ゴダイゴ 99.11.20:大宮ソニックシティ

フジロック97を別扱いとすれば、大宮ソニックシティはレッチリが最後にライヴを行った会場である(それがもう7年も前の話)。私自身この会場は初めて。場内、思ったほど平均年齢は高くなく、子供だけのグル−プも見られた。栃木なまりの青年もいたりして、ココが大宮であることを実感。





 6時10分頃に客電が落ち、壮大なシンフォニーが響く。ステージ上にはペンライトの光が。メンバーがそれぞれの位置に陣取っているのであろう。そしてステージがばっと明るくなり、『Gateway To The Dragon』でスタートだ。これは再結成に伴って発表されたアルバム『What A Beautiful Name』のトップを飾っている曲でもある。バックには文字通り"龍"の絵があしらわれている。今回のツアー、メンバー以外にホーンセクションが3名サポートで参加しており、この曲はそのホーンが冴え渡っていて耳に残る。曲が終わり、場内から歓喜の声が。それに応えるようにタケカワユキヒデが「ゴダイゴですっ!!」と力強く両の拳を突き出して挨拶。


 ゴダイゴが活動を停止したのは1985年。そして14年の歳月を経て、今年10月から12月までの、わずか3ヶ月に限定しての再結成だそうだ。前述の通りニューアルバムを発表しており、そのほとんどが新曲だ。序盤はそのニューアルバムからのナンバーが続く。




 これが、だ。



 めちゃめちゃいいっ~~~~~~~~~!



 おい、 おい、 おい、 おい、  おーい(なんだか大仁田調だ/笑)。



 ちょっと待ってよー。いったいどういうことなのよ、これ。再結成なんでしょ。ナツメロ大会になるんじゃなかったの。あのとき自分はこうだったああだったって、演る方も観る方も懐かしむのが今回の再結成ツアーなんじゃないのー?だいたいTVじゃ『ガンダーラ』に『モンキー・マジック』にって、ヒット曲のオンパレードだったじゃないのさ。それが、それが、それがあああああっ。



 デーヴスペクターとからかわれたトミー・スナイダーの激しいドラミングが。岡本真夜をプロデュースして大ヒットさせた浅野孝己の泣きのギターが。思いっきり痩せて別人のようになってしまったミッキー吉野の壮大なkeyの音色が。こ、これってさあ、もろ洋楽ロックじゃん。これがゴダイゴ!?まるでTOTOだよ。まるでボストンだよ。まるでエイジアだよ。浅野さんのギターはまるでサンタナだよ。タケカワユキヒデは、もしゴダイゴがこの14年間、活動停止しないでずっと活動し続けていたらこんなライヴをしていただろう、というライヴをやりたいと言っていたが、それってこういうことだったのかい。く、くそー。なんだかとっても悔しい。でも嬉しいぜ。


 と、新曲の方はそんな感じで、その合間に披露された『モンキー・マジック』は、個人的には今ひとつだった。まったくもって意外な展開だ。しかし、演ってる当人たちはいたってリラックスしている様子。ニューアルバムは全員が作詞作曲を手がけ、それぞれ曲によってイニシアチブを握っている人が変わる。すなわちビートルズのホワイトアルバムの様相か。そしてライヴでも、メンバーがひとりずつこの14年間の想いを語り、そして自分がメインの曲を歌い演奏する。トミーはべらべらとしゃべりすぎで何がいいたいのか結局わからず。宣教師のスティーヴはメンバーと別れたときの思い出を語った(スティーヴだけは19年ぶりの再起となる)。浅野さんはツアーグッズの宣伝をして自分の曲を演奏。アルバムでは歌入りだそうだが、このときはインストで演奏された。サンタナがフュージョンやったらこんなだろう、というギターインストの曲。この日のライヴで最も収穫だったと感じた瞬間だった。





 今回のツアーは前日の神奈川県民ホールが初日で、この日の大宮が2日目である。初日を自分の地元で、そして2日目をタケカワユキヒデの地元でたて続けにやれて感慨深い、と語ったのはミッキー吉野である。そうした他のメンバーのMC&曲をずっと待ち、最後に自分の想いを語ったのはタケカワユキヒデ。14年間の間にマンガが増えてマンガのために家を建てないとヤバいとか言い、そして14年間で子供も増えたとか。子供のことを想いながら書く曲が多くなったとのこと。私のこの14年間といったら、洋楽を聴き始めて、どんどんその深みにハマっていったことがその最たる出来事だろう。プリンスの『When Doves Cry/ビートに抱かれて』で脳天をカチ割られ、雷に打たれたような衝撃を受けて以来、どれほどのカネと時間と情熱を注いできたことか。もちろんそれは素晴らしい瞬間の連続だった。


 終盤はもちろん黄金ヒットの炸裂となる。『ガンダーラ』こそ切れ味が鈍いように思えたが(なぜだろう)、『ビューティフルネーム』で場内はほぼ総立ちになる。1979年は国際児童年で、NHKではこの曲がしょっちゅうかかっていた。私の住んでいた秋田ではその当時民放は2局しかなく(今でも3局だが)、NHKの及ぼすチカラは絶大だったのだ。そして『銀河鉄道999』へ。





 ゴダイゴの曲は、その題材として世界を取り扱ったものが多かった。歌詞が英語、というのも新鮮でインパクトがあった。『ビューティフルネーム』はその最たる曲であったと思う。そしてまたそのサウンドの奥行き、広がりは宇宙を旅するロマンにはぴったりであったと思う。SLが宇宙を走り、その旅の中で主人公が人の命の尊さを学び、やがて少年から大人になる、という「銀河鉄道999」は映画化もされて空前のブームとなったが、それの顔でもある主題歌をゴダイゴが任されたのはある意味当然の成り行きではなかったか。というよりは、ゴダイゴでなくてはならなかったのだ。


 私がゴダイゴの音に触れていたのは、私が洋楽を聴くようになるよりかなり以前のことである。だがしかし、私が洋楽を聴くそのルーツが、原点が、実はゴダイゴにあったのではないか。昨年辺りから、私たちが今まで洋楽のロックに求めていたスピリットを表現できる日本のロックバンドが数多くメジャーにのし上がってきたが、ゴダイゴは実はそうしたバンドたちの原点ではなかったのか。





 2度のアンコール。そして、客電がついても鳴り止まぬ拍手の渦の中、再び姿を見せて肩を組み、お礼をするメンバーたち。当初は大ヒットした4曲をナマで体感することだけが目当てで会場に足を運んだ私だったが、嬉しい誤算の連続に加えて思ってもみなかったことに気付かされてしまった。TVでは相変わらず例の4曲の露出ばかりが目立ち、それこそライヴ前の私のようにナツメロ扱いしている人が多いことだろう。しかし、とんでもない話だ。とんでもない勘違いだ。ゴダイゴの期間限定の再結成ライヴ、古き良き時代を知る人もいいが、洋楽の良さを知っている人にこそ足を運んで欲しいライヴである。




(99.11.21.)


































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