Summer Sonic 2002/Day 1-Vol.2 Soft Ballet/Haven/Hanoi Rocks/The Flaming Lips







サマーソニックは洋楽アーティストをメインとしたフェスティバル(と私は思っている)だが、かと言って日本のアーティストが全く出ないわけではない。そして、89年に結成され7年前の95年に活動を停止したソフトバレエのサマソニ"復活"は、もしかしたらガンズやハノイの復活に次ぐ事件と言ってもいいかもしれない。


 メンバーは当日まで伏せられていたのだが、どうやらオリジナルのようだ。まるで宇宙服のようなギンギラのスーツを着た森岡賢が姿を見せたところで、場内は黄色い声が飛び交う。そしてヴォーカルの遠藤遼一は、なんと毛皮のコートを着て登場。いくら冷房が効いてるとはいえ・・・。しかし、黄色い声はなお一層強まるばかりだ。


 メンバーのいでたちやキャーキャー言う女性ファンの質からして、一見ヴィジュアル系バンドのようにも見て取れる。だけど音の方はエレクトロポップというか、硬質のダンスミュージックというか、とにかくめっちゃカッコいいのだ。私はかつてソフトバレエが活動していたときのことを知らないし、よって今回の復活劇にもそれほどの感慨を覚えていない。しかし、長年バンドを追い続けていたであろうファンが、今このライヴに熱狂する気持ちは、わかるような気がする。


 洋楽アーティストにも通ずる音楽性と革新性を備えた、この音の世界の中にいると、彼らは"早すぎた"バンドではなかったのかと思ってしまう。だから彼らの復活はノスタルジーではなく、今の時代においてこそ、その真価を発揮する音なのだと信じる。初めて彼らの音に触れる私にとっては、今の若いバンドと比べても少しも遜色がないと思えるのだ。今回が復活の第1弾となるが、この後彼らはシングルとアルバムを立て続けにリリースする予定。今後は、積極的にメディアにも露出して来るのかな。





 朝からインドアステージ内をちょろちょろしていた(笑)ヘイヴンは、私が今回サマーソニックで観た若手アーティストの中で、最も充実したライヴをしたと思う。堂々とし風格漂うライヴは、とても新人とは思えないのだが、しかし彼らが発する音はやっぱり若い。今やイギリスからは出尽くしてしまった感のあるギターロックだが、単にそのあり方をなぞっただけには留まらない、斬新な世界を醸し出している。ギターロックの世代交代も、少しずつではあるが進んでいるようだ。


 ここまでは座ってライヴを観ている人も結構多かったのだが(中には寝ている人も)、より多くの人を入れるためにスタッフが呼びかけ、座っている人はみな立つことになった。しかしそれでもインドアステージはたくさんの人で埋まり、やがてすし詰め状態になった。ライヴ開始前にブライアン・バートン・ルイスがステージに現れ、このステージが入場規制となった旨を告げた。





 そして、登場したのはハノイ・ロックスだ。85年の解散から、実に17年を経ての復活。オリジナルはヴォーカルのマイケル・モンローとギターのアンディ・マッコイだけだが、この2人の中軸さえいれば、ハノイを名乗っても申し分はない。彼らの再結成はツアーだけでなく、新作のレコーデイングにまで及んでいるようだ。ステージ後方には、彼らのトレードマークの薔薇の絵が掲げられていた。


 ギンギラのスパンコールの衣装をまとったマイケルは、ほとんど体形が崩れておらず、異様なまでに細身。そしてその動きは、ステージ上を縦横無尽に動き回り、ステージ向かって左のスピーカーの上の方にまでよじのぼったり、ステージを降りてオーディエンスの前を走り回ったりと、驚くほどにパワフルでアグレッシヴだ。ハノイ解散後はデモリッション23というユニットやソロ活動などをしていたが、その期間はマイケルにとっては必ずしも充実した活動ではなかったのではないだろうか。そう思わせるくらい、ここでのマイケルは思いっきり暴れまくっている。


 ハノイの参加は、ハノイ自身の復活劇のほかに、ガンズに対する牽制という意味合いもあったらしい。アクセル・ローズはマイケルを敬愛していて、実際マイケルはガンズの曲に参加したこともある。ほんとうに来るかどうか疑わしい"爆弾"のガンズに対し、同じフェスに復活のハノイも来るよとアナウンスすることで、ガンズ出演をより強固にしたかったようだ(ただ、今現在もその関係が成り立っているのかは、あやしいみたいだが・・・)。


 そうした意図を度外視しても、ハノイのライヴはなかなか興味深い。マイケルとアンディとの掛け合いは、アクセルとスラッシュとのそれを彷彿とさせるし、更にはスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーのコンビネーションも思い起こさせる。ハノイの音楽性はニューヨーク・ドールズになぞらえて語られることが多いようだが、このライヴを見る限りだと、エアロスミスとガンズとを橋渡しする位置づけにあるんじゃないかなと思う。何はともあれ、こうしてハノイのライヴを観れたことは個人的によかったと思うし、入場規制されたインドアではなく、もっと多くのファンを動員できるアウトドアのステージを用意すべきではなかったのかと、少し残念にも思った。





 ハノイのライヴが終わると、インドアステージは面白いように人が引いて行き、あっという間にがらがらになってしまった。ハノイを経てガンズというファンが多いこともあるのだろうし、次のフレーミング・リップスとは音楽性が違いすぎることもあると思う。ステージにはスクリーンが用意され、サウンドや機材はウェイン・コイン自らがチェックしていた。


 予定より少し遅れて(その前のハノイのライヴが、アンコールまであったために時間が押してしまったというのもあるが)、ライヴが始まった。冒頭は『Do You Realize??』で、PVの映像がスクリーンに映し出される。ウェイン以外のメンバー2人はウサギの着ぐるみ姿で、他にもカエルやクマの着ぐるみダンサー?が3人ほどいて、気持ちよさそうに踊っていた。ウェインの声には今ひとつ伸びがないが、じき調子を戻して行くことだろう。


 ・・・がしかし、私は2曲目が始まったところでインドアステージを後にした。ガンズを観るためであり、そのガンズで千葉マリンスタジアムがどれほど混んでいるのか予測がつかず(この日はインドアステージにこもりっぱなしだったということもあるし)、時間に余裕を持って動くべきだと考えたからだ。











(2002.8.24.)
















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