Massive Attack 98.6.13:Liquid Room

リキッドオールナイトでのマッシヴのライヴ。しかし天気は朝から冷たい大雨。車で新宿に向かう。車の中で最後の追い込みを、とCDチェンジャーのスイッチを入れるが、・・・なんと作動しない。故障したのか?なんてことだ。既に波乱含みだ。


開演時間の夜10時を少し回ったくらいのところでリキッド前に到着。もちろん開場しているようだ。一人のお兄ちゃんにチケット余ってませんかと声をかけられる。もちろん丁寧に断ったが、それにしてもこのお兄ちゃんは、チケットもないのにこんな雨の夜に新宿まで来ていたのか。向かいのロッテリアで腹を満たし、嫌になるほど長い階段を息を切らしながら上って中に入る。既に重厚なビートが場内に鳴り響いている。


DJのMCがところどころで入る。「最悪の天気だが、最高の夜にしようぜ!」なかなか粋なことを言う。このDJの人は結構有名らしい。なんでも昨日(12日)のガーデンホールは、音響が今一つだったらしく、ノリの方も今いちだったので、あおっているようだ。真打ち登場までの間、延々音楽が鳴り(なぜかルパン三世のremixも)、踊る若者で場内はダンスフロアと化している。





深夜1時すぎ、ついにマッシヴ登場!ステージは、ドラムセットやkeyやターンテーブルが後方の高い台の上に鎮座し、前方にはマイクスタンドが何本も用意されている。アルバム『Mezzanine』同様『Angel』でスタート(デルピエーロが出てるadidasのCMで流れてる曲)する。あの寒気がするようなイントロに、おお、ついに始まるかと背筋がぞくぞくする。


1曲ごとにvoが変わり、そのたびに別の色がにじみ出る。一つのバンドのはずなのに、メンバーのコンビネーションの微妙なズレがまるで複数のバンドが交代で演奏しているかのような効果を生み出している。胎児が脈動している、あのインパクトのあるクリップの『Teardrop』も演奏される。もちろんブリストルなんて行ったことがあるはずもなく、しかし、ポップ・グループといい、曲から受けるイメージは、なにかこう、荒涼とした冷たく、厳しく、ディープな感じがしてしまう。混沌、絶望感、しかし、何故か美しさを感じてしまう。


アンコールのラスト曲はこれもアルバムのオリジナル同様『Group 4』だ。しかし、レコードに比べるととても激しく、荒々しく、壮絶で、何かもう、この世が終わってしまうんじゃないか、というくらいの危うさを感じてしまう。そして終了。計1時間50分ほど。先日のクラフトワークやジャグアーといい、スタンディングのライヴは短時間、という私の長年の固定観念はもはや完全に崩されつつある。





マッシヴは昨年のフジロックのセカンドステージのトリ(のはず)だった。しかし、その頃私はマッシヴについての知識がまるでなく、プロディジーを観ないでこんな奴らを見に行く連中なんているのか、というぐらいの認識しかなかった。いやはや偏見とは恐ろしい。Fuji2日目の中止が、今度ばかりは私にとってプラスに働いた。今年に入り、入魂の新作『Mezzanine』の発表。そして来日。いいタイミングだったと思う。最悪の雨だったが、最高の夜だった。




(98.6.14.)



















Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.