Pulp 98.9.20:On Air East

2日ぶりのOn Air East。日曜なので、おとといのマンサンのときのように遅刻せずに20分前くらいに着く。中に入ってみるが、やはりマンサンのときより客が少ない。チケットも確か余ってるはずだし。2時からのHMVのイベントは盛り上がったのだろうか。それにしてもなんか外人が多いな。





6時20分頃、ジャービス、そしてメンバーが登場。客がステージ前方に押し寄せる。なんか、ジャービスは普通だ(笑)。留学している大学生のようないでたちである。ステージは、アルバム『This Is Hardcore』でもトップを飾っている『The Fear』でスタートする。背筋に悪寒が走るような鬼気迫る曲なのだが、既に盛り上がっている。もうモッシュが発生している。やっぱりライヴはこうでなくっちゃ。


もちろん『This Is Hardcore』に伴うツアーなので、そのアルバムからの選曲が最も多い。そして合間合間にはメジャーブレイクした『Different Class』からの曲が入るといった構成だ。当然といえば当然か。しかし、なつかしい『His 'N' Hers』からの『Do You Remember The First Time』や、18日には演らなかった『Joyriders』なんかも演って、少し意外。セットリスト固定ではないのね。ジャービスのMCもなめらかだ(何言ってるかわからんが)。「fXXk」を連発しまくり(笑)。マイクコードを肩にかけながらステージ上を右へ左へと動く。





アルバム『This Is Hardcore』だが、前作と大きく異なりとてもシリアスな作品だ。はっきり言ってライヴ映えする曲は多くなく、中盤はダレ気味になる。しかし、ライヴで次々に演奏されるのを見て私が感じたのは、ルー・リードの『Berlin』にも通じる、危うく、壊れそうな美しさだ。コンセプト・オペラ、とでも言えばいいのだろうか。前作はみんなで一緒に楽しもうよ、というノリで、それでバンドはメジャーブレイクしてUKトップバンドの仲間入りをしたわけだが、その代償として、ジャービスやバンドの周りを取り囲む状況は一転したはずであり、人と接するわずらわしさや自分の意図が誇張されたり歪曲されたりして、周りにうまく伝わらなくなるようなジレンマを感じるようになったはずだ。その反動は当然次の作品にハネ返ってくると思っていた。しかし、今のジャービスにはそのギャップによる苦悩を少し距離を置いて見ることができていたようである。


物語は(と書きたくなる)『Help The Aged』、そしてこれも今回が日本初の『Sylvia』で、終結に向けて急加速する。苦悩を克服したジャービスの心境がオーバーラップしているように感じる。そして『Party Hard』へ。この曲の歌い方、デヴィッド・ボウイに似てると思うのは私だけかな?心地よい空間、時間、余韻、そして次への期待を残しつつ、ステージは一旦終了する。





アルバムタイトル曲でアンコールがスタート。重く、暗いイントロが響く。苦悩は、まだ終わってはいなかった。せつなく、はかなさを感じてしまう。きっと、誰の心の中にでも潜んでいるであろう"闇"の部分をさらけ出しているような気になる。それが美しかったりもする。そして、次の『Glory Days』で、再び光が差し込む。ジャービスが、メンバーが、観客が、みんなの心が、徐々に、開かれていく。解放されていく。



 その時が、近づいてくる。


 みんな、そのときを待っている。


 鼓動が、聞こえてくる。


 その瞬間の。


 弾ける瞬間の。


 そして、その時は来た。


 『Common People』!!


 飛ぶ。


 跳ねる。


 叫ぶ。


 両手を、天に突き出す。


 この瞬間は永遠だった。


 私たちは、ひとつになった。


 場内は、ひとつの意志の塊となった。


 熱く、


 激しく、


 そして、素晴らしい瞬間だった。


 素晴らしい空間の中に、私たちはいた。


 この瞬間が、いつまでも続けばいいと思った。


 そう、いつまでも。





 嵐が去った。


 しかし、またもジャービスは帰還する。


 最後の、幕を引くために。


 『Underwear』。


 心地よい風が、私たちを撫でた。


 温かい光が、私たちを包んだ。


 そして、それは私たちを明日へと導く道標のようであった。


 これは終わりではなく、次のステップに向けての始まりだった。  





 そして、幕は降ろされた。





(98.9.23.)



















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