Summer Sonic 2007/Day 1-Vol.2 Digitalism/Interpol/Dinosaur Jr.







後ろ髪を引かれる思いでソニックステージを後にし、ダンスステージに移動してデジタリズムを。ドイツ出身のテクノユニットであり、また宣材ポスターなどからは、クラフトワーク・チルドレンというイメージが打ち出されている。既に5月に来日公演をこなしていて、更にさかのぼれば、実は去年のフジロックで深夜のレッドマーキーにも出演している。


今年アルバムがリリースされ、個人的にも何度かPVを観ていて、確かに気になる存在ではあった。しかしそう感じていたのは私だけではなかったらしく、なんとダンスステージには入場規制が敷かれ、入り口前には観たくても観られないオーディエンスが大勢詰め掛け、スタッフとの間に緊張が走る状態だったそうだ。そしてステージだが、メンバー2人は特にクラフトワークを意識するようなところも見られず、卓上に設置されているプログラミング機材を駆使し、極上のダンスビートを発していた。音はまずまずだが、バックドロップに流される映像が単調で、もう少し凝った映像で音とシンクロさせるようなステージにすればいいのに、と思った。





再びソニックステージに戻り、インターポールを。過去、2003年2005年のサマソニで観ているバンドである。バンド活動は着実な様子で、今年サードアルバムをリリース。またコーチェラではメインステージのトリ前をこなしていて、日米格差の大きいバンドのひとつと言えよう。ジョイ・デイヴィジョンを彷彿とさせる音やスタイルは、個人的にも決して嫌いではないのだが、一方で今ひとつ踏み込んで来るものが感じられないのも事実だ。


メンバー4人は、半ばトレードマークのように今回も黒のスーツ姿でキメている。ヴォーカルは例によって低音でありながら不思議と通っていてしかも響きがあり、ギターとベースも同様に重低音で、地下世界の音楽というたたずまいがする。演奏力も確かであり、バンドとしてのコンビネーションも抜群で、引き締まった緊張感に溢れる印象を受ける。ではこの日のパフォーマンスで日米格差は埋められたのかというと、やはりそうはならないと思う。インドアステージ、あるいは密閉された空間でならこの音やスタイルは有効だと思うのだが、舞台をアウトドアに移したと仮定すれば、少なくとも日本ではこのスタイルだとかなりキツい気がするのだ。コーチェラではどういうパフォーマンスになっていたのかが、逆に知りたいところだ。





続くダイナソーJr.は、個人的に今年のサマソニの目玉のひとつだ。2005年にオリジナルメンバーで再結成し、フジロック単独で来日もしている。このツアーで本人たちも手ごたえを得たのか、新作『Beyond』を発表。しかも、リリースに先駆けてJマスキスが来日し、先行試聴会とソロアコースティックライヴまで行ったのだ。こうした流れを経てのサマソニ参戦であり、ダイナソーは伝説のバンドでも一過性の再結成ムーヴメントでもない、パーマネントなバンドとして再び機能するようになったのだ。


ほぼ時間通りにメンバーが登場。例によって機材はステージ前方中央部にぎゅっと固められ、その前に3人が陣取るのも毎度のこと。そしてオープニングが、いきなり今年リリースされた新作『Beyond』の冒頭の曲『Almost Ready』で、まずここでガツンと来た。Jマスキスのギターが轟き、ルー・バーロウのベースが唸り、マーフのドラムが炸裂。一瞬にして、場内の空気が変わってしまった。


しかし、ここで問題発生。ルーのベースと、接続されているアンプとの具合はよくないらしく、ルーはアンプを調整しながら演奏へと復帰。演奏は引き続き『Beyond』からの曲を中心に進められるが、やはり具合が悪いらしく、ルーだけでなくスタッフも入れ替わり立ち替わりでステージに出てきてアンプを調整。ベースを交換してもみるが、それでも不具合は解消されないようだった。その間Jはそれとなくギターを弾き、マーフもさりげなく軽くビートを発して、なんとか間を持たせようとした。空気が間延びしてしまったのは否めないが、個人的にはあのJが気を遣っていることの方にびっくりし、そして嬉しくなった。


この日のライヴは、選曲的には最高だった。軸になっているのは『Beyond』の曲だが、このメンバーで作られた『Just Like Heaven』『Little Fury Things』はもちろんのこと、なんと後期ダイナソーの曲である『Out There』が披露されてしまったのには度肝を抜かれた。『Beyond』を聴いたとき、音としてはむしろ後期ダイナソーの感触に近いものがあると個人的に感じてはいたのだが、まさかそれが本人たちの手によって表現されるとは思わなかったのだ。終盤は『The Wagon』『Freak Scene』という必勝リレーになり、ラストはファーストからの『Mountain Man』で締めくくった。ルーの度重なる機材トラブルが残念ではあったが、その不具合を差し引いても渾身のライヴであることに代わりはなかったのだ。

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(2007.9.9.)
















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