Underworld
=99.4.4:赤坂Blitz=






 あっという間にチケットが売り切れになってしまった今回のアンダーワールドの来日公演。たまたまTELがつながってチケットが取れ、こうして会場に入れていることにただただ幸福感を感じている。新作『Beaucoup Fish』のクォリティも上々。そして、前日のリキッドでのオールナイト公演では、なんと1時間50分ものパフォーマンスを見せ付けてくれたという。期待できる。


 客電は既に落ちている。ステージの後方に2つ、そして上方に3つの大きなスクリーン。そして、向かって右側にはDJブースが設置されていてDJプレイが繰り広げられている。 開演前だというのに、既に場内はダンスフロア状態だ。最初から異様な熱気に包まれている。そして、午後7時を10分ほど過ぎていよいよメンバーが登場だ。





 悲鳴ともつかぬ歓声がダンスビートをかき消す。私のいる2階席も、横の階段や通路にまで人が溢れていて、そして皆踊り狂っている。私はBlitzでは極力2階席を利用する方なのだが、こんな状態は初めてだ。前代未聞だ。そして下を見下ろすと、フロアで踊る人たちが映画「バグズ・ライフ」の蟻のようにすし詰めでもみくちゃになっているようにみえる。異様だ。異様だ。空気が。熱気が。何なんだ、これは。どういうんだ、いったい。


 『Cups』の後半のフレーズから『Push Upstairs』へ。カール・ハイドのvoが入ったところで歓声のヴォリュームが一層上がる。ステージ上を左右にふにゃふにゃと動き回るカール。スクリーンに映される無数のアブストラクトな映像。メッセージを秘めた英単語の数々。そして、スタッフの持つビデオカメラが、フロアのオーディエンスを映し出す。







顔、顔、顔、







歓喜の表情、







恍惚の表情、







至福の表情、







差し伸べる手、













・・・それらが、スクリーンに映し出される。













 これを見て、私はどきっとした。以前BSで放送されたグラストンベリー98。日も没し、荒涼とした野外に響き渡る『Bone Slippy』。そして、それを享受し、答えていたオーディエンスたち。そのイメージを、思い出してしまった。そのイメージと、ダブってしまった。


 こういった幻想的な光景を、そして目の前の3人それぞれの超絶プレイを目の当たりにしながら、一方で私の頭の中は、以前見に行った、類似したジャンルのミュージシャンのライヴを思い起こしていた。




FRF97を彷彿とさせた、幕張メッセの異空間のプロディジー。




個人的にはちょっと期待外れだった、FRF98のゴールディー。




そのFRF98のフィナーレを飾り、オーディエンスとシンクロしたプロディジー。




それから去年の6月、場所も同じここBlitzで観た"テクノの始祖"クラフトワーク。



























・・・と、なんだか、いろんなことが頭の中に思い浮かんでしまう。














そして、93年に東京ドームで観たU2のZOO TVツアー。














 東京ドームのステージ上に並べられた、無数のモニター群。その中で立ち回り、歌い、叫び続けたボノ。そしてメンバーたち。それまでのU2とは明らかに異質の、硬質なサウンド。混沌と泥濘に彩られた『Achtung Baby』。試行と模索の中を突き進んだ『Zooropa』。そして、このときのツアー。仮面をかぶり、道化を演じ、絶望し、それでも疾走をやめなかったU2。そのバックボーンにあったもの。テクノとは、ダンスビートとは、90'sという時代とは、未来とは、その方向性とは、・・・。


 現在のロックの流れ、状況、方向性、ありかた、そういったことを考えたとき、U2は正しかった。そして早かった。困惑を、逆風を、はねつけてみせた。そして、自らの姿を『Pop』という作品に結実させてみせた。それは、ロックの可能性の新たな一面を切り開いた瞬間に見えた。


 アンダーワールドの持つ音楽性は、一般に"ダンスビート/ダンスミュージック"で片付けられることが多いようだが、私はこの見方にはとても違和感がある。確かに"音"だけを見るとそうなのかもしれないのだが、そのスタンスというのか、その根底にあるもの。それは、他のテクノ/ブレイクビーツのミュージシャンよりもロックに思えるのだ。ノーマン・クックがクラッシュの名前を出したり、『Satisfaction』や『When Doves Cry』をサンプリングしていること。ケミカル・ブラザーズがノエル・ギャラガーと、ゴールディーがデヴィッド・ボウイと共演すること。それらは"未知との融合"だの"異種格闘技"だのと呼ばれていて、また実際にそう感じることができるのだが。




彼らは、




そして彼らの音楽は、




とても自由で、




しかし多様で、




不定形で、




変幻自在で、




そして緊張感を備えている。




妥協がない。




甘えがない。




能天気さがない。




醒めている。




青白い炎のように。




しかし、




青白い炎は、実は熱い。




周りをまきこんでしまうくらいに、




熱いのだ。



























 ここはライヴハウスなのだが、私が今まで体験してきたような密閉感が、ここにはない。スクリーンに映し出される無数の映像のせいなのだろうか。はたまた彼らのプレイのせいなのだろうか。フロアでも2階席でも踊り狂うオーディエンスのせいなのだろうか。





とても気持ちいい。







とてもすがすがしい。







解放感に、包まれている。







そして、そのことをリアルに実感できる。



























 これでもか、これでもかと、この、いつ終わるとも、いつ果てるともしれない炸裂するビート。がしかし、1曲1曲がクライマックスのような高密度と充実感を兼ね備えている。逆に言えば、いつ終わってもいい、いつ終わっても物足りなさを感じない、それだけの圧倒的なクオリティの高さだ。





そして、場内の雰囲気はいよいよ尋常ではなくなってくる。







ガーデンホールで、延々3時間も最前列で観たファットボーイ・スリムのような、







リキッドで50分の壮絶アンコールを見せつけたジョン・スペンサーのような、







これから、







この先、







いったいどうなるのか、







何が起こるのか、







これ以上、何があるというのか、







これ以上、まだ凄いことが起こりうるとでもいうのか、







感覚が麻痺したような、







五感を破壊されるような、







夢遊病にでもかかってしまったかのような、



























そして、終局は近づいてくる。







あの瞬間を、







あのイントロの瞬間を、







あの曲のイントロが場内に鳴り響く瞬間を、







待っている、







待っている、







備えている、







構えている、



























そして・・・、

























『Born Slippy』!!



























ついに、来た。



























全てを浄化してくれるような、







全てを払拭してくれるような、







全てを一掃してくれるような、







止まった時の中をかけめぐるような、







疾走感、







躍動感、







高揚感、



























日常の彼方へ、







混沌の彼方へ、







時間の壁の向こうへ、







天空へ、







宇宙へ、







未来へ、







永劫に、







続く疾走。







続く爽快感。







染み渡る望郷感。







破れる涙腺。







浄化される心。







忘却される雑念。







今、全ての終わり。







そして今再び、全ての始まり・・・。








































 結局、前日のリキッドを上回る、アンコール込みの計2時間15分にも渡る仰天ライヴだった。そして、最後にカールの口から出たことば・・・、



























今度はフジロックで会おう!



























そう、待っている。







私たちは、待っている。







グラストンベリーの興奮が、ここ日本でも再現されることを。







そしてそれさえも超越したプレイを、再び目の当たりにできることを。







苗場の荒涼とした夜空に、原野に、『Born Slippy』が響き渡ることを。






(99.4.9.)






























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