Fountains Of Wayne 99.8.6:渋谷タワーレコード

整理券を配布し切るまでに3時間とかからなかった今回のFOWの渋谷タワーミニライヴ。確かに新作『Utopia Parkway』はバンドにとって会心の作と言えるだろうし、聴いていてそのクォリティに対する満足度も高い。だけど、私は正直こうまでこのバンドが日本で支持されているとは思ってもみなかった。不勉強の自分を恥じる。


 ミニライヴは渋谷タワーレコードのB1Fで行われる。B1Fは、以前は軽い食事もできる喫茶だったのだが、ここんとこは閉鎖されていて入れなかった。で、その内装は狭いステージ、それと若干数十の椅子が並べられている。私は整理番号が144番と決して早い方ではなかったので(たぶん真ん中より少し後ろくらいです)、ステージに向かって左側に立つことにする。ステージ両サイドにはモニターがあり、FOWのビデオクリップが繰り返し流されている。


 ライヴ開始予定時刻の午後7時を少し回り、タワーの係員の人が出て来て今夜のライヴの進行の説明や注意を与える。その後の司会はロッキンオンの坂本麻里子さんにゆだねられた。坂本さんは、女優のつみきみほに似ているように見え、髪をオレンジに染めていた。坂本さんよりFOWについて簡単な紹介があり、その後フジロックの映像がモニターで流される。『Denise/愛しのデニス』。途中でgの弦が切れ、gを放り投げてしまう様もしっかりと映されていた。これはWOWOWの映像なのだろうか。





 そしていよいよメンバー登場となる。vo&gのクリスとbのアダム。今回は2人だけによるアコースティックライヴだ。日本語もまじえて自己紹介するのだが、なぜかアダムは「ボクハ セカイノ クロサワ デス」と言って場を和ませる。そしてライヴが始まった。さわやかなメロディが意外や野外という舞台にマッチしていた先日のフジロックだが、アコギ2本だけによるシンプルな構成の方にこそ、聴いていて説得力を感じるのは私だけだろうか。


 MTVアンプラグドがああまで大当たりしたのは、シンプルな演奏によって、通常はインプラグドのアーティストたちのより"生"に近い姿が見られたり、そのアーティストの音楽的ルーツや敬愛するアーティストへのリスペクトなどが垣間見ることができたことにあると思う。だけど、ボブ・ディランとかニール・ヤングとか、もともとアコースティック、という人たちのアンプラグドには、そのような"意外さ"ではなく、壁に何重にもペンキを塗ったような厚みにも似た"凄み"を感じている。そして今回の2人によるアコースティック、後者の系譜を引くものと感じている。気合いが前面に出ているわけでもなく、肩の力が抜けたリラックスした調子なのだが。





 5曲ほど演ったのだろうか(私が記憶しているのは『Hat and Feet』のみ。このときのアダムの吐息を漏らすような歌い方には笑えた)。ここでミニライヴは終了し、坂本さんの通訳による客とのQ&Aコーナーへと移る。


Q「フジロックどうでしたか?」
A「とても楽しんだ。ライヴが終わった後はスクーターを盗んで乗り回して遊んでいた。」

Q「次のアルバムの制作は進んでいるのですか?」
A「今年いっぱいはツアーをするので、来年以降に着手することになる。」

Q「フジロックの後、どこか観光に行きましたか?」
A「スケジュールがきつい中、大阪と福岡に担当ディレクターに引きずり回されるようにして行った。10月に再来日するけど、今度はスケジュールをしっかり確認するよ(笑)。」

Q「ビデオクリップの制作にメンバーはどこまで携わっていますか?」
A「自分たちでアイディアを出し合って作るものが多いが、ディレクターに勝手に作られてしまって不満なものもある。」

Q「フジロックに出演した他のバンドで気になる人たちは?」
A「ZZ Topの大ファンで、できれば会いに行きたかったが、彼らはあまりにもビッグだし、気が引けてしまって結局できなかった。あと、Phishには結構興味があって、今度アメリカでツアーがあれば、自分でチケットを取って見に行くよ(笑)。」


 うる覚えではあるが、だいたいこんなやりとりがあったと思う。いつも思うのだが、向こうの人というのはただ質問に答えるだけでなく、そこには必ずユーモアがこもっていて、聞いている側も和んでくる。私も質問しようとして手を挙げたのだが、坂本さんに当ててはもらえなかった。この後プレゼントの抽選へ。プレゼントは、メンバー自作のTシャツ、サイン入りのオフィシャルTシャツ、サイン入りのドラムスティック。もちろん私ははずれた。


 そしてこれで終わりかと思った瞬間、2人がgを手にしてマイクスタンド前に立つ。演奏されたのは『Troubled Times』だった。アコースティック映えしていて、聴いていて心が洗われるような気持ちになる。





 フジロックの余韻も醒めあらぬ中、野外ライヴとはまた違った魅力(というよりこっちの方がFOWの本来の姿だと思う)を楽しむことができてよかったと思う。9月には日本独自のミニアルバムが発売され、そして10月には単独公演で再来日を果たすとのことだ。


 私はフジロック終了後、苗場から秋田の実家へとクルマを走らせていた。夕陽を浴びて輝く日本海がきれいだった。そしてそのとき、車内のBGMとして流れていたのは『Utopia Parkway』だった。




(99.8.10.)



















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