Jaguar 98.5.17:Club Quattro

キリンカップとNHKマイルカップの結果をTVで確かめた後に渋谷に向かう。で、ジャグアーのライヴ。はしょって結論から先に書いてしまうと、予想を大きく上回ってすげえよかった。何しろアンコール込みで1時間50分。私はつごうクアトロに7回ライヴを観に行き、これが8回目だったのだが、こんなにやってくれたバンドはなかった。しかも新人。オアシスの武道館ライヴより長いたあどういうこったい、これあ。





ぎっしりの場内(もちろんSold Out)。15分ほど予定より遅れて客電が落ち、イントロがテープで流される中メンバー登場。一斉に黄色い声援。マルコムはずっと後ろ姿で支度をし、そしてばっと振り向き様に歌い始める。反射的に"弱い"と思った。マルコムのvoがだ。94年オアシス、95年スーパーグラス、96年クーラ・シェイカー、97年…、ときて98年はジャグアーか、というのがメディアの振れ込みで、私はこれらのバンドのデビュー時と頭の中で比較しながら観ていた。しかし、彼らはオアシスほど自らの音に肯定的ではなく、彼らの音にはクーラほど多彩な音楽的ルーツも感じられない。メンバーの個性が今一つ薄くてインパクトを欠くが、パフォーマンスはそれなりにこなしている。強いて言えばスーパーグラスとライドの中間、といったところか。


前半はアップテンポで短い曲をほぼアルバム通りに演奏。シングル『But Tomorrow』も早いうちに演ってしまう。1曲終わるごとにマルコムのMCが入る。カタコトの日本語も時折混じるが、とにかく客は「イエ~イ」を繰り返す。黄色い声援飛びっぱなし。女性客が多い。なんだかアマチュアバンドを見ているようなノリだ。それにしてもこんなペースじゃ50分くらいで終わっちゃうんじゃないのか、と思っていたところでギアチェンジ。


「New Song」と言い放ってノイジーなgとエフェクターが鳴り響く。ローゼズの『Breaking Into Heaven』のイントロを彷彿とさせる。延々イントロを引っ張ったところでやっと歌い出す。気になっていたvoの弱さも徐々になじんできているようだ。意外、というより単なる私の勉強不足なのだが、dsのタムがバックvoを務めているほか、アコースティックの曲ではkeyを奏でていて結構特異のポジションを占めている。そしてbのジュリアンは一言もしゃべらず(彼にはマイクスタンドが用意されていない)弾きに徹している。個人的には長々とくどいインプロが好きなので、徐々にバンドに対する見方も変わっていく。後半の曲はほとんどインプロが織り交ぜられ、1時間少したったところで本編が終了する。





"最もローゼズに似てる曲"『Up And Down』でアンコールは幕を開ける。オアシスのコーラスにローゼズのg、とはまさにこの曲のことだ。この後アコースティックを1曲演って再びメンバー引っ込む。これで終わりかな…と思っていたところに黄色い声援に後押しされるように今度はマルコムが1人でアコギ片手に出てきてアルバムには入ってない曲(後で『Then I Foreget』とわかる)を歌う。ノーマルとアコースティックを使い分け、それぞれに聞き所をみせる。なかなか侮れないな。


歌い終わり、今度こそ終わりかと思うと残りのメンバーをステージに呼んで演奏再開。これは明らかにハプニングだ。日本が気に入ったのか、黄色い声に御満悦なのか、今日が最終公演だから単に張り切ってるだけなのか、とにかく観ている者にとっては嬉しい誤算の連続だ。結局ここからは既に1度演奏した『(忘れました)』『Coming Alive』を演奏するのだが、それにしてもこの展開は安易にアンコールを求める観客を一気にねじふせるかのようなやり方だ。びっくりした。そして終了。客はバンドが出し尽くしたのをしっかり受け止めたかのように出口へと向かう。帰り際にCD『But Tomorrow EP』を買い、サイン色紙をもらう。バンドが演奏している似顔絵に3人のサインがされている。この辺は無邪気で新人らしい。少しほっとする。





アルバムレビュー以外はメディアもそれほど積極的にジャグアーを取り上げることはなかった。今回の来日公演、この日のライヴを他の人はどのように受け止めたのか。メディアの反応が楽しみだ。




(98.5.17.)



















Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.