Jackson Browne 98.4.1:東京厚生年金会館

ここのところアルバム発表に伴うツアーでコンスタントに来日しているジャクソン・ブラウン。今回は初のベスト盤『The Next Voice You Hear』でのツアー。そして、会場が個人的には94年、96年、そして今回といずれも厚生年金会館。結構因縁が深い。


3月は東京ドームに通い詰めだったので、やはりキャパ2000人の厚生年金は狭い。狭いというかちょうどいい大きさだ。グッズ売り場に長蛇の列ができている。なんと過去2回の公演ではなかったパンフレットが今回は用意されていた。


開演予定時間を過ぎても一向に始まる気配なし。ジャクソンコールや拍手が自然発生的に起こっては消えて、をしばし繰り返す。さすがに30分以上たつと観客もダレてきた。スタッフが出てくるがセットリストをステージに貼り付けてまた引っ込む。バンドもしくは主催者側に何かアクシデントでもあったのか。ちなみに開場時間も遅れたらしい。





予定から40分ほど過ぎたところでやっと客電が落ちる。バンドメンバー及びジャクソンが入場。歓声が起こる。オープニングが『Looking East』からの『The Barricades Of Heaven』。そして『Fountain Of Sorrow』と続く。ベスト盤に伴うツアーなので、新旧まんべんなく曲が演奏される。前回のときはほぼレコードのヴァージョンに忠実に演奏されていたが、今回はgやkeyのソロがフィーチャーされていて、そのたびメンバーにスポットが当たる。バンドとしての結束感がひしひしと伝わってくる。1曲1曲をしっかりと演奏し、観客はそれをじっくりと聴く。曲に合わせてgを交互に替えるジャクソン。自らpを弾きながらの『Late For The Sky』は相変わらず透明感にあふれていて素晴らしい。観客もコアなファンが多数と思われ、70年代の名曲ばかりか『I'm Alive』『Looking East』からの曲に対する反応も早い。


中盤にベスト盤収録の新曲『The Next Voice You Hear』が演奏される。このツアーのテーマ曲と言ってもいいだろう。パンフにあったインタビューでは、過去を振り返ることよりも新しい曲を書くことの方に興味があるんだと語っていたジャクソン。そしてこの曲。ベストヒットツアーなのだが、これがちっともナツメロとならず、あくまで"今"を体現していることを象徴する曲と感じた。それにしても、この人は変わらない。音楽性が変わらないのは言うに及ばず、今年で50歳になるはずだが、その風貌は幾分年輪を帯びたに留まっているし、体形もスリムなままだ。キャリアを重ねると太ってしまうミュージシャンが多いというのに。


終盤の『The Pretender』は、ああ、自分は今この人のライヴを目の前で見てるんだ、ということを改めて思い起こさせてくれる。極端な言い方かもしれないが、みずみずしさ、はかなさ、危うさ、美しさ~、つまりシンガーとしてのジャクソンの魅力がこの曲には全て集約されていると思う。この曲、そしてこの曲を演奏しているときのジャクソンには時を越えた普遍的な旅路のようなものを感じる。この後メンバー紹介があり、そしてもちろん『Running On Empty』への必勝リレーとなる。





観客は大満足のようだったが、個人的には少し物足りない印象を受けた。アンコールは1曲、トータルで1時間45分は過去2回に比べても短い。開場や開演がもたついたのと何か関連があったのか。本人の調子が悪いというようなことは特には感じなかったが。"少し物足りない"というのは、94年の公演ときの大ハプニングが忘れられず、ジャクソン・ブラウンのライヴの凄さはまだまだこんな程度のものではない、ということ。しかし、彼の"今"の姿を確認することはできたと思う。




(98.4.2.)


















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