乱しても、本編ラスト『Not Alone』で場内が明るく照らされる中高らかに歌い上げ、場内が最高潮に達しても、私にはそのさまが悲痛に見えたままだった。そしてアンコール。


 アコースティックでの『My Domain』、そして『Woman I Know』。98年のライヴのアンコールそのままである。序盤はセカンドからの曲を中心に、終盤からアンコールはファーストに、という展開はまさに絵に書いたかのようだ。現時点でのバーナードの持てる最高のものが結集されたライヴといえるだろう。しかし、何かすっきりしない。何かが引っ掛かる。あまにりも出来すぎというか、予定調和なんじゃないの?



しかし・・・





 『special song...』と自ら言い放ち、優しいkeyの音色とバーナードの歌声だけが場内に響き渡る。シンプルでいて、短いながらも壮大な世界観が凝縮されていて、やけに聴き応えがある。コレはアルバム未収録の曲で、帰宅後にネット上で調べまくってやっとわかったのだが(というか、もう少し私に英語力があって、その場でバーナードのMCを読解できればこんな苦労はしなくて済んだのだが)、シングル『Stay』のカップリングとして収められていた『The Sea』という曲だった。



何が悲痛なものか。





何が出来すぎなものか。





何が予定調和なものか。





 『The Sea』は短くも美しい、それでいて奥行きというか普遍性を感じさせる隠れた名曲だ。恐らくは4分程度の曲だと思うが、私には20分にも30分にも長く感じられた。どうしてこの曲がアルバムから漏れてしまったのか不思議だ。しかし、こう来たかバーナード。まるで私がああでもないこうでもないとうだうだ考えていたのを見透かしていたかのような、そしてそれをあっさり和らげてくれるようなこの選曲。参りました。。。





























 この後はお馴染みの『Stay』、そしてよもやの2度目のアンコールへと突入。それまでのパフォーマンスに今ひとつ入り込めなかった私にとって、このアンコールはまるで夢のようなひとときだった。98年の公演でも、そしてフジロック99でも感じることができなかった、こちらが戦慄してしまうようなアーティストとしての懐の深さを、まさに見せつけられた感じがした。






(2000.2.28.)



















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