Reef 2000.2.5:Liquid Room

チケット発売がなんと昨年の8月。公演日まで半年もあるじゃんと思い呑気に構えていたら、5日のチケットはいつのまにか売り切れに。がーん(汗)!しかし、公演日が近づけば必ずなんとかなると念じ、じっとチャンスを待つ。結果、ネット上でチケットを売りに出しているのを見つけ、その方から定価で譲り受けることができた(Sさんありがとうございました)。


 サウンドチェックが延びているようで、階段で開場待ちをしていると音が漏れてくるのが聞こえる。結局予定時間より15分ほど遅れて開場。整理番号が比較的早かったこともあり、まだ空きがあったバーカウンター手前のいわゆる"審査員席"に陣取ることにする。開演間近になると場内は人ひとで密集し、空気が薄くなるような圧迫感が。早期完売に恥じない客入りに、リーフへの期待感がにじみ出ている。


 まずは前座。フォーティーンという日本のバンドだ。DJを含む5人編成で、voはオンナの子。ビョークを意識しているように見える。サウンドはラウドでヘヴィーなロックなのだが、このオンナの子の声が甘ったるく、そのコンビネーションが今ひとつで、トータルとしてはアンバランスな感じにとれた。彼らは30分弱の演奏でステージを後にする。潔い。





 セットチェンジの後、いよいよリーフ登場。4人ともラフな格好。voのゲイリーは髪を切ったとのことだったが、それでも結構長髪だ。『New Bird』でスタート。今回はもっかの最新作『Ride』のツアーであり、この曲はアルバムの顔、看板的役割をも果たしていると思っていたので、予想通りの出だしだ。続いてはタテノリの『Who You Are』で場内総モッシュ状態に。


 そして、3曲目でアノ耳に残るリフ。更にゲイリーの雄叫び。『Place Your Hands』だ!まさかこんなに早くくるとは思わなかった。。。当然のこと、興奮のヴォリュームも一段と高くなる。オーディエンスも一緒に歌い、そして歌詞の通りに両手をかざす。後方から見ていると美しい光景である。序盤は『Rides』からの曲が中心となり、『I've Gotta Something To Say』ではゲイリー自らがアコギを取り、切々と歌い上げる。


 リーフの曲はコンパクトなものが多いが、それがライヴでもほとんどアルバムと違わぬバージョンで演奏されている。bのジャックが長身でステージ上ではやたら目立ち、逆にgのケンウィンは自分の仕事を淡々とこなしているという感じだ。dsのドミニクは、スティックを何度飛ばしているかわからない。それでも演奏を途切らすことなく、何度も何度も新しいスティックを取り出して応戦する。





 リーフの音楽に一貫しているのは、オトコ臭い泥臭い骨太ロックだ。私は最初リーフを聴いたとき、てっきりアメリカのバンドだと思ってしまったが、実はイギリスの出身である。90'sにデビューしたバンドは、だいたいがUKかアメリカかを一聴してわかるサウンドや雰囲気を持ち合わせているもので、その意味でリーフが占めている立ち位置は物凄く特異であり、そして物凄く貴重だ。リーフのデビューは95年。そのときのUKロックシーンはというと、まさにブリットポップ全盛時ではないか。しかし、ブリットポップが一過性のムーヴメントに留まり、各バンドが生き残りを強いられたとき、そこで行き詰まり消えてしまったバンドが多かった。リーフはしたたかだった。リーフは図太かった。アルバムを出す度に音楽的に充実し、地味ではあるが階段を1歩1歩確かめるようにしてより高い次元を目指している。


 セットは『Rides』に偏ることなく、前2枚のアルバムからもバランスよく選曲される。アルバム未収録の恐らくはシングルのカップリングとして収録されている曲、更には新曲も披露したようだ。ファーストからの『Good Feeling』の辺りから、場内の熱気が更に増す。ここまで割と冷静に見ていたのだが、なんだか飲み込まれてしまったような感覚に陥る。私はライヴ中でも割と時間を気にしてしまう方なのだが、ここまでどれくらいの時間が経過したのかわけがわからなくなっている。つまり、それはこのライヴが時間が長い短いといった尺度を超越した次元にまでブッ飛んでしまったことの証明に他ならない。





 『Wake』で本編が終了。しばしの間が空いた後、メンバーが再登場する。そしてアンコールの一発目はまたもや新曲だった。ちなみに前日(4日)ではスタートを飾った曲とのことで、ライヴはなま物であり、そのときそのときに全力を燃やし最高のパフォーマンスを提供するという、リーフのライヴに対するあり方を垣間見たような気がした。


 続く『Speak Lark』で、"事件"が発生する。まずはゲイリーがステージを降り、向かって右側前方のオーディエンスの直前にまで歩み寄る。マイクを向けて声を出させたり、数人と握手していたりしたようだ。いったんステージ上に戻り、今度は向かって左側の方へ。少し様子を見るようにして、なんとオーディエンスの中に飛び込んでいった!!がしかし、誰もゲイリーを受け止められなかったようで、床に落ちてしまった模様。あらら・・・。スタッフが慌ててステージに現れ、心配そうに様子をうかがう。ゲイリーはどうやら無事のようで、ステージ上に帰還する。と、ここまで来ればアノ必殺ナンバーが待っている。ラストは『Naked』!燃えた。叫んだ。弾けた。歓喜の拍手の渦に包まれながら、メンバーはステージを後にする。





























 クロスビート99年5月号に、『Rides』発表に伴うゲイリーとドミニクのインタビューが掲載されている。その中に、ただライヴを演るだけじゃなく、相手とコミュニケートすることを常に考えているというコメントがあって、それが私の心に強く残っていた。


 日本独自編集のミニアルバム『Place Your Hands』のラストに、『Naked』のライヴテイクが収められている。これは96年2月の初来日公演のもので、ゲイリーが「ナニシテモイイヨ」とオーディエンスをあおり、ステージ上がもみくしゃになってライヴが中断。「ちょっとみんな降りて~」「このままじゃライヴできないよ~。中止になっちゃうよ~」という係員の声が響いてディスクが終了している。


 ライヴ中、ゲイリーは歌いながら何度もしゃがみ込んだ。それは、オーディエンスと同じ目線になって対峙しようとしてのことではなかったか。オーディエンスの中に飛び込んだのも、コミュニケーションの願望が昂じてのことではなかったか。「アリガトウ」を何度も連発していたのは、この日会場に集まってくれたオーディエンスに対する、素直な感謝の気持ちだと思う。そういった行為は痛々しく思え、しかし同時に、私はこの上なく嬉しく思うのだ。




(2000.2.6.)



















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