「これで終わりです」・・・
「どーやって演るんだよ!こんな雨の中で」
・・・「あした、Prodigyで盛り上がろうっ!」
降りやまぬ暴雨の中、主催者の声が会場に響いた。苦渋に満ちていた。みんな混乱していた。そして、疲れていた。ぼろぼろになってしまっていた。フェスを見に来た人たちも。フェスを運営していた人たちも。やがて、みんなそれぞれの身の置き場にのろのろと向かった。
しかし、私たちにあしたはなかった。
国内初にして最大のロックイベントになるはずだったフジロックフェスティバル97は、結局その半身しか姿を見せることができなかった。私たちには疲労感と言葉にできない悔しさが残った。
メディアにはフェスの悲惨な有様と問題点ばかりが取り沙汰された。あまりにも無防備な観客、多量のゴミ発生、交通渋滞、主催者側の準備不足、果ては人家侵入という許すべからざる行為までもが発覚した。悪しきもの、拒否すべきもの、すっかりネガティヴなイメージがフェスにこびりついてしまった。
FRF98に向けての準備も難航した。あくまでも富士山の見える野外会場で、という主催者側の理想は、地域住民の現実論の前にもろくもはね返された。2つのステージ、収容人員、開演時間、昨年の問題点のクリア等、全ての条件を満たすのは厳しかった。
しかし、それでも開催は決まった。会場も決まった。出演アーティストも決まった。あれから1年の歳月が過ぎた。ついにここまで来たのだ。そして、
あとは
私たち次第だ。
もちろん全部いっぺんにとはいかないだろうが、問題点は少しずつ克服しよう。自分を守るための備えをしよう。そして、フェスを楽しもう。成功させよう。私たちの五感でアーティストたちの叫びを、スピリットを感じよう。心に焼き付けよう。たとえ記憶喪失になっても消し去ることのできない思い出にしよう。もう、すぐそこまで来ているよ、
Fuji Rock Festival'98が!!
・・・そして、フェスティバルは終了した。
至福の2日間だった。
日本全国から7万人が一同に集結した。
みんなが受け止めた。
アーティストたちの
スピリットを。心の叫びを。
オーディエンスの意思が1つに集中しているのを。
そして応えた。
天空に向かって拳を突き上げて。
全身で跳ねて。
絶叫して。
泪を流して。
みんなが 何かを掴んだ。
みんなが何かを手に入れた。
そして、最後に 確かめ合った。
来年また富士で逢おう、と。
(98.8.3)
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