Summer Sonic 2007/Day 1-Vol.3 Klaxons/Modest Mouse/Travis







ダンスステージに移動すると、LCDサウンドシステムの終盤だけ観ることができた。バンドではあるがエレクトリックであり、ダンサブルであり、そしてパンクである。ジェームス・マーフィーのぶっきらぼうなヴォーカルもイイ。ダイナソーとバッティングしていなければ、フルで観たかったバンドだった。続くアクトはクラクソンズである。話題のUK発ニューカマーであり、本人たちが作ったとされる造語「ニューレイヴ」が、そのままムーヴメントを表すキーワードになっている。個人的にもさてどれほどの実力の持ち主なのかと、楽しみ半分怖さ半分で臨んでいた。


ライヴは時間通りに始まったのだが、メンバーのうち数人がシルバーのコートを羽織っていて、姿がよく見えなかった。そして、ひとりが何故か車椅子で登場し、歌いながら車椅子を走らせてステージ上を忙しく動き回っている。どうやらこの人がヴォーカルのようで、車椅子なのはケガを負っていたかららしい。さて演奏だが、まず技術的にかなり微妙で、メンバー間のコンビネーションがタイトとは言い難い。では、それをカヴァーする勢いや溢れんばかりのパワーがあるのかといえば、それも感じられない。ヴォーカルが車椅子に収まらなければならなかったのはバンドにとっても本意ではないと思うが、状態がよくないならよくなりなりにライヴを成り立たせるだけの手腕がなければ、この先生き残っていくのは難しいのではないだろうか。





ソニックステージに舞い戻ると、モデスト・マウスのライヴ中だった。そこそこキャリアのあるバンドらしいのだが、それまで地味に活動をしていたのが今年突然認知度が上がった。それは、新譜が全米1位を獲得したのと、あのジョニー・マーがバンドに正式加入したからである。ジョニー・マーはさまざまなバンドにゲスト参加したり、プロデュースしたりしていて、個人的には2000年のフジロックに自身のバンドを率いて出演したのを観たことがある。


バンドは6人もしくは7人の大所帯で、ヒゲをたくわえたややぽっちゃり系のギター&ヴォーカルが軸になって演奏が進められている。音は土臭いアメリカンロック~ブルース~カントリーを主体としていて、時折ハウスやダンスの要素が見え隠れする。全体的に地味で手堅いという仕上がりなのだが、アメリカではこういうバンドが根強く支持されているというのはわかる気がした。さてジョニー・マーだが、ステージ向かって最も左の前の方に立ち、他のメンバーの方を向きながら淡々とギターを弾いていた。ギターヒーローの如く、ガンガンにソロを弾きまくる場面はあまり見られなかった。そのたたずまいはどこか他のメンバーからは距離を置いているようでいて、自分は助っ人であり外様である、というスタンスを取っているように見えた。自身の、スミス及び幾多のセッションワークの実績ばかりが注目されてしまってはバンドに申し訳ないという、気遣いのようにも見えた。





そのままソニックステージに残り、初日をトラヴィスで締めることにした。2003年のサマソニはディーヴォとバッティングしていたためパスしていて、翌2004年の単独来日はチケット発売後に来日が中止になってしまっていた。なので、個人的には2001年のフジロック以来実に6年ぶりにお目にかかることになる。モデスト・マウスのときは正直客入りは芳しくなかったのだが、さすがにトラヴィスの開演時間が近づくにつれ、場内は入場規制に近い大入り状態になった。


客電が落ちてオーディエンスの歓声が沸き起こったが、ステ−ジ上は無人のまま。すると、なぜか『ロッキーのテーマ』が流れ、そしてフロアの前の方がざわつき出した。なんと、トラヴィスのメンバーがステージ上にではなく、ステージの下からフロアの通路の方に現れたのだ。やがて彼らはステージに上がったのだが、4人が4人ともガウンを着ていて、つまりボクサー風に入場したのだった。ガウンを脱ぎ捨てると早速スタンバイし、ライヴは『Selfish Jean』『Eyes Wide Open』という、新譜『The Boy With No Name』からの曲で幕を開けた。


フロントマンのフラン・ヒーリーは細身で小柄で、短髪のヘアスタイル。白いTシャツには、なんと「I Love Tokyo」とプリントされていた。選曲は、キャリアを総括するかのように新旧満遍なくセレクトされ、そのいずれもがどこを切っても美メロで叙情的で、という金太郎飴状態。MCも豊富で、父親になったこととか、3年前に日本に来れなくて残念に思ったこととかを、ニコニコしながら話してくれた。もともと轟音と勢いで圧倒するというバンドではなく、1曲1曲をじっくりと聴いて楽しむという形のライヴになるため、曲間はどうしても場内が静まり返ってしまい、それがバンドに対して申し訳ない気がした。


ハイライトになるのは、『Driftwood』や『Sing』といったトラヴィス・アンセムなのだが、一方で個人的にツボなセレクトもあった。ファーストアルバム『Good Feeling』からのタイトル曲、そして『All I Want To Do Is Rock』までもが披露されたのだ。トラヴィスがそのスタイルを確立するのはセカンド『The Man Who』においてであり、ブリットポップ期にリリースされたファーストは当時乱立していたギターロックそのものだった。セカンドで路線を変えたからこそ今のトラヴィスがあるのは間違いないのだが、個人的にはファーストの中に既に普遍性を感じさせるトラヴィス節の一端を垣間見ることができていて、封印されてしまうのはもったいないと思っていたのだ。 


本編ラストをアンセム『Turn』で締めくくり、そしてヘッドライナー特権のアンコールだ。4人が横一列に並び、アコースティックスタイルでの『Flowers In The Window』で、フランが弾いていたアコギは、途中アンディやダグも加わっての三人羽織のようになって弾く場面もあった。そして、オーラスはこれまたピースフルな曲『Why Does It Always Rain On Me ?』。終始祝祭的なムードが漂っていたライヴは、今年のサマソニ私的ベストと言っていいだろう。3年前、クラブチッタのチケットを取っていながら中止になってしまって観れなくなった無念の思いが、やっと晴らされたのだ。

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(2007.9.9.)
















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