Monica 99.3.7:横浜Bay Hall

冷たい雨。そして、ひと気の少ない日曜夜のベイエリア。横浜Bay Hallは、山下公園からもう少し本牧寄りの埠頭の中に位置している。最寄のJR関内駅からは歩くと30分以上かかると思われ、とてもじゃないが車でないと行こうという気にならない場所だ。がしかし、駐車場が必ずしも豊富にあるわけでもなく、入庫までに結構待つ(帰りはそれ以上に待たされたけど)。路駐も多い。


 荷物チェックを入り口すぐのところでやっているため、雨の中をさんざん外で待たされてからの入場になる。Bay Hallには、2年前にバスタ・ライムスを見に来ているが、そのときに比べて客の入りがケタ違いに多く、場内はもうすし詰めで移動もままならない。客層は、外人、それも黒人率が異様に高い。スタッフもほとんどがゴツい黒人である。





 日曜夜なのに、開演は午後7時半と遅めである。10分ほど遅れて客電が落ち、いよいよモニカ登場か・・・。だけど、出てきた黒人女性は異様にマッチョで、髪もショートだ。どうやら前座らしいが、この人をモニカと勘違いして場内は既に盛り上がってしまっている(笑)。バックダンサーも日本人だったりして、なあんかバッタもんくさい。おまけにローリン・ヒルの『Ex-Factor』や、フェイス・エヴァンスの曲まで歌ってるし。ようわからん。


 この黒人女性は結局20分程度で引っ込んでいった。場内は、まるでプロレス会場のようにモニカコールに包まれる。ふうっ、やっとモニカか・・・と思ったが、甘かった・・・。続いて出てきたのはこれまたわけのわからん日本人ラッパー兄ちゃん3人組。彼らも20分ほどで引っ込む。そして、またまた日本人女性シンガーが登場。不穏な空気がどんどん増幅していく。オールナイトのイベントならいざ知らず、なんでこんなに前座出すのか理解できん。・・・というか、どうせなら事前に告示してほしいのに。無条件に前座アーティストを見させられるのってたまらない。


 前座3組が終わって時刻は夜8時半くらい。すると今度は、女性スタッフのアナウンスが「アッシャーの来日が決定し・・・」とかのたまって、アッシャーの公演日程とチケット前売り情報を聞いてもいないのにしゃべりだし、あげくにアッシャーのPVを流し出した。おいおいいい加減にしろよ。モニカ見に来てんだぜ、早くモニカを出せモニカ、というヤバい雰囲気になってくる。こういうのは7時半の開演前にやっとくべきことではないのだろうか。この主催者の仕切りの悪さには腹が立った。客に選択する権利はないのだろうか。この日会場に足を運んだ人たちは、間違いなくアッシャーを嫌いになったに違いない(笑)。





 そしていよいよモニカが登場。ただしモニタースクリーンの中に。グラミー受賞のインタビュー、そして『The Boy Is Mine』を含む数曲のクリップが間に挿入される。そしてそれが終わると、黒人スタッフがMCで客をあおる。これだけ仕切り悪くって、待たされまくって、それでヨコハマ盛り上がっていこう、とか言われたってねえ、という感じ。そしていよいよ本物の登場だ!


 CDで聴くのと同様な、あるいはそれ以上の透き通った、力強い歌声だ。ほんとうにまだ10代なのか。SPEEDの寛子や宇多田ヒカルも凄いが、本場のシンガーはやはりそれ以上に凄い。ブランディーも10代のはずだし。かつてティファニーがアイドル人気で全米で売れていたことがあったが、モニカはしっかりと足に地のついたアーティストだ。末恐ろしい才能である。





 しかし客入れ過ぎ。ソールドアウトのなずなのに当日券まで出してるし。私は整理番号が遅かったために入場が遅く、最初はフロア後方に陣取っていたが、ステージの様子がよく見えないのであちこち場所を変えてみる。が。どこへ行ってもあまり見え方は変わらない。フロア前方はすし詰め状態で、とてもじゃないが突進できる感じでもない。2本の柱も邪魔だし。はあーっ、仕切りの悪さの次は横浜Bay Hallの会場の作りの悪さに悩まされてしまう。ステージが異様に低いのだ。後方はひな段のように高くなっていてカウンター席があり(しかし、その辺は真っ先に人がうまってしまうのが常で)、そこから見るかフロア前方でなければステージの様子がわからない。それから、この日の観客は、なぜかガタイのいい兄さん姉さんが多いのだ。私の身長が足りないのがいけないのだろうか。


 背伸びしてやっとモニカの顔が確認できる感じ。そして、懸命にステージの様子を探る。バックバンドは一切なく、カラオケで歌うモニカ(バンド演奏のないライヴは初めてかもしれない)。ステージも後方にひな段のようなものがあるだけで、余計な飾りが全くなく、殺風景である。男性ダンサー数人がモニカの後ろや前で踊っている。





 日本人向け?なのか、ゆっくりめにMCするモニカ。そして、ひとりの兄ちゃんをステージに上げる。「私の曲『The Boy Is Mine』は、ひとりでは歌えないの・・・」とか言って、一節ずつ自分が先に歌い、その後でマイクを兄ちゃんに向けて歌わせる。この兄ちゃん、短髪でメガネかけていて、まじめーそうな感じで、なんか東大受験を目指しているガリ勉のような雰囲気。ステージ上にいてモニカと対峙しているのがとってもミスマッチだ(失礼)。モニカから向けられたマイクに対してウラ声で返し、場内の失笑を買っていたが、私は立派だと思った。自分だったらあの場面で腹くくって歌えるだろうかと思って。


 しっとりめの『For You I Will』、見ていて、聴いていて気持ちがいい。そして、現在全米第1位の『Angel of Mine』・・・。考えてみれば、今全米で最も売れている曲をナマで見て、聴けてしまうということは凄いことだ(これも恐らく私のライヴ歴で初めてのことではないか)。私がモニカを知ったのは、ミーハーだが、やはり『The Boy Is Mine』のモンスター的ヒットで、である。しかし、単なる一発屋に終わらない、実力を兼ね備えているのだろう。次回の来日はいきなり武道館に進出してしまうかもしれない、なんて想いを馳せてみる。


 『The First Night』のイントロと共にモニカはステージを後に。そしてまたまた黒人スタッフがMCであおり、モニカコールが発生する。その『The First Night』でアンコールがスタート。ダンスビートが小気味いい。フロアに向かって花束を投げ入れているモニカ。とってもフレンドリーである。そして、「I'll be back again...」と言い残して再びステージを後にするモニカ。





 客電がつき、BGMが流れ出す。おいおい、まだアレを演ってないじゃん、と思いつつも、一方で、ああこれで終わりだな、と力が抜ける。がしかし、ここでまたまた黒人スタッフのMC。「チョットチョットマッテ。モニカニ、プレゼントアル。グラミージュショウ シタカラ コレカラ モニカニ ケーキ ワタス」とのこと。そして、モニカ再登場。「アリガトウ」と答え、ケーキのろうそくを吹き消すモニカ。お約束なのか、それともスタッフが仕掛けたハプニングなのかわからないが、嬉しそうであり、そしてテレくさそうに見えた。「みんながCD買ってくれたり、応援してくれたおかげ」と、モニカのことばを黒人スタッフが通訳。そして、必ず帰ってきます。今日は1時間のショウだったけど、今度来るときはもっと長く、1時間半くらい演ります、とのことだった。


 1度客電がついたことでフロアの方も人がバラけていたため、この辺りで私は前方に突進していた。間近に、モニカを確認できた。そして、ここで、ぼろろんぼろろん♪という、アノ曲のイントロが流れる。もちろん『The Boy Is Mine』だ。全員で大合唱。サビでフロアの客にマイクを差し出して歌わせるモニカ。





 モニカのライヴ自体は楽しめた。よかった。・・・だけど、会場の構造、そして主催者の仕切り、段取りの悪さに対する不愉快さの方が優ってしまったライヴだった。今後、横浜Bay Hallで私の好きなアーティストのライヴがあったらどうしようか、迷うところだ。




(99.3.14.)



















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